クレイジーケンバンド横山剣、62歳になっても「まだまだチンピラ」なワケ「子ども目線抜けない」

東洋一のサウンド・マシーン「クレイジーケンバンド」(=CKB)が結成25周年を迎え、通算22枚目となるオリジナルアルバム「樹影」(じゅえい)をリリースした。横山剣の脳内から溢れ出るジャンルを超えた魅惑のサウンドが全部で18曲も収められており、「このアルバムでデビューしたかった!ってぐらい満足度が高い」とこれまで以上の自信をのぞかせた。その理由を尋ねてみるといつまでも変わらぬ横山の音楽への好奇心に加えてここ数年の新たな刺激が大きく影響しているという。

クレイジーケンバンド横山剣【写真:山口比佐夫】
クレイジーケンバンド横山剣【写真:山口比佐夫】

若い世代が引き出してくれた満足度100%のニューアルバム

 東洋一のサウンド・マシーン「クレイジーケンバンド」(=CKB)が結成25周年を迎え、通算22枚目となるオリジナルアルバム「樹影」(じゅえい)をリリースした。横山剣の脳内から溢れ出るジャンルを超えた魅惑のサウンドが全部で18曲も収められており、「このアルバムでデビューしたかった!ってぐらい満足度が高い」とこれまで以上の自信をのぞかせた。その理由を尋ねてみるといつまでも変わらぬ横山の音楽への好奇心に加えてここ数年の新たな刺激が大きく影響しているという。(取材・文=福嶋剛)

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――結成25周年おめでとうございます。あらためて四半世紀という歴史を振り返ってみていかがですか?

「あっという間に過ぎちゃいましたね。我慢ができない性格なんでその時その時の一番興奮することを見つけたら後先考えずにとことんやってみるというくり返しでした。だからあんまり悩まずに25年きたというか。実際にはいろいろあったかもしれませんが、『何とかなる』っていう根拠のない思いだけで、気が付いたら25年たってましたね。一昨年は僕の還暦があって、去年はデビュー40周年と最近は毎年のようにアニバーサリーがあるからリリー・フランキーさんに『アニバーサリー商法だ』って言われています(笑)」

――来年はファーストアルバム「PUNCH! PUNCH! PUNCH!」(1998年)リリースから25年です(笑)。そこから数えて22作目となった今回のオリジナルアルバムです。

「その時にやりたいことをやるという姿勢はファーストアルバムから一貫して変わらないんですけど、コロナ禍で海外はもちろん国内旅行にもなかなか行けないので僕自身、音楽でいろんな場所に飛んでいきたいっていう気持ちを今回のアルバムに詰め込みました」

――アルバムタイトルは「樹影」。ちょっとミステリアスな印象の名前です。

「これは本牧のガソリンスタンドで働いていた10代の頃によく通っていた喫茶店の名前です」

――CKBは過去のアルバムでも剣さんとゆかりのある場所がタイトルになっています。

「『イタリアンガーデン』という本牧のバーや『FLYING SAUCER』という元町のレコード屋さんとか。“近所から拾ったシリーズ”ですね(笑)。僕はタイトルを決めるときは意味よりも犬や猫に名前をつける気分なんですよ」

――「樹影」はどんな喫茶店でしたか?

「昼間でも薄暗い店内で、確か南国の植物がたくさんあったような気がします。当時は、作曲家の仕事をやりたかったんですけど、なかなか曲を採用してもらえなくて挫折していた時期だったんです。こうなったらシンガーソングライターとしてやるしかないなと思って樹影でプロフィールを書いていましたね。カレーを食べながらモータースポーツの本や成人雑誌をめくっていると自然にメロディーが浮かんできて、良い訓練だったと思います。あれからすっかり店のことを忘れていたんですが、ふとした瞬間に思い出してね」

22枚目のアルバム「樹影」ジャケット
22枚目のアルバム「樹影」ジャケット

ジャケットデザインは薄暗いジャングルの高温多湿なイメージ

――CDジャケットは久しぶりの“カージャケ”です。

「『もうすっかりあれなんだよね』(2015年)以来ですね。『樹影』という喫茶店をイメージして、薄暗いジャングルの高温多湿なイメージで作りました。車もちょっとやれた感じで念とか含みみたいなのもあって。デザイナーさんとああでもないこうでもないと気が狂ったようにやり取りしました(笑)」

――剣さんは音楽に限らず車やモータースポーツも大好きで、昔はバイクのレースに出場したり、今も4輪のレースをエンジョイされています。

「そうなんです。もともと音楽も趣味から始まっていますし、モータースポーツも昔から大好きで、とにかくスカッとすることを楽しみながら前に進むみたいなところはありますね。僕はモータースポーツと音楽を両方やっていたミッキー・カーチスさんや作曲家の三保敬太郎さんといった人たちに子どもの頃からあこがれていて、まるで好きなことのコスプレみたいな気分で自分も楽しんでいます。2輪は昔、レース中に転倒して救急車で運ばれて引退したんですけど、カーレースは60歳を過ぎてもやっています」

――あらためて剣さんにとっての60代とは?

「そうですね。成人になった時は年齢を意識しましたけれど、でも年齢って番号みたいなもんで生きていたらここまできたみたいな感じでしたね。ただ還暦という言葉の響きだけは強烈だったので記念に赤いものを着せられたりしましたけど、実際僕が子どもの頃に想像していた60代と今の60代は違いますよね。山下達郎さんにしても70代の矢沢永吉さんにしても、80代の加山雄三さんもお元気ですし。だから僕は62歳ですが、まだまだチンピラでいられるというか。むしろいまだに子ども目線の抜けないおっさんなんです」

――曲作りについてはいかがですか? ここ数年の変化など剣さんの心境は変わりませんが?

「変わらないところと変わったところと両方ですね。コロナ禍だからこそ浮かんだアイデアもあって昨年リリースした初のカバーアルバム『好きなんだよ』は、ステイホームで今まで全然手をつけられていなかったレコードや本、映画からイメージが湧いてきたんです。昔だったらひねった選曲をしていたかもしれませんが、ひねった選曲だけだと自己満足で終わってしまうから面白くないと思うようになったんです。だから王道を進もうと。みんなが知っている曲をカバーするところに面白みがあると思って王道な曲を中心に選曲したんです」

――今回の「樹影」に関しては?

「ここ数年は僕と親子ほど離れたサウンドプロデューサーのPark(パーク)君と一緒にアレンジをしてるんですが、今回のアルバムは彼と一緒に今までで一番濃密に作っていったんです。ヒントになったのはグラミー賞で4冠を獲った『シルク・ソニック』です。ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークが一緒になることで今まで以上にブルーノの魅力を引き出していて、そんな刺激もあって今回はPark君にCKBの今やりたい感じを最大限に引き出してもらおうと思いました」

細部にまでこだわらないと感動なんて生まれない

――剣さんにとってのParkさんは、もう1人の横山剣みたいな?

「まさにそんなイメージです。どうしても自分の演奏能力には限界があって、今までは自分で弾ける範囲でなんとかやってきたんですが、年々僕の脳内で鳴っている音をそのまま出さないと気がすまなくなってきたんです。でもPark君は僕の思い通り忠実に再現してくれるんです。僕以上に僕のことを分かっていて、まるで脳内ハッキングされているみたい」

――前回のカバーで王道というキーワードがありましたが、今回もより分かりやすくて伝わりやすい表現やサウンドだという印象を感じました。CKBの言葉に置き換えると“スカッとした電波”を発信していこうと?

「まさにその通りです。実は分かりやすさとか伝わりやすさってとても難しい作業だと僕は思っているんです。例えばディズニーランドのアトラクションを実際に体験してみると『すごいな』って感動するじゃないですか。それも1度だけじゃなくて何度でも乗りたくなる。これってものすごい細かい部分にまでこだわっているから感動が生まれるんですよね。やっぱり大衆に受けるものってこだわりにこだわりぬいた集大成で、大味で詰めが甘いものじゃダメなんですよね」

――25年間、その時その瞬間のCKBサウンドの集大成を毎回更新して、一番ピカピカに磨かれたものをアルバムとして出してきたからこそ、楽曲から感じる色彩や肌触り、匂い、感情といったクレイジーケンバンド独特の立体感が生まれるわけですね。

「本当にそう信じて作ってきたので、みなさんにそう感じてもらえたらうれしいです。分かりやすさというのは分かる人には分かるものよりずっと難しい。だから聴いている人が気付かないところでのマニアックな作業の積み重ねだったりするんです。その集大成によってポピュラリティーが生まれると言うふうに思うんです」

□クレイジーケンバンド 1997年の春頃、横浜本牧の伝説的スポット「イタリアンガーデン」にて発生した横山剣が率いる東洋一のサウンド・マシーン。2002年、4thアルバム「Gran Turismo」を機に瞬く間にファン層を拡大し幅広い年齢層からも人気を博す。04年、ベストアルバム「CKBB」が初めてチャート9位にランクされ、同年翌年と2年連続で日本武道館公演を成功させる。09年、ユニバーサルミュージックと契約し新レーベル「Doublejoy International」を設立。15年、16thアルバム「もうすっかりあれなんだよね」が最高位の3位を記録。22年、結成25年を迎え、22thアルバム「樹影」完成。9月23日より全国ツアー「CRAZY KEN BAND TOUR 樹影 2022-2023」スタート。

軽トラからセンチュリー、バイクにバギー…大御所タレントの仰天愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

クレイジーケンバンド 公式HP:https://www.crazykenband.com/
Twitter:https://twitter.com/crazykenband20
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCo9yzFB15CsDG_rGXZ0chRw
「CRAZY KEN BAND TOUR 樹影 2022-2023 Presented by TATSUYA BUSSAN」
公演情報:https://www.crazykenband.com/posts/live/jhlajx

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