私大医学部、相次ぐ学費値下げのワケ 昨年度より670万円値下げの大学は人気急騰か

“医学部医学科”と言えば難易度の高さだけではなく学費が高いことでも知られている。特に私立は6年間で約4700万円という高額の大学もあり、親にとっては大変な負担となる。東京大学など国立大学医学部医学科は6年制のため6年間でかかる学費は計350万円ほど。これに比べると私立医学部医学科の学費がいかに高額か分かるだろう。

私大医学部トップに君臨する慶応大学医学部
私大医学部トップに君臨する慶応大学医学部

関西医科大学は23年度から670万円値下げで2100万円に

“医学部医学科”と言えば難易度の高さだけではなく学費が高いことでも知られている。特に私立は6年間で約4700万円という高額の大学もあり、親にとっては大変な負担となる。東京大学など国立大学医学部医学科は6年制のため6年間でかかる学費は計350万円ほど。これに比べると私立医学部医学科の学費がいかに高額か分かるだろう。

 そんな中、近年注目を集めているのが国際医療福祉大学だ。6年間で約1900万円と私立大学医学部では最も学費が安いことで知られている。2位は順天堂大学の約2100万円、次いで慶応大学、日本医科大学、東京慈恵会医科大学が2200万円台と続く。全国の医学部医学科の中で私立御三家と呼ばれているのが慶応、東京慈恵会医科、日本医科だ。これら3大学に共通するのは学費が私大医学部の中で比較的安いこと。近年は、御三家より学費が安い順天堂が日本医科を上回る人気を集めているという。国際医療福祉はさらに学費が安いため医学部進学を目指す受験生にとっては必須の受験先となっている。

 同大学は「日本初の医療福祉を専門とする総合大学」として95年に栃木県大田原市に設立。“国際”とうたっているだけに医学部は新東京国際空港(成田空港)から近い成田キャンパスに17年、開設された。医学部医学科は定員140人のうち20人が留学生特別枠。1年生から2年生にかけてほとんどの授業が英語で行われ、6年次には1か月以上の海外臨床実習も組まれている。また、地元の農家が留学生、外国人教員にコシヒカリを寄贈するなど国際交流も盛んだ。志願者数(定員17年度100人、以降105人)は17年度2769人、18年度2529人、19年度2948人、20年度2887人、21年度2881人、22年度3009人と概ね増加傾向だ。

 予備校講師がこう話す。「国際医療福祉大学は来年、第1期生が卒業します。医師国家試験の合格率が良ければさらに人気が高まりそうですが、慶応大学医学部の背中はまだ遠いです。近年は東京医科歯科大学を蹴って慶応医学部に進む受験生が多いといわれているほど慶応のブランド力は圧倒的で、私立医学部御三家でも群を抜いています。これら御三家の学費について振り返ると、順天堂は08年度入試から約900万円値下げし、日本医科も18年度から約570万円値下げしたことで志願者数と偏差値が上がりました。関西医科大学は23年度から670万円値下げして2100万円とすることを発表して話題となっています。これにより東日本在住の受験生の参戦も増える見込みです。関西圏で見ても3000万円台の大阪医科薬科大学、近畿大学、兵庫医科大学より志願者が増えるのは確実です」。

 学費値下げの背景にあるのは少子化による人材獲得競争だ。文科省の「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査結果速報」には年齢別合格者数が公表されており、それによると現役合格率は国公立で概ね約50%、私立医学部は約30%となっているが、上位クラスの難関大ほど現役合格率が高くなる傾向がある。例えば22年度の東大理科三類合格者は現役79人、1浪14人、2浪4人で現役の割合は81.4%だ。これに対し、私大医学部の下位クラスは10~20%台で推移している。

「私大医学部の学費値下げ競争は学業優秀な現役生を集めたいという大学側の狙いがあります。少子化によって18歳人口が減少する中、優秀な学生の奪い合いは激化しており、学費を減免する特待生制度を充実させる大学も目立ちます。私大医学部下位クラスの学費は“暴額”と呼ばれるほど高いので親の経済力があればそこそこの成績で合格できそうにも見えますが、それでも早慶の理工並みの偏差値は必要です。以前より入りやすくなったとはいえ医学部合格はとてもハードルが高いのが実情です」(同)

 医学部に入り込むには相当の覚悟と親の経済力が必要ということだ。

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