突然の渡米から5年、綾部祐二が1度も帰国しない理由 日本の芸能界には“未練ナシ”

お笑いコンビ「ピース」の綾部祐二(44)は日本を離れ、現在は米ロサンゼルスを拠点に活動を続けている。ニューヨークでの5年間、そして新天地となったLA、綾部の目にアメリカはどのように映っていたのだろうか。そして、日本への思いとは――。

アメリカでの生活を明かしたピース・綾部祐二
アメリカでの生活を明かしたピース・綾部祐二

夢のハリウッドスターまでの道のり、まだ達成度は「0%」

 お笑いコンビ「ピース」の綾部祐二(44)は日本を離れ、現在は米ロサンゼルスを拠点に活動を続けている。ニューヨークでの5年間、そして新天地となったLA、綾部の目にアメリカはどのように映っていたのだろうか。そして、日本への思いとは――。(取材・文=中村彰洋)

誰もがアッと驚く夢のタッグ…キャプテン翼とアノ人気ゲームのコラボが実現

 2017年10月から米NYを新天地とした綾部。日本でのポジションを確固たるものとしていた中での突然の決断だった。しかし、そこに恐怖や不安の文字は皆無だった。

「恐怖はなかったですね。逆に『なんの恐怖?』ってクエスチョンマークが出るくらいでした(笑)。修学旅行に行くのに恐怖ってないじゃないですか。100%が楽しみ。それと一緒です。強がるつもりもないですが、不安は何もなかったですね。『金、大丈夫かな?』ぐらいはありましたけど、働いていたので貯金ゼロで行くわけではない。40歳でいろんな経験値もある中でしたからね。これが18歳で飛び出してとかだったら不安もあったかもしれないですけどね」

 知名度を失う恐怖すらも感じることはなかった。「『戻ってきてもポジションがない』って言われたりしますけど、『そりゃそうだろ』って。何がそうさせているのかは分からないですけど、漠然となんとも思わないですね。そこに怖さを感じていたら、そもそもアメリカに行こうとも思わないでしょうね。これから先、さらに時間がたってみんなの記憶から消えてしまったとしても、強がってるつもりでもなく、本当に何も思わないです」。

 驚くことに綾部は渡米してから5年間1度も帰国していない。「5年間は日本に帰らないって決めて来たんです」とまさに有言実行だ。

「1年目、2年目はむしろ帰りたくないぐらいの気持ちでした。3年目から徐々に『今帰ったら日本ではどうなんだろう?』と思うようにはなりました。渋谷QFRONT前や竹下通りを歩いていたら『あ、ピース綾部だ!』とかなるのかなって(笑)。戻ったときに僕はどんな存在なんだろうって、今はそれが楽しみです。5年前だったら名前と顔だけなら数千万人は知ってくれていたと思うんです。それが5年離れてどうなっているのか、この感覚は5年離れた人間にしか分からないと思うんです。それがすごい楽しみです」

 一方で5年という一区切りを迎えたことで、今後は一時帰国の可能性もあると明かす。「今は親が元気でいてくれていますが、親との時間を過ごすためにもどこかのタイミングではと思っています。このまま親が元気なら10年いっちゃうかもしれないですけどね」と笑顔を見せた。

米NYでの体験を語ったピース・綾部祐二
米NYでの体験を語ったピース・綾部祐二

謎に包まれた収入源「日本のインフルエンサー的なことをしたり…」

 アメリカでは老人ホームでのボランティアや子どもたちが参加するダンス大会のビラ配りなどさまざまなことを経験してきた。収入源について疑問を抱く人も多いが、「日本のインフルエンサー的なことをしたり、そういうふうなことを5年間ずーっとやっています。大したことはやってないですよ」と笑顔で煙に巻いた。

 アメリカでの生活はまさに“刺激的”だった。さまざまな環境の変化があったが、1番衝撃を受けたのはコロナ禍での惨劇だった。

「パンデミックのときに暴動が起きました。あれは映画の世界でしたね。本当に目の前でガラスを割られたりしていて、こういうことが現実に起きるのかって……。火葬が間に合わず遺体が積んであったり、『うそでしょ?』と驚きの連続でした。ロックダウンもすさまじい決断の速さでした。徹底っぷりが一市民の僕にまでギンギンに伝わるっていうのがすごいなと思いましたね。アメリカの中でもNYは特別だったと思うので、あのときにNYはにいられたことは大きかったですね」

 そんな惨状を間近で見続けたが、綾部の気持ちが変わることはなかった。「日本に戻りたいとは1ミクロンも思わなかったですね。いい経験させてもらってるなってずっと思っていました」と当時を振り返った。

 LAに移住してから約2か月。NYとの違いに驚くことも多い。

「僕はビジーな街が好きなんです。NYは東京と一緒でスピード感がありました。でもLAはそこまでではないんですよ。NYにいるときはずっとファイティングポーズを取っていないと倒されちゃうんです。汚いし、治安も悪い街でした。でも夢や希望を持っている人にとってはきらびやかに見える街なんです。LAは逆にガードを下げても生きていける街だなと感じます。だから自分でポーズを取り続けないといけないなって。

 結果的には全てが良かったなって思うんです。5年NYにいて、コロナとかいろんなことを経験したうえでLAに来て正解でした。その反面、東京からNYに来たときよりも、もっとしっかりと自分を持っておかないと倒されるなって。『いつの間にかリングから降りてた』となっちゃいそうだなって思いますね」

 渡米前から口にしていた「ハリウッドスターになる」という大きな夢。まだ達成度は「0%」と現実をシビアに捉える。一方で綾部らしいポジティブな思いも口にした。

「極論で言えばせりふがない役もあります。でも基本的に英語はしゃべれなきゃダメです。お恥ずかしい話、5年たってスタートラインに立っていないですね。段階でいうとゼロってことにはなりますが、この世界って0からいきなり100ってパターンもある。何が起こるか分からないじゃないですか。これから、『ハリウッドスターになりたい』と日本から誰かが来ていきなりスターになる可能性だってあります。誰か芸人が来て一発当たって『綾部、何やってんだよ』って。でも5年のアメリカ生活っていう経験は実際に5年たたないと得られないわけです。それで十分といえば十分ですよね」

□綾部祐二(あやべ・ゆうじ)1977年12月13日、茨城県出身。2003年に又吉直樹とお笑いコンビ「ピース」を結成。17年10月から活動拠点を米ニューヨークに移す。22年5月にYouTubeチャンネル「YUJI AYABE from AMERICA」を開設。7月16日には初エッセー集「HI, HOW ARE YOU?」(KADOKAWA)を発売。

「HI, HOW ARE YOU?」
「HI, HOW ARE YOU?」

誰もがアッと驚く夢のタッグ…キャプテン翼とアノ人気ゲームのコラボが実現

□「HI, HOW ARE YOU?」(7月16日発売/税込み1650円)
綾部祐二の初エッセー集。2016年に拠点をアメリカに移した綾部は現在に至るまで、取材に応じることなく、また帰国することもなかった。そんな綾部が渡米から5年経過した節目に沈黙を破った。綾部の人生哲学が詰まった1冊は正解の見えない世の中に1つの指針を示す人生の書とも言えるだろう。
販売サイト:https://www.kadokawa.co.jp/product/322203002354/

この記事に戻るトップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください