阪本順治監督が語る 別府のミニシアター館長が「日本映画ペンクラブ賞」受賞の意味
「映画というのは作り手が生みの親、お客さんが育ての親、映画館はゆりかご」
この映画館に魅了された映画人は数知れない。中でも、最も長い付き合いになるのが表彰式のゲストとして駆けつけた阪本監督だ。藤山直美主演の「顔」(2000年)では、國村隼が映写技師として働く映画館として登場。「ほこりをかぶっている映写室が味わい深かったんだけど、せっかく映画に出るならと、きれいに掃除されちゃったので、撮影の時はわざと古びた感じにしたんだよね」と阪本監督は振り返る。以来、すべての阪本監督作品を上映。照さんと阪本監督はともに独身同士であることから、娘の実紀さんも「恋人みたい」というほど仲がいい。
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表彰式には、石橋蓮司主演の「一度も撃ってません」(4月24日公開)のキャンペーンの合間を縫って駆けつけ、照さんの大好きな名作「ひまわり」にちなんで、ひまわりの花束をプレゼント。「昨年、米寿を迎えられたので、本当に東京に来るのか、と思っていたけども、お元気そうで何よりです。無事に別府に帰ってくださいね」とあいさつ。その微笑ましい光景には会場からも拍手が起こっていた。
阪本監督が表彰式後、こんなことを語ってくれた。
「映画というのは作り手が生みの親、お客さんが育ての親、映画館はゆりかご、という僕の考えがあるんです。作ったやつが偉いわけではない。ゆりかごになってくれる映画館は、経済的なことも全部乗り越えて、やっているわけです。全国にミニシアターは多々ありますが、フィルム時代からデジタルになったときに、何千万円の投資が必要だとか、それぞれ苦労あります。お金を回収するのは大変なんです。それでも、やり続ける理由は、一つだけ。それは自分の好きな映画お客さんに見て欲しいという思い。照さんみたいな人がいないと、僕が映画を作っても意味がない。作品は評価を受けるけれども、僕ら作り手も、どこか忘れがちなのが小屋なんです。ゆりかごの役割を担っている人を讃えるのは意義のあることです」
阪本監督の言葉は、まさに我が意を得たり、だ。2019年の映画界は過去最高の収益を上げた。それだけを見ると、映画館は儲かっていると錯覚する人もいるかもしれない。しかし、それは大手シネコンの話。全国のミニシアターの館主たちはさまざまな工夫をして、自分が本当に届けたい作品を観客に届けようとしている。照さんは、そんな館主の代表的な存在だ。
「別府ブルーバード劇場」は今年7月20日、照さんが館長になってから50周年を迎える。その記念作として考えているのは、同じく公開50年を迎える「ひまわり」(5月1日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開)だ。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンが主演した悲恋の物語はHDリストア版として美しい映像となって蘇る。
「コロナウイルスの影響でお客さんは減ってもいますが、お客さんがいらっしゃる限り、感染対策をしながらやっていきたい、と思っています。シニアの方の中には、デイサービスもお休みになる中、娯楽を求めてやってくる方もいらっしゃるんです。50周年は『50』という数字にちなんで、特別な興行をしようと思っているんですよ」と照さん。節目のその日に全盛期のような大行列ができることを夢見ている。