明治大、伝統校・日本学園を“付属校”にする理由 学生確保競争が熾烈化

内閣総理大臣を務めた吉田茂や俳優の斎藤工ら数々の著名人を輩出した伝統男子校の日本学園中学校・高等学校(東京都世田谷区松原)が、明治大学の系列校となることで注目を集めている。両者は昨年12月に系列校化基本合意書を締結。26年4月1日から学校名が「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に変わり、同時に男女共学校になる。明治大学への付属高校推薦入学試験による入学者の受け入れは29年度からとなっている。

明治大学が日本学園を系列校に、その理由とは?【写真:ENCOUNT編集部】
明治大学が日本学園を系列校に、その理由とは?【写真:ENCOUNT編集部】

総理大臣の吉田茂や俳優の斎藤工ら著名人を多数輩出

 内閣総理大臣を務めた吉田茂や俳優の斎藤工ら数々の著名人を輩出した伝統男子校の日本学園中学校・高等学校(東京都世田谷区松原)が、明治大学の系列校となることで注目を集めている。両者は昨年12月に系列校化基本合意書を締結。26年4月1日から学校名が「明治大学付属世田谷中学校・高等学校」に変わり、同時に男女共学校になる。明治大学への付属高校推薦入学試験による入学者の受け入れは29年度からとなっている。

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 明治大学の付属としては、「明治大学付属明治高等学校・明治中学校」のほか、学校法人・中野学園が設置した「明治大学付属中野中学・高等学校」と「明治大学付属中野八王子中学高等学校」がある(校名表記は公式ホームページによる)。この3校の21年度卒業生進学先を見ると、順に明治大付属明治高は明治大学227人、他大学28人、その他3人。高校3年間の学習成績と人物、適性、志望理由に基づいて推薦され、毎年約9割の生徒が明治大学へ進学するという。明治大学付属中野高は卒業生414人中、明治大学(付属高校推薦入学)が339人、北大、東工大など国公立大学6人、早慶上理など私立大学49人。明治大学付属中野八王子高は卒業生310人中、277人が明治大学に進学した。この3つの学校に入学すれば高い確率で明治大進学への切符が手に入るというわけだ。

 一方、26年から明治大学付属世田谷中学校・高等学校に看板替えして再出発する日本学園高の22年3月卒業生(現役151人のみ)の大学合格実績を見ると、帝京大26人、多摩大13人、明治大11人、東洋大・国士館大9人、早稲田大8人と続き、国公立では東京都市大7人、北海道大1人、岐阜大医1人などに合格者を輩出している。特別進学コースの入学試験で優秀な成績を収めた生徒は特待生合格となり、4段階の最高クラスであるSS特待になると入学金、授業料、教育充実費、施設費などが免除される。難関大合格はこの特別進学コースの生徒がけん引しているとみられる。

 伝統校として知られ、それなりの進学実績を残している日本学園だが、困難に直面している。予備校講師がこう明かす。「実は日本学園高校の特別進学コースの偏差値は市進80%予想基準で44、総合進学コースは32ほどでパッとしません。生き残りを図るためには共学化や国際化など抜本的な改革を打ち出す必要がありました」。

 一方、系列化は明治大にとっても助けとなる。一般選抜入試の志願者数で早稲田大と競い合うほど人気の高い明治大だが、少子化の進行などによって日本全国の私大の半数弱が定員割れを起こす中、学生の確保は大学にとって喫緊の課題だ。「明治大は誰もが知る有名大学ですが、早慶だけでなくMARCH内の立教、青山学院との競争にさらされています。優秀な学生の安定的な確保のためには付属の中高を増やして共学化する必要があったわけです」(同)。文科省の関係機関によると、2017年の大学進学者数は約63万人だが、2040年には約51万人まで減少。その一方で女性の大学進学率は今後も上昇が見込まれている。

 冒頭で述べた通り、明治大学付属世田谷からの入学者受け入れは29年度からで、卒業生約200人のうち7割ほどが推薦入試によって明治大学に進学できる体制を整えていく。日本学園から5分ほど歩くと京王線明大前駅。その北側には明治大学和泉キャンパスが広がっており、法学部、商学部、政治経済学部、文学部、経営学部、情報コミュニケーション学部の1、2年生と大学院生が学んでいる。高校生が大学へ行って授業を受けたり、大学の教授が高校に出向いて講義をしたりといった高大連携にも取り組みやすい。今回の系列化は、地理的に見ても絶妙なカップリングだったといえそうだ。

次のページへ (2/2) 【写真】なぜか大学合格実績を外塀に掲げている日本学園の不思議な外観
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