【映画とプロレス #7】初代タイガー、ライガーもお世話になったウェイン・ブリッジさん逝く 「007」のスタントとしても活躍
007シリーズなどのスタントマンとして活躍した一面も
おっと、忘れるところだった。本欄は“映画とプロレスのコラム”である。ブリッジが活躍していた時代は、地上波テレビによって英国全土にプロレスが放送されていた。しかも土曜の午後という現地におけるゴールデンタイム。家族揃ってスポーツ中継を見るというのが週末午後の典型的な過ごし方だったのだ。それだけにプロレスラーは全国区の有名人で、中継番組以外にも数々のエンターテインメントに引っ張りだこだった。テレビ番組のゲストやレコードをリリースすることもめずらしくなく、映画に出演した選手もいた。ブリッジもそのなかのひとりだったのだ。彼の場合、その肉体美からアクションスターのスタントが主流だった。
たとえば、“007シリーズ”でショーン・コネリーのスタントダブルとして何本ものボンド作品で仕事をした。確かに、ブリッジの肉体はコネリー版ボンドにふさわしいかっこよさ。また、コネリーとブリジット・バルドー共演の西部劇「シャラコ」(68年)、マイケル・ケイン主演のクライムアクション「ミニミニ大作戦」(69年)でもスタントをつとめたという。
ボディービルダーの夫人サラ・ブリッジスもまた、映画界とつながりがある。アーノルド・シュワルツェネッガーの出世作「コナン・ザ・グレート」(82年)にエキストラで登場。アイルランドの名匠ニール・ジョーダン監督作「ギャンブル・プレイ」(02年)ではエキストラやスタントではなく、女優として役柄(フィリッパ役)を演じている。
現在もボディービル界で働くサラ夫人は、シュワルツェネッガー主催のボディービル大会での仕事のためアメリカにいた。が、ブリッジ体調悪化の連絡を受け緊急帰国、家族とともに夫の最期を看取ることができたという。
この原稿を書いているとき、机の横に積まれていた資料がなぜか突然崩れた。そこで目に入ったのが前回訪問した際に用意していたブリッジの経歴だったから驚いた。日本人好きのブリッジが助けてくれたのだと思わずにはいられないお茶目なハプニング。あらためて、英国が誇るヘビー級王者、ウェイン・ブリッジのご冥福をお祈りいたします。
(日付はすべて現地時間/文中敬称略)