「ZIGGY」元ドラマーが心理カウンセラーになったワケ 悩みを抱えた人に伝えたいこと

1988年の大ヒット曲「GLORIA」で知られるロックバンド「ZIGGY」の元メンバーでドラム奏者の大山正篤はZIGGY脱退後、音楽活動と並行して専門学校でドラム講師を始めた。生徒たちの中にはさまざまな心の悩みを抱えた人も多いことを知り、一念発起して心理カウンセラーの資格を取得。本格的にカウンセラーとしての道も歩み始めた。最近はSNSで繰り返される誹謗中傷やコロナ禍がもたらすさまざまな問題を抱えた相談者たちと向き合う日々だという。異色のミュージシャンが振り返る波乱の半生。3回目は、心理カウンセラーとしての横顔にスポットを当てた。

大山正篤【写真:ENCOUNT編集部】
大山正篤【写真:ENCOUNT編集部】

つらいときは「つらい」と言葉にすることがとても大切

 1988年の大ヒット曲「GLORIA」で知られるロックバンド「ZIGGY」の元メンバーでドラム奏者の大山正篤はZIGGY脱退後、音楽活動と並行して専門学校でドラム講師を始めた。生徒たちの中にはさまざまな心の悩みを抱えた人も多いことを知り、一念発起して心理カウンセラーの資格を取得。本格的にカウンセラーとしての道も歩み始めた。最近はSNSで繰り返される誹謗中傷やコロナ禍がもたらすさまざまな問題を抱えた相談者たちと向き合う日々だという。異色のミュージシャンが振り返る波乱の半生。3回目は、心理カウンセラーとしての横顔にスポットを当てた。(取材・文=福嶋剛)

ドラマ、アニメ、アイドル、K-POP、スポーツ…大人気番組が目白押しのお得キャンペーンを実施中(Leminoサイトへ)

 これまでZIGGYでの活動を紹介してきましたが、今回は数年前からスタートした心理カウンセラーについて話をしたいと思います。

 きっかけはドラム講師です。生徒さんたちを教えているとだんだんと気心が知れてちょっとずつ音楽以外の話もするようになってくるんです。「先生はZIGGYってバンドをやってたの?」、「YouTubeで昔の映像見たよ」、「お母さんが大ファンで」とか(笑)。そんなふうに打ち解けてくると生徒さんの表情や練習風景に気が付くところも多くなって、「今日はなんだか元気がなさそうだけどどうしたの?」と聞くと、「仕事でちょっといろいろあって」とか「この前、彼女と別れちゃって」、「実はうちのお父さんとお母さんがもめていて……」とか。もっと重たい悩みを打ち明ける生徒もいるんです。

 そんな悩みを抱えながら演奏していてもなかなか上達しないので、練習に集中してもらえるように最初に悩みを聞いてあげるところから始めるようになりました。そうすると「生徒の悩みを聞いてくれる先生」というふうに知られるようになったかどうかは分かりませんが、だんだん悩みを聞いてあげる機会が増えていきました。60分のレッスンの中で悩みを聞いてあげる時間も増えてきて、むしろ悩みを聞いてほしいからレッスンを申し込むという人も出てきたんです。

 それで「これはちゃんと分けた方がいいぞ」と思ったんですが、分けたからといって「大山正篤のお悩み相談室」なんてただの胡散臭い商売ですし、やるならちゃんと資格を持たないといけない思い、勉強を始めました。音楽教室の合間を縫っての学習は大変でしたけど、実は僕、大学卒業間際に大切な単位を1つ落として中退してしまったという苦い過去があって、あの頃の自分へのリベンジみたいな気持ちもあったのかもしれません。なんとか一般財団法人JADP(=日本能力開発推進協会)認定のメンタル心理カウンセラーと上級心理カウンセラーを取得することができました。

 資格を取ってからのお悩み相談はこれまでとまったく違って、聞くだけなら誰でもできますが、それに対する的確なアドバイスというのはやっぱり専門的なところですからね。ちゃんと身に付けて正解だったと実感しました。

ニューシングル「ゆりかご」をリリース【写真:ENCOUNT編集部】
ニューシングル「ゆりかご」をリリース【写真:ENCOUNT編集部】

SNSの誹謗中傷は積極的に無視を

 現在は「Hug the heart」というサイトを立ち上げて、インターネットによる対面式のカウンセリングを行っています。相談者は子育て中のお父さんお母さんから介護をされている方、夜のお仕事をされている方、ミュージシャンなど、世代も性別もまちまちです。でもここ数年のコロナ禍でそういう悩みは増えています。

 コロナ禍の悩みはとても顕著です。コロナ禍による社会の閉塞感というのは大きいですよね。みなさんが気が付かないうちに心が疲れている状態になっていたり、心的外傷後ストレス(=PTSD)の症状が出ている方も多くて、無理に我慢をして心の痛みに慣れちゃう人も少なくはないのですが、実はそれが怖いんです。気が付いたときには体に変調をきたしていたり、普段自分にはなかったネガティブな思考に陥ってしまうこともあると思います。

 僕も根性論の昭和世代に育ったひとりですが、そんなのは遠い昔の話です。今はつらいときはつらいと言葉にすることがとても大切なんです。全然恥ずかしくありません。気合いで風邪が治らないのと一緒なんです。もしこれを読んでいるみなさんが「つらい」、「苦しい」、「助けてほしい」そう思うことが1つでもあれば我慢しないで「ちょっと喉に痛みがあるから診てもらおう」と同じように「最近ちょっと気分がすぐれないからカウンセリングルームに行ってみよう」そんな感覚で気軽に近くの心療内科やカウンセリングルームを利用してみてください。

 もう1つ悩みが多いのがSNSに対する誹謗中傷です。この相談も非常に多いです。僕もSNS上でアンチと思われる人にたたかれることがよくあります。やっぱり誹謗中傷はどんなささいなことであっても傷つきますよね。

 対処法として簡単なのは見ないということなんですが、そう言っても仕事上どうしてもSNSから離れられない人やそれができないから見たくないのに気になって見てしまうというループから抜け出せなくなってしまっている人もいます。まずはできるだけ積極的に無視をするようにしてみて、それでもつらかったら気軽に近くのカウンセリングルームを利用してみてください。

 そんな心理カウンセラーをしながら音楽活動もしっかり続けています。ZIGGYを脱退した後に組んだロックユニット「Shammon」を再始動させて久しぶりのシングル「ゆりかご」を24日にリリースします。また発売を記念して19日に、渋谷「clubasia」でバンド形式のワンマンライブを開催します。

 きっかけはボーカルの有待雅彦くんが急にやる気を出しまして「ちゃんとした活動をして音楽人生に幕を引きたい」なんて言い出すもんだから「終活かよ!」って突っこみましたけど(笑)。ギターはPERSONZの本田毅、ベースは本田聡と本田兄弟に加えてキーボードにTacos Naomiと僕たちが一番信頼するサポートメンバーを集めて、“採算度外視”で挑みます(笑)。コロナ禍でも音楽活動はストップしないでやってきた自負もあって、これまでの集大成をみなさんにお見せしたいと思います。

 最後にENCOUNT編集部さんから心理カウンセラーになった理由の1つとして僕の前妻(故・戸川京子さん)のこともあったのでは? と聞かれたのでお答えします。

 おっしゃる通りです。ずっと引っかかっていました。あの当時、現在の知識があればなと悔やむことがあります。彼女が旅立って今年でちょうど20年になります。実は今回リリースするシングル「ゆりかご」は彼女に向けたメッセージでもあります。バンドも20年ぶり、あらゆるものが20年ぶりなんです。なんだかちょっとつながっている、そんな感じがしてなりません。

□大山正篤(おおやま・まさのり)1964年生まれ、北海道釧路市出身。ドラマー、音楽講師、心理療法士。大学進学とともに上京、戸城憲夫らと「グラスデッドフリッカーズ」(後の「G.D.FLICKERS」)結成。86年、「ZIGGY」に加入。翌87年デビュー。89年、「GLORIA」がオリコン3位の大ヒット。92年、ZIGGYを脱退。プロデューサー、楽曲提供など活動の幅を広げ、98年、「Sham-on」でふたたびメジャーデビュー。2003年、音楽講師としても活動をはじめる。19年、心理カウンセラーおよび上級心理カウンセラーの資格を取得。22年、「Shammon」再始動。8月19日渋谷「clubasia」でワンマンライブ「Shammon レコ発ワンマンショー in clubasia」を開催。

次のページへ (2/2) 【写真】大山正篤、16歳の頃のツッパリ風ショット
1 2
あなたの“気になる”を教えてください