【週末は女子プロレス♯57】必殺技はヒップアタック、藤波辰巳をリスペクトする辰巳リカに流れる“昭和の血”

本欄掲載の7月9日(土)、東京女子プロレスが東京・大田区総合体育館にてビッグマッチ「SUMMER SUN PRINCESS ‘22」を開催する(14時開始)。メインは、6・12「CyberFight Festival2022」さいたまスーパーアリーナで坂崎ユカを破りプリンセス・オブ・プリンセス王座を守った中島翔子4度目の防衛戦で、挑戦者はサイバーフェスにおける4WAYマッチでタッグパートナー渡辺未詩を破り挑戦権をゲットした辰巳リカ。ともに団体を初期から支えるメンバーであり、同い年。しかも辰巳のデビュー戦で相手を務めたのが中島だった。しかし、両者が最高峰のベルトを懸けて闘うのはこの試合が初めて。お互いの歩んできた道が大舞台でクロスするエモいマッチメークは東京女子の十八番でもあり、中島vs辰巳の頂上対決は、また新たなるドラマの始まりと言っていいだろう。

辰巳リカがビッグマッチに挑む【写真:(C)東京女子プロレス】
辰巳リカがビッグマッチに挑む【写真:(C)東京女子プロレス】

7月9日、プリンセス・オブ・プリンセス王座に挑戦

 本欄掲載の7月9日(土)、東京女子プロレスが東京・大田区総合体育館にてビッグマッチ「SUMMER SUN PRINCESS ‘22」を開催する(14時開始)。メインは、6・12「CyberFight Festival2022」さいたまスーパーアリーナで坂崎ユカを破りプリンセス・オブ・プリンセス王座を守った中島翔子4度目の防衛戦で、挑戦者はサイバーフェスにおける4WAYマッチでタッグパートナー渡辺未詩を破り挑戦権をゲットした辰巳リカ。ともに団体を初期から支えるメンバーであり、同い年。しかも辰巳のデビュー戦で相手を務めたのが中島だった。しかし、両者が最高峰のベルトを懸けて闘うのはこの試合が初めて。お互いの歩んできた道が大舞台でクロスするエモいマッチメークは東京女子の十八番でもあり、中島vs辰巳の頂上対決は、また新たなるドラマの始まりと言っていいだろう。

 そもそも辰巳は、坂崎の誘いから東京女子に入団、プロレスラーになった。まずは音楽をやりたくて上京し、オーディションを通りDPGというグループに加入。DPGはさまざまなジャンルのメンバーによって構成されており、ここからプロレスとのかかわりが生まれたという。そしてある日、同じユニットに所属していた坂崎から誘われて、「プロレスラーになりたい」と高木三四郎に直談判。ときはちょうどDDTの女子部門、東京女子を起ち上げようかという頃。このタイミングで、2人は東京女子の練習生になった。

「プロレスやりたいんですと大社長にお願いはしたんですけど、私から自主的にって感じではなかったんですよね。ユカちゃんに誘われて、じゃあやってみようかって感じで飛び込みました。それまでプロレスって知らなくて、全然無知なままで(苦笑)。ただその頃って、ステージとかに立つ身として何者かになりたかった、武器がほしかったんです。そんなときにプロレスと出会い、プロレスのエンターテインメント性にものすごく惹かれたので、プロレスで何者かになれるんじゃないかと思ったんですね」

 身体を動かすことが好きだったこともあり、「厳しいし痛いし激しいし、受け身もロープワークも大変(苦笑)」だったけれど、練習にはついていけた。変わりたい、デビューしたいとの一心で続け、ついに本デビューが決定。坂崎は旗揚げ戦でデビューしたため遅れをとる形になってしまったが、「悔しさをバネにして、むしろ燃えました」と彼女は振り返る。そして迎えた初リングでは、旗揚げ前にデビューしていた中島を相手に敗れはしたものの、「スカッとしました!」とプロレスに手応えを感じていた。実はこの手応えには、ある理由があったという。

「その頃ちょうど、グループ活動とかで不遇な待遇を受けてモヤモヤしていたんです。一番下っ端でしたし…。そのモヤモヤをすべてぶつけてやるぞって気持ちで相手にエルボーをぶつけていったのが気持ちよくて! フラストレーションを放出できた感じがして、プロレスってこんなに魅力的なんだって思いました(笑)」

 2014年1月28日にデビューし、一年半後にはユニットも脱退、プロレス一本に絞ることに決めた。これを機にケンドー・リリコから辰巳リカに改名。「辰巳リカ」は、高木のアイデアだ。

「改名は大人の事情ですけど、いまになってみればいいきっかけだったなと思います。辰巳リカが、おニャン子クラブの立見里歌さんと字違いの同姓同名だってことはわかりました。辰巳はプロレスラーの藤波辰巳(現・辰爾)さんから。昭和オマージュがすごいというか(笑)。まあ、いろんな意味が込められているようなので、こちらもなにかしらオマージュした方がいいのかなと考えましたね」

 そこで生まれたのがドラゴンスリーパー、ドラゴンスクリューなどのドラゴン殺法だ。もちろん、リアルタイムで知っているわけではない。が、藤波の試合動画を見まくったことから、昭和プロレスへの愛着が沸いてきたという。

「藤波さんについてはプロレスを始めてからちゃんと知ったって感じです。研究するうちに昭和のプロレスラーへのあこがれとか、リスペクトを抱くようになりました。ただ、リアルタイムでないのがすごい悔しくて! 私も昭和のプロレスを生で見たかったなってホントに思いましたね。でも、藤波さんはいまも現役で闘われているので、ドラディションを生で観戦してなんとか体感できました。ほんのわずかですけど、昭和プロレスの醍醐味みたいなものを感じ取れたりして、よかったです」

名前の由来は「昭和オマージュがすごい」と明かす【写真:新井宏】
名前の由来は「昭和オマージュがすごい」と明かす【写真:新井宏】

改名前から使っていたヒップアタック「これで相手をなぎ倒したらカッコいい」

 ドラゴン殺法とともに使っているヒップアタックは本家・越中詩郎もドラゴンボンバーズだけに、こちらもオマージュかと思いきや、ドロップキックに代わる技として改名前から使っていた。

「ドロップキックを使う人は多いので、私はなにか別のものを得意技にしたいと思って。そこで考えたのがヒップアタック。お尻ってちょっとかわいい感じがするじゃないですか。一見弱そうに見えるかもしれないけど、これで相手をどんどんなぎ倒していったらメッチャカッコいいなと思って(笑)」

 どうやら辰巳は越中と同様に硬いヒップの持ち主のようで、これがハマった。コーナーから飛ぶミサイルヒップは直接フォールにつながるフィニッシュ技のひとつ。中島のダイビングセントーンに匹敵するだろう。

 そして迎える大田区での中島戦。「メインのつもりで臨んだ」というサイバーフェスで挑戦権を手に入れた辰巳は、中島vs坂崎のタイトルマッチを会場の片隅で見守っていた。この試合の結果により、大田区でどちらに挑むかが決まる。確実なのは、どちらになっても辰巳には大きな意味ある闘いとなることだ。

「ユカちゃんが来ても翔子が来ても、イヤなんですよ(苦笑)。どっちもイヤだけど、うれしさもあって、難しい感情でしたね。実際、2人とも応援してて、どっちが来てもすごいことができるんじゃないかっていう思いもありました。結果的に翔子に決まって、いまの翔子にかなう人いないだろうって感じが出てましたね。でも、ここはもう私しかいない、立ちはだかってやるぞって気持ちになりました!」

 中島は今年3・19両国国技館で絶対的エース山下実優を破り2度目の戴冠を成し遂げた。辰巳は昨年1・4後楽園で坂崎を破り、4度目の挑戦にしてプリンセス王座待望の初戴冠。2度の防衛後、5・3後楽園で山下にベルトを明け渡した。あれから一年、自ら挑戦を申し出たわけではないものの、転がり込んできた次期挑戦者決定戦という機会をモノにし、再びあのベルトが見えてきた。白昼夢でタッグ戦線をけん引してきた渡辺を破っての挑戦だけに、勢いあるいまこそがビッグチャンスである。

「未詩ってホントに頑張り屋さんで、マジメにコツコツ頑張ってるのを見てるから、刺激になりますね。年下ですけど、未詩を見てると自分ももっと頑張らなきゃと思うし、いい影響を受けて、自分を奮い立たせることができるパートナーです」

 挑戦権を懸けて闘った渡辺の思いも背負い、辰巳は7・9大田区のメインに立つ。

「シングル戦線からちょっと離れていましたけど、チャンスはずっと探してました。転がり込んできたチャンスをモノにして挑戦権をつかんだので、ここは絶対に取りたいと思っています。同い年の翔子とは一緒に東京女子を盛り上げていきたいし、私たちの世代もまだまだだ頑張るとの気持ちがあるので、いい意味でやりあえるのかなって思いますね」

 デビューから8年半で実現する、大舞台でのメインにおける中島vs辰巳のタイトルマッチ。辰巳は前回戴冠時の反省も踏まえ、今後への展望も胸に、王者・中島の前に立つつもりでいる。

「初奪取まではホントに雲の上の幻みたいなベルトだったんですけど、取ると自分自身変われるし、まさに変身ベルトだなって思いました。魔法のコンパクトみたいな(笑)。実際手にしてみたら意識がホントに変わりましたね。団体の顔にもなりますし、恥ずかしいことはできない。トレーニングはもちろん。私生活から振る舞いが変わるよう意識しますよね。ただ、初めて手にしたときは気負いすぎたとも感じていて。落としたときはすごく悲しくて悔しかったんですけど、落ち着いたというか我に返ったところもあって。あれから一年で団体も両国国技館に進出したり、個人でもいろんなことを経験して、いま取ったら前回よりも落ち着いた余裕のあるチャンピオンになれるんじゃないかなって。翔子に勝ってベルトを巻いたら、前代未聞のことをしていきたい。いろいろ考えてますね、展望があります!」

 新王者の「展望」がなにか気になるところだが、大田区大会から1週間後には東京女子最強を決めるトーナメント「第9回東京プリンセスカップ」が両国KFCホール3連戦(7・16~18)でスタート。もちろん辰巳もエントリーしており、彼女が王者として臨むかどうかでその後の展開は大きく変わってくるだろう。

「そうですよね、チャンピオンかチャンピオンじゃないかで気持ちが全然違いますよね。とにかく大田区でベルトを巻いて、この夏の主役をかっさらう気持ちでいます。トーナメントも優勝して無双したい。この夏は“辰巳リカ無双”をもくろんでます!」

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