注目の太陽光発電、猛暑で発電量は増える? タワマンに設置は可能? 専門家の答え

猛暑や真夏日が続いた影響で、太陽光発電への関心が高まっている。日射が多ければ発電量も増える一方で、高温になると出力が下がる特徴や、夜間や悪天候では発電しない弱点もある。現在、日本における太陽光の発電量やソーラーパネルの家庭への普及はどれほどなのか。気になる疑問点を一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)の長峯卓さんに聞いた。

太陽光発電への関心が高まっている【写真:写真AC】
太陽光発電への関心が高まっている【写真:写真AC】

意外と知らない太陽光発電のイロハ 長所や弱点は

 猛暑や真夏日が続いた影響で、太陽光発電への関心が高まっている。日射が多ければ発電量も増える一方で、高温になると出力が下がる特徴や、夜間や悪天候では発電しない弱点もある。現在、日本における太陽光の発電量やソーラーパネルの家庭への普及はどれほどなのか。気になる疑問点を一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)の長峯卓さんに聞いた。(取材・文=水沼一夫)

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――まず太陽光発電について、どのような仕組みなのか教えてください。

「太陽電池は日射があったら日射の分、発電をして直流の電気を作ります。それを我々はパワコンと言っていますが、パワーコンディショナーで交流の電気にして使います。日射に比例した出力が出るのが太陽電池です」

――気温が上がるとどのような影響がありますか。

「ものすごく気温が高いと、やはり少し影響がありますね」

――適温があるのでしょうか。

「適温というより、物理的な太陽光の特性なのでどうしようもないのですが、温度が1度上がれば、コンマ何%ぐらいずつ出力が下がるので温度は低いほどいいです。信じられないぐらい日射があって、気温は0度以下であるようなところが一番適しています。日射が同じだったら、気温の低い方が発電量は多いですよ」

――北海道と沖縄を比較した場合、日射が同じなら発電量は。

「同じ日射でしたら北海道のほうが絶対いいです。ただ1日を見たら日射時間が北と南では違います。トータルとしては南のほうが多いとか、そういうことになります」

――東京で春と夏の発電量はどのぐらい違うのでしょうか。

「普通の発電量のグラフはやっぱり夏に上がっていきますね。温度が上がったからマズいんじゃないのって思われるかもしれないけど、暑くなるほど日射があるわけで。6月7月は雨があるとちょっと落ちますけれども、8月9月は日射が上がって発電量も上がっていきます。年間を見ても、普通は8月9月頃、年の真ん中がこんもり上がるようなグラフになる。逆に1月や12月は気温が低いですが、日射がないので少し落ちますね」

――「将来は太陽光発電だけで大丈夫」という議論もあります。

「可能性はもちろんあるのですが、完全に太陽光だけというのは難しいです。電力システムとして安定運用するためには他の電源も必要ですし、将来的には化石燃料でない火力、水素をたく火力とか、脱炭素系の火力というのも含めて残していかないといけないと思います。まだまだ太陽光にも課題はあって、要は余るほど発電して初めて変動電源というのは活用されるようになりますので」

――日本の総電力に占める割合は。

「今、年間の日本の電力需要は9000億キロワットアワーから1兆キロワットアワーです。太陽光の発電量は2020年度で7~800億なので、全体の8~9%を供給しているという計算になります。30年には、20%に近いところまで持ち上げようじゃないかと今みんなで頑張っているところですね」

――家庭におけるソーラーパネルの普及率は。

「今までの累計を足していくと、昨年度の12月の数字で約300万軒に太陽光パネルが乗って動いているということになります。統計局の数字ですが、日本の住宅の総数は2800~2900万軒ぐらいなので、全体の10%ぐらいです。耐震基準で区切って古い建物を省くと、推定ですが、総数は1800万軒ぐらいだろうとなります。そうすると、普及率はもう少し上がりますが、いずれにしてもまだ2割には届いていません。ここ何年かは年間10数万件の導入量で、一時期に比べると、少し落ちています」

タワーマンションに太陽光パネルは是か非か

――設置率が高い地域はありますか。

「冬はほとんど雪が積もっていますというような場所はやっぱり厳しいので、日射が多い九州は、地域性としては非常に設置率が高いですね。あとはこの地域は本当に晴れる日が多いですと言っている場所が日本の中にいくつかありますが、そういうところは高いです」

――太陽光発電は夏の救世主になるのでしょうか。

「特に暑い夏に、真っ昼間にしっかりと発電する太陽光発電が増えていることで助かっている面というのは実態としてあると思います。太陽光の発電量を読み間違って、電気が大変なことになりそうだなんてことが今たまに起きますよね。要は太陽光を当てにして発電の計画が立っているわけですから非常に大事だとは思います」

――タワーマンションにもパネルは設置できるのでしょうか。

「どこにでも設置はできますが、光を受ける面積が広いほうが発電するわけです。1枚何百ワットというのを何千枚と置けば、何百キロワットになる。2階建てのビルでも40階建てのビルでも、基本的な発電量は屋根の面積で決まります。一般的にタワーマンションは細長い建物が多いと思いますので、太陽電池を置けることは置けるでしょうけど、たくさん発電できるわけではありません。要するに、狭いんですよね。需要の大きさのわりに屋根が小さい。あと、非常に高いところにつけるので、設計的に風速やその他に対してしっかりと対応しないといけない。地面に設置しているものよりも頑丈に作る必要があります」

――六本木ヒルズ(54階)の上に太陽光パネルを置いたとして、テナントの電気を全て賄うことは現在の技術では可能でしょうか?

「面積と需要の大きさを計算しないと分からないですが、全てのテナントの需要は、その屋根で発電できる分量ではまかなえないと思います」

――太陽光発電の弱点とは。

「24時間しっかりと発電できるものと比べれば、残念ながら日射がなければ発電しない電源にはなりますね。どうしても変動します。日射が一定なら、もちろんずっと一定ですが、日射なんて朝日が昇ってから変わっていって、それこそ夜日が沈めばもうないわけですから。その間も雲がちょうど発電のモジュールの上を通りましたって言ったら、その瞬間に発電量は落ちます。そういう特性を理解した上で、どういうふうに生かしていくかを考えることが重要だと思います」

――太陽光発電を安定供給するために必要なことは。

「当然、なるべく安定した日射の良い環境が保たれていることを望みます。今のように極端な雨が降ったり、極端に温度が上がったり下がったりというようなことがないのがベストですね。異常気象はありがたくありません。また、全国各地にまんべんなく設置して、ここは雨で発電量は落ちるが隣の県では晴れている等、ならし効果での安定化も必要です」

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