「和の鉄人」道場六三郎さん、91歳のいま “YouTuber”として伝える料理の魅力

1990年代の人気バラエティー番組「料理の鉄人」で「和の鉄人」として活躍した料理人の道場六三郎さんは、91歳となった今も現役の料理人として活動を続けている。2020年12月には、YouTubeチャンネルを開設し、数々のオリジナル料理を動画内で紹介。登録者数は13万人を超え、視聴者イベントも開催するなど人気を博している。そんな道場さんに、YouTubeを始めたきっかけや、料理への思いを聞いた。

道場六三郎さん【写真:ENCOUNT編集部】
道場六三郎さん【写真:ENCOUNT編集部】

YouTubeでは「簡単で、早くて、おいしい料理」を意識

 1990年代の人気バラエティー番組「料理の鉄人」で「和の鉄人」として活躍した料理人の道場六三郎さんは、91歳となった今も現役の料理人として活動を続けている。2020年12月には、YouTubeチャンネルを開設し、数々のオリジナル料理を動画内で紹介。登録者数は13万人を超え、視聴者イベントも開催するなど人気を博している。そんな道場さんに、YouTubeを始めたきっかけや、料理への思いを聞いた。(取材・文=猪俣創平)

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 90歳を目前にしてYouTubeチャンネルを開設したきっかけは「料理の鉄人」でディレクターを務めていた田中経一氏の提案だった。道場さん自身はYouTubeを知らなかったが、説明を受けてやる気になった。

「YouTubeを見る主婦の方や、家で料理をやろうとする人に向けた家庭料理を紹介しているんですよ。だから、簡単で、早くて、おいしい料理を目指したんだよね。僕も女房が病気になってから家で料理を作るようになってね。家庭料理からずいぶんヒントをもらうようになって、料理の新しいアイデアも生まれてきているんですよ。たとえば、冷蔵庫にある残り物を使って料理をするようになってね。そういう料理を伝えられるようになったのはよかったですね」

 YouTubeをきっかけに、4月には著書「91歳のユーチューバー 後世に伝えたい!家庭料理と人生のコツ」を出版。初めて、家庭料理について教えることとなった。

 東京・銀座にある自身のお店「銀座ろくさん亭」には、YouTubeを見てから来るお客さんもいる。「この間もYouTubeを見たという若い女の子たちがいて、そんなお客さんがたくさんいらっしゃって、本当にありがたいことです」と反響の大きさに感謝の言葉を口にする。また、6月2日にはYouTubeの視聴者に向けたイベントも開催した。「食事会に50人とたくさん集まってくれて、大盛況でね。喜んでくださったみたいでよかった」と手応えを感じている。

 YouTubeを撮影するにあたって事前に特別な準備をしていないのも、家庭料理を意識しているからだ。

「身近な食材で簡単にできて、おいしいことが大事。たとえば、揚げ物なんて油をたくさん使って家庭で作るのは大変だから、油が少なくてもできる料理としてYouTubeでやったんだよね。揚げ焼きして、『ヘルシーとんかつ』と名付けたもので、これも簡単にできてパリパリしていてうまいんだよ」

YouTube動画の撮影シーン
YouTube動画の撮影シーン

 道場さんは、自身の料理について「ほとんど即興なんだよね」と、思いついたことをやっていると明かした。かつては「日本料理界の異端児」とも称されてきた料理だが、その斬新なアイデアは今も健在だ。料理を楽しむ秘けつを教えてくれた。

「ちょこちょこ溜まった残りものを、刻んで合わせて卵でとじても結構うまいんですよ。だからね、料理をするときには、何と何が合わないと決めつけるんじゃなくて、全部一つにまとめて汁にしてもおいしいんです」

 かつての経験から、型にとらわれない発想が料理で大事だということにたどり着いた。

「昔、京都のホテルでみそ汁のコンクールがあったんです。そこで僕はありあわせのもの全部入れて作った『なんでもみそ汁』が優勝したんだよ。牛乳やオレンジジュース、トマトジュースも入れてたかな? それがおいしいと評判でね。だから、料理ってのは『あれがダメ』『これがダメ』なんて考えなくていいの。『交わりは進化なり』じゃないけれど、いろんなものが合わさってまた1つの新しいものが生まれるんだよ。やってみればいいと思うんだよね」

 自由な発想で生み出される道場料理。今後YouTubeで挑戦したい特別なものはなく、あくまで“新しい料理”を生み出していきたいと力強く語る。

「未だに新しい発見があるんですよ。寝ながら『あ、あれとあれを合わせてみるのもいいか』とアイデアが浮かんでね。だから、これからも新しい調理を楽しんでいきたいし、なんでもありの仕事を続けていこうと思うね」

 現在もコロナ禍という飲食業界にとって厳しい時勢だが、道場さんはあまり気にしていない。「人生というのは山あり谷ありだからね。必ず明るい朝が来るだろうと僕は信じてる。だからコロナのことで思い悩むことはあまりない」と前を向く。

 91歳にして、まだまだ新たな料理の発見が楽しいと語る道場さん。“和の鉄人”は今後も料理の魅力の発見と発信を続けていく。

□道場六三郎、1931年1月3日石川県出身。1948年、料理人を志し上京。銀座、神戸、金沢などの料亭で修行を重ね、1971年に「銀座ろくさん亭」を開店。1993年にはフジテレビの伝説的料理番組「料理の鉄人」に出演し、初代「和の鉄人」として活躍。2005年に厚生労働省より卓越技能賞「現代の名工」を受賞。2007年には旭日小綬章授章(勲四等)。2020年12月よりYouTubeチャンネル「鉄人の台所」を開設。趣味はゴルフ、小唄、時代劇鑑賞。

次のページへ (2/3) 【動画】厨房で調理する道場六三郎さん
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