西葉瑞希が舞台「Dr.STONE」主要キャストをつかむまで 「お芝居の面白さに目覚めました」

累計発行部数1400万部超の大人気漫画を舞台化した「Dr.STONE THE STAGE ~SCIENCE WORLD~」がいよいよ9日からサンシャイン劇場で開幕する。物語のキーパーソン小川 杠(おがわ・ゆずりは)役に抜擢されたのは「魔進戦隊キラメイジャー」や「ヨドンナ」の出演でも話題となった女優の西葉瑞希だ。愛知県のご当地アイドルやグラビアアイドルを経て芝居の魅力にとりつかれた23歳の若き苦労人が持ち前の負けん気で大舞台の切符をつかむまでを追った。

西葉瑞希【写真:舛元清香】
西葉瑞希【写真:舛元清香】

西葉瑞希インタビュー

 累計発行部数1400万部超の大人気漫画を舞台化した「Dr.STONE THE STAGE ~SCIENCE WORLD~」がいよいよ9日からサンシャイン劇場で開幕する。物語のキーパーソン小川 杠(おがわ・ゆずりは)役に抜擢されたのは「魔進戦隊キラメイジャー」や「ヨドンナ」の出演でも話題となった女優の西葉瑞希だ。愛知県のご当地アイドルやグラビアアイドルを経て芝居の魅力にとりつかれた23歳の若き苦労人が持ち前の負けん気で大舞台の切符をつかむまでを追った。(取材・文=福嶋剛)

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「Dr.STONE THE STAGE ~SCIENCE WORLD~」キービジュアル 【写真:(C)米スタジオ・Boichi/集英社・「Dr.STONE」THE STAGE製作委員会】
「Dr.STONE THE STAGE ~SCIENCE WORLD~」キービジュアル 【写真:(C)米スタジオ・Boichi/集英社・「Dr.STONE」THE STAGE製作委員会】

家族で楽しめる「科学ファンタジー演劇」を東京・神戸で上演

「ようやく最終稽古が終わりました。今回はキャストみんなが動き回っていて今まで以上に体力勝負の楽しみな舞台なんです」

「Dr.STONE」は「週刊少年ジャンプ」で連載していた大人気漫画。ある日、世界中の人類が一瞬にして石になってしてしまう謎の現象が起こった。それから約3700年後、天才高校生の主人公「千空」(せんくう)が突如目覚め、石と化した世界を科学の力で元に戻すため、冒険の旅に出かける壮大な物語。西葉は千空の友人で「小川 杠」(おがわ・ゆずりは)役を演じる。役者デビューから5年目にして掴んだ夢の舞台に挑戦する。

「今までは大きな武器を持った強めの役が多かったんですが、今回初めて王道の可愛らしい役をいただきました。『サイエンスワールド』というタイトルの通り、実際にサイエンスアーティストの市岡元気さんが科学実験を監修・指導されていて、いろんな科学実験が舞台で繰り広げられるので舞台が初めてのお子さんでも楽しめる内容になっています。私も今からワクワクしています」

 西葉は愛知県豊田市の自然の多い街で育った。幼い頃は人見知りでいつも母親の後ろに隠れるように歩いていたという。

「小学1年生の頃に歌番組で踊っているバックダンサーさんに憧れて養成所で歌とダンスを習い始めました。プロになりたいと思ったきっかけは忘れもしない小学6年生のときに見た(第62回)紅白歌合戦でした。浜崎あゆみさんが巨大なドレスの衣装で現れて曲調が変わった瞬間、スカートに扮(ふん)していたダンサーさんたちが一斉に踊り出すという驚きの演出を見て、こんなふうに歌って踊れる人になりたいって」

 そんなときに母親が地元アイドルの募集を見かけ、西葉に声を掛けたことがきっかけで豊田市のご当地アイドル「Star☆T」に加入した。

「はじめはアイドルに興味がなかったんですが、本格的なプロを目指すためにとにかく動き始めようと思って。ところがそのグループは事務所のない個人活動だったので、あらためてプロを目指すために現在の事務所のオーディションを受けました」

 見事オーディションに合格したが、待っていたのは新しいアイドルユニット「きゅい~ん’ズ」だった。

「今だから言えますが、初期は王道とは真逆のかなり振り切ったコンセプトだったので不安しかなかったです。メンバーもすぐに抜けちゃって気が付いたら私1人(笑)。東京で1人暮らしを始めて都内の高校にも通い始めました。家族はいつも私を応援してくれましたが、そのときばかりは『生半可な気持ちで戻ってくるな』って言われましたね」

 新メンバーを加えてコンセプトも一新。西葉はグループのリーダーとして再スタートを切った。メジャーレーベルからCD発売も決まり順調に滑り始めたかに見えたが、アイドルグループにとっては厳しい時代がやってきた。

「楽しかった思い出もいっぱいありますけど、同じぐらい大変なことも多かったですね。新メンバーは歌も踊りも未経験だったので1人1人と向き合ってグループをまとめることで精いっぱい。私は“お姉さん役”というより厳しい“お父さん役”でした(笑)。でもステージに上がると非日常が待っていて、お客さんは一生懸命に私たちの歌や踊りを応援してくださって。グループとしても結束力が強くなり、できるところまでアイドルを続けてみようって」

 ここで大きな出会いが生まれた。西葉のマネジャーが交代し、これまでの音楽路線から役者への挑戦を提案した。マネジャーは当時を振り返る。「彼女を見ているとものすごい努力家で、意外と器用な面もあるなって気付いたんです。アイドルとしての寿命は短いからこの世界で長く続けていくために一か八かで仕事を振ってみたんです」

 まるで姉のように見守ってくれるマネジャーを信じ、才能ゼロだと思っていた芝居に挑戦してみた。初舞台は「13月の女の子」(2017年)。初めて挑むには難易度の高い芝居だったが、持ち前の負けん気で乗り切った。

「役者なんて絶対に無理だと思っていたのに、やってみるとすごく面白くて。お芝居って自分じゃない人間になれるんだっていう面白さに目覚めました。現場では先輩方からお芝居の面白さを教えていただいて毎日が新鮮でしたし、同じセリフや同じ演出の繰り返しの舞台にも毎回違った空気感もあって、それはアイドルのライブにも通じるなって。マネジャーに出会わなかったら今ごろ路頭に迷ってました(笑)」

西葉の大切にしている言葉は「1日ほどよく」【写真:舛元清香】
西葉の大切にしている言葉は「1日ほどよく」【写真:舛元清香】

「魔進戦隊キラメイジャー」柿原瑞希役に抜擢

 チャンスさえあればどんなことにも果敢に挑戦し、グラビアにもチャレンジした。

「たまたま参加したイベントで見た目が明らかに怪しいカメラマンさんがやってきて、突然『撮らせてくれ』って(笑)。ドキッとしたんですが、実は有名なカメラマンさんで、水着の写真を撮っていただいたらSNSですごくたくさんの方に見ていただきました」

 2018年、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)主催の「サキドルエースSURVIVAL SEASON9」で準グランプリを獲得し、同誌のグラビアを飾るなど、グラビアアイドルとしても知られるようになった。そして翌年、20歳を迎えるタイミングでアイドルを卒業。役者の道を選択した。

「役者の道という、私がやりたい方向が定まったので、アイドルを辞めるには今がタイミングだなって。それでメンバーと話し合って卒業しました」

 2020年に大きなチャンスがやってきた。劇場版「魔進戦隊キラメイジャーエピソードZERO」に柿原瑞希役での出演が決定し、そのままテレビシリーズにも出演を果たした。また、スピンオフ作品「ヨドンナ」、「ヨドンナ2」では桃月なしこ演じるヨドンナと共演し、西葉の名前は広く知れ渡った。

「最初はちょっとした映像作品のお仕事だと思っていたんですが、こんなに大きな経験になるとは思っていなくて。役も同じ瑞希でしたが、柿原瑞希を演じて西葉瑞希も同時に成長させてもらいました」

 何より田舎の祖父母に初めて自分の姿をテレビで見せられたことがうれしかったという。

「毎週日曜日の朝、番組が終わるといつもLINEで『見たよ』ってメッセージを送ってくれました。いろいろと大変なことも多かったですが、あきらめずにやってきて良かったなって思った瞬間でした」

 若い頃はダンサーになりたい、センターに立ちたいという目標があったが、役者になってからは目標を掲げることをやめたという。

「今を精いっぱい生きて、その積み重ねがいつの間にか未来につながっている方が面白いって思うようになりました。グラビアもお話をいただける間はもうちょっと続けていこうと思っています。歌は……需要があれば(笑)」

 毎日が全力投球の舞台で終演後はいつも脱力状態になるという。そんなオフの楽しみは平日の日中、レストランのテラス席でゆっくりとお酒を楽しむことだと明かす。

「街を行きかうサラリーマンの方々を眺めながら『私は週末たくさん働いたのでご褒美です』って心の中で言いながら1人でハイボールとおつまみを楽しむのが至福の時間なんです(笑)。帰ったらいろんなアニメをボーっと見て寝落ちする。完全におじさんです(笑)」

 西葉は「1日ほどよく~」という言葉をSNSの結びとしてでたびたび使う。

「毎回どんなことにも100%を目指して頑張ってしまうと、大事な場面で疲れてしまい100%の力を出せないことってあるんですよね。だから普段は無理せずほどほどに過ごしましょうねっていう、実はみなさんへのメッセージのようで自分自身に言い聞かせている言葉なんです」

□西葉瑞希(さいば・みずき)1999年生まれ。愛知県出身。幼少期よりモデル、アイドルとしてキャリアをスタート。アイドル卒業後は、歌、殺陣、アクションなどいろいろな表情を見せる女優として舞台やドラマ、グラビアなどで活躍。「魔進戦隊キラメイジャー」などではツンデレのヒロインとして注目を集め、ゲストヒロインとしては異例のトレンド入りを果たした。2022年、大人気漫画の初舞台化「Dr.STONE THE STAGE ~SCIENCE WORLD~」で主要キャスト・小川 杠役として出演が決定し、サンシャイン劇場で7月9~18日、兵庫・AiiA 2.5 Theater Kobeで21~24日で上演される。

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