前千葉県知事で俳優の森田健作が6月24日、都内で行われた「砂の器」取材会に登場した。「砂の器」は松本清張原作小説で、過去に何度も映像化されている人気作品。森田は松竹製作の野村芳太郎監督版映画作品に出演している。当日、森田は当時のエピソードなどを語った。

　1974年公開の同作。森田は野村監督と脚本家の橋本忍氏から強烈なオファーを受けたという。森田は「橋本先生からはいつも“元気ボーイ”と言われていてね。ちょうど、あのころ青春ドラマが多かったんでね。バサバサな頭をしていたんだけど、『砂の器』で七三分けにしたの。それが印象に残っております」と懐かしげに語り出し、「野村監督とは歌謡映画で何回か出させてもらったんですけど、大作のすごい演技のもののオファーがなかったものですからね。オファーをいただいたときに『2年も3年もかかるらしいぜ』ということで、これはちょっとなあと思っていたんですよ」と振り返った。

　オファーを受けた理由は「松竹さんの方から『ぜひやれ』と言われたんで、『わかりました』と。で、台本を読んでいったらね。蒲田警察が出ている。うちの親父が刑事をやっていて、退職前に蒲田署に来たんですよ。『じゃあ、おれがやらなきゃダメだ』と思ったわけ」と森田。続けて、「そんなようなね。気持ちになりましたよ。野村監督、橋本先生からご指名いただいたことは、今考えれば大変なことで、相当な決断がいったんじゃないかな。心から感謝しております」と心境を明かした。また、父から「警察なんかかっこいいものじゃないんだ。一度勉強してこい」と言われて、蒲田署を見学したというエピソードも語っていた。

　同作では今西栄太郎（丹波哲郎）と吉村弘（森田）がバディを組み、容疑者を追う。丹波との撮影が多かった森田は「丹波さんとはそれまで共演がなかったと思うんですね。評判を聞いたら、なにしろ酒は飲まない。セリフは覚えない。『森田、大丈夫か』と聞かれたんで、『私も同じですから』と周りの人に言ったこと覚えてます」とニヤリ。報道陣から「丹波さんから俳優として教えてもらったことは何かありますか」という質問が上がると、森田は「ない。ない」と即答し、「丹波さんから『おい、セリフ覚えろよ』と言われたことはありました。『丹波さんも覚えてないじゃないですか』と言おうとしたけど、『はい、気をつけます』と答えたけどね」と話し、笑いを誘っていた。

　森田は「『砂の器』は自分としても誇りの持てる作品ですよね。あのスケジュールでよくやったでしょ。よく頑張った。人が言ってくれないから自分で言う」と笑顔を見せつつ、「四季を使っているでしょ。親子の情愛ですよ。トップシーンで砂の山が風で落ちていく。要するにどんなに形が変わっても、砂には変わらないんですよね。どこに行こうと、親子の絆は変わらないんだ。それが宿命という風に思っています」と同作の感想を述べていた。

　CS放送局「衛星劇場」は、8月・9月に「没後30年 松本清張特集」と題して、松竹映画18作品を放送。9月3日には森田健作出演の「砂の器 デジタルリマスター版」を放送する。

＜8-9月特別企画 没後30年 松本清張特集～松竹映画18作品～＞
「顔（1957年）」8月1日（月）後6：15～ほか
「眼の壁」8月2日（火）後6：15～ほか
「波の塔」8月3日（水）後6：00～ほか
「無宿人別帳」8月4日（木）後6：15～ほか
「風の視線」8月5日（金）後6：30～ほか
「霧の旗」8月9日（火）後6：00～ほか
「内海の輪」8月10日（水）後6：00～ほか
「黒の奔流」8月11日（木）後6：15～ほか
「彩り河」8月12日（金）後6：15～ほか

「影の車」9月3日（土）前7：00～ほか
「ゼロの焦点」9月2日（金）前8：45～ほか
「張込み」9月1日（木）前8：30～ほか
「砂の器 デジタルリマスター版」9月3日（土）前8：45～ほか
「鬼畜」9月8日（木）前8：30～ほか
「わるいやつら」9月1日（木）前11：15～ほか
「疑惑」9月10日（土）前7：00～ほか
「天城越え」9月10日（土）前9：15～ほか
「球形の荒野」9月7日（水）前8：30～ほか

　姉妹チャンネルの「ホームドラマチャンネル」では共同企画として、8月に下記5本の傑作ドラマを放送。

＜没後30年 松本清張特集～傑作ドラマ5作品～＞
松本清張：疑惑（2003／3／22）8月1日（月）前9：30～
松本清張：顔（2013／10／3）8月2日（火）前9：30～
松本清張：球形の荒野（2014／3／9）8月3日（水）前9：30～
松本清張：わるいやつら（2014／3／16）8月4日（木）前9：30～ほか
松本清張：時間の習俗（2014／4／10）8月5日（金）前9：30～ほか

「没後30年 松本清張特集」特設ページ
https://www.eigeki.com/special/matsumotoseicho