テスラはなぜ日本で受け入れられたのか 70台集結オフ会で聞いたオーナーの本音と人気のワケ
米電気自動車(EV)大手テスラが日本の自動車市場で急成長を続けている。2012年に1号車を投入して以来、世界マーケットの人気に比例して、国内での販売台数を加速度的に伸ばしている。世界有数の自動車大国で、なぜテスラは受け入れられたのか。
「車だけど中に積んであるものとか全然車じゃない」
米電気自動車(EV)大手テスラが日本の自動車市場で急成長を続けている。2012年に1号車を投入して以来、世界マーケットの人気に比例して、国内での販売台数を加速度的に伸ばしている。世界有数の自動車大国で、なぜテスラは受け入れられたのか。
17日に、東京・A PIT オートバックス東雲で行われたテスラ車のオフ会には約70台が集まった。そこで、店頭を除いて初披露されたのが、テスラのモデルYだった。ミッドサイズの多目的スポーツ車(SUV)で、先行発売されている欧米では好調なセールスを記録している。日本でも6月10日に受注を開始して以来、大きな反響を呼んでいるという。
テスラの特徴は、なんといっても先進性にある。装備は簡潔で必要十分。モデルYもハンドルの横に、15インチのタッチパネルが置かれているだけだ。屋根は1枚のガラスで構成され、開放感を高めている。また、床下はフラットで、後部座席も大人3人が足を伸ばしてゆったり乗車できる。収納はフロントとリア合わせて2000リットル以上と、十分なスペースを確保している。EV車であること以上に、乗り手の使い勝手が考慮されている。
ただ、いくら性能がよくても、日本で受け入れられるかどうかは別だ。かつてアメ車といえば、燃費が悪い、壊れやすいのイメージがついた。日本から撤退した外国車メーカーは枚挙にいとまがない。特にモノづくりに置いて、日本人の見る目が厳しいことはよく知られている。
しかし、テスラには当てはまっていない。本格的な普及はこれからとはいえ、08年にアップルのiPhone(アイフォーン)が日本に上陸して、瞬く間に席巻したかように“黒船”としての存在感を増している。
いったいなぜ、受け入れられたのか。
実際に、複数のテスラオーナーに聞くと、「もう何も不満はないです。非常に乗りやすい」「全然違う。車だけど中に積んであるものとか全然車じゃない」「走りも楽しい」といった声が上がった。振動も少なく、運転しやすいようだ。逆にデメリットを挙げてもらうと、「塗装のクオリティーがちょっと……」「ナビだけ。平気で狭い道を案内される」との指摘があった。
洗練された流線形のフォルムは無駄がなく、空気抵抗を減らして航続距離を増やすための設計が考え抜かれている。内装も近未来的。タッチパネルにはナビのほか、周辺の車やバイク、人、路面のサインが可視化され、定期的にアップデートされる。アプリと連動すれば、愛車の状況が手に取るように分かる。こうした細かい技術やサービスが、運転に慣れた日本人ドライバーの心をつかんでいると言える。オートパイロットと呼ばれる運転補助機能も評価が高く、特に長距離の運転ストレスを軽減するという。
そして、維持費の安さだ。ウクライナ情勢の影響もあり、世界的に物価が高騰する中、ガソリン代が高止まりしている。事情に詳しい関係者は、「アメ車なんだけど、大排気量ではなく、エネルギー効率が最優先に考えられている。ランニングコストや維持費も圧倒的に安い。従来の車の5分の1から10分の1くらい。交換部品も少ないので、車検もしやすいメリットがある」と話す。家計に優しく、環境にも配慮した車が、今後、日本でもさらに市民権を得ていくのは必然のようだ。従来モデルは1000万円を超え、裕福層が乗る車の印象があったが、モデル3の登場で価格面も抑えられている。
ガソリン車からEV車へ、各国の自動車メーカーが開発にしのぎを削っている。ライバル社の追い上げが激化する中、先行するテスラはどこまでシェアを拡大するのか。日本における動向にも注目が集まっている。