フレデリック、史上最大キャパのアリーナ公演をレポート ファンを涙させた4人の絆

4人組ロックバンド、フレデリックが6月29日、東京・国立代々木競技場第一体育館でバンド史上最大規模のアリーナ公演「FREDERHYTHM ARENA 2022 ~ミュージックジャンキー~」を開いた。ステージでは動画サイトで1億回以上再生されている大ヒット曲「オドループ」など18曲を披露。大盛り上がりの会場を愛おしそうに見つめたボーカル・ギターの三原健司は「またこうやって音楽を通してみんなと1対1でコミュニケーションしたい!」と笑った。

ボーカル・ギターの三原健司【写真提供:A-Sketch】
ボーカル・ギターの三原健司【写真提供:A-Sketch】

コンプレックスだった声を武器に 9月から再び全国ツアーへ

 4人組ロックバンド、フレデリックが6月29日、東京・国立代々木競技場第一体育館でバンド史上最大規模のアリーナ公演「FREDERHYTHM ARENA 2022 ~ミュージックジャンキー~」を開いた。ステージでは動画サイトで1億回以上再生されている大ヒット曲「オドループ」など18曲を披露。大盛り上がりの会場を愛おしそうに見つめたボーカル・ギターの三原健司は「またこうやって音楽を通してみんなと1対1でコミュニケーションしたい!」と笑った。(取材・文=西村綾乃)

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「アリーナという広い会場で3rdフルアルバム「フレデリズム3」の世界観を余すところなく表現したい」と決意表明をして迎えたステージは、2021年2月に初めて日本武道館に立った日の最後に初披露した「名悪役」で幕開け。時間を再生させるように、ゆっくりと熱くフロアを揺さぶった。

 健司が「最高の未来を夢見て、掴んできたから届ける1曲がある」と叫んだ「VISION」では、メインステージからアリーナへ真っ直ぐに伸びた花道を歩きながら熱唱。満員の客席からサブステージに向けられた思いを、その目で確かめるように見渡すと、全身で受け止めるように目を閉じ、両手を広げた。1人1人に届けるように歌う姿に、大きな拍手が送られていた。

 4人が届けたいと願ったその世界観は音楽はもちろん、映像や美しいレーザー照明などの演出でも見せた。

 ステージの後ろにあるスクリーンに映し出された小さな光が、高橋武のドラムに合わせて鼓動するように呼応。高揚して大きくなった光が弾けて始まった「Wanderlust」では、分裂した光が広い世界へと飛び出していく。雪山からジャングル、青い海など様々な空間を自在に駆け抜けていく様は、五線譜の中を自由に泳ぎ、新しい表現に挑戦し続ける4人の姿と重なった。

 代々木からファンとともに巡った世界旅行は、夕暮れの映像からステージを覆うスモークで閉幕。真っ白な煙の中、「うわさのケムリの女の子」のイントロが始まると、待っていたかのようにフロアが揺れ始めた。“けむりがもくもく”する幻想的な演出で視線を集めると、紫色のライトの中で「ラベンダ」を披露。曲中にはラベンダーの香りを漂わせ、会場を驚かせた。

 ほぼノンストップで続いたライブに健司は「1対1で音楽を届けたいと思ったから、前半はほとんどMCなしで音楽を届けてまいりました」と説明。一息ついたギターの赤頭隆児は「今日6月29日は、ムー(6)、ジ(2)、ク(9)でミュージックの日なんやな。そんな日にミュージックジャンキーをやっているのは運命やろ。ディスティニーやな」と感慨深げにコメント。ドラムの高橋は「(コロナ禍で)ライブと音楽との向き合い方を考えた数年間だった。その時、どんな社会状況かなどを含めて音楽だと思っている。いまみんなが感じていることは、いましか感じられないこと。今日感じたことを大切にして欲しい」と呼びかけると、3人は「いい話やね」と頷いていた。

 後半戦はサブステージに移動。バンドで作詞作曲を務めるベースの三原康司は「(双子の兄の)健司にデモ(音源)を聴かせたとき、『この曲は康司が歌った方が良いんじゃないかと言ってくれた曲です』と説明すると、赤頭、高橋と向かい合い、「YOU RAY」を披露。憂いのある歌声で、丁寧に音を編み上げていった。

サブステージでは、康司、赤頭、高橋だけの時間も【写真提供:A-Sketch】
サブステージでは、康司、赤頭、高橋だけの時間も【写真提供:A-Sketch】

健司「小学校、中学校、高校も自分の声がずっとキライやった」

 360度から降るような拍手を贈られた3人を、サブステージに向かう花道の途中で健司が誇らしそうに見つめていた。拍手が静まると健司は「すごい3人でしょう。オレの自慢の仲間です」と笑顔に。今度は自分のターンと口を開くと、「小学校、中学校、高校も自分の声がずっとキライやった」とコンプレックスだったという自身の「声」について語り始めた。

「高校生の時は頑張って低く喋ろうとして、ぎこちない声で。でも、この声は一生付き合っていくものだし、自分を変えたいと思っていたころ、友だちの前で歌を歌った時に、初めて『良い声をしているね』って言ってくれた友だちがいて。康司もそう。自分の声キライやけど、歌声になると自分の人生を変えられるんちゃうかなと思って(音楽を)始めたのがきっかけで、メジャーデビューして。でも(リスナーから)『(フレデリックは)サウンドは良いけど、声はキライ』と言われることもあって。『なにくそ!』と思ってボイストレーニングをして。自分のままで良いと思えるようになったのは、康司が曲を通して、隆児が行動で、武ちゃんが言葉にして、オレの声が必要だと伝えてくれたこと」と感謝。

「覚悟を決めて、今日は一人で行く。昔の自分を思い出させるようなメロディと、個性を認め合うということの大切さを込めた曲」と語ると、アコースティックギターを手に「サイカ」を思いを貫くように。力強く歌い上げた。4人の絆を感じさせるエピソードに、涙を見せるファンの姿もあった。

「後半戦、覚悟して!」とメインステージに戻った4人は、「Wake Me Up」で会場を目覚めさせると、真っ赤な照明の中で「踊らにゃ損ですよ!」と「YONA YONA DANCE」を投下。まばゆい光を放ちながら回転するミラーボールが会場をダンスフロアに変えた。

 熱気に満ちた会場に目をやった健司は「後悔するなよ!遊ぼうぜ!!」と叫ぶと、「KITAKU BEATS」のイントロが奏でられフロアが歓喜。「遊びきってから帰れ、代々木!!!!!」の声に客席の揺れがどんどん大きくなっていく。「まだまだ遊び足りない!」と手を止めない健司は「ちょうど8年前に、この曲でメジャーデビューしました。今でも色あせない曲」と「オドループ」が始まった。

「今日オレの人生の最高の日を更新したい。最高の景色を見せれくれるか代々木!」の声に両手を広げてジャンプをして応える観客。健司の「♪カスタネットがほらたんたん」の歌声に、「たたたたんたたんたんたたんたん」とハンドクラップで応戦すると「最高!」と笑顔を爆発させていた。ステージを駆け回っていた赤頭はサブステージまで向かうと、腰を反らせ、こん身のギターソロでファンをくぎ付けにした。

 大盛り上がりの会場に健司は、「いつだってオレたちは、いまが一番カッコいいバンドでありたいと言ってきました。だから今日の最後には、いまオレたちが一番カッコいいと思っている曲をやります。全員で行こうぜ」と誘うと、ミュージックビデオで軽快なダンスを見せたセーラー服姿の女性ダンサー2人と共に花道を進んでいく。

ミュージックビデオを再現したような会場【写真提供:A-Sketch】
ミュージックビデオを再現したような会場【写真提供:A-Sketch】

千秋楽は23年3月29日、NHKホール

 うさぎのお面を付けたダンサーは観客席の通路にも登場。始まった「ジャンキー」では、ダンサーたちの踊りに合わせて、フロアも思い思いに身体を揺らす。健司が「オレたちミュージックジャンキーの旅はまだまだ続きます」と呼びかけると、背後のスクリーンで9月15日の神戸Harbor Studioを皮切りに、全30公演を行うツアーの日程を発表。「最高やみんな、ありがとう!」と叫ぶと、ステージ前方6カ所から轟音が響き、約2時間をかけて行ったライブの本編が夢のように終わった。

 フレデリックは2009年6月に双子の兄弟の健司、康司を中心に兵庫県神戸市で結成。14年9月にミニアルバム「oddloop」でメジャーデビューした。同作に収録した「オドループ」が中毒性があると話題に。動画の総再生回数は1億回を超えている。18年4月に初のアリーナ単独公演を兵庫・ワールド記念ホールで開催。20年2月には神奈川・横浜アリーナでライブを開いた。翌年2月にはバンド初の日本武道館公演を成功させた。

 この日のライブで公表した1年ぶりの全国ツアー「FREDERHYTHM TOUR 2022-2023~ミュージックジャーニー~」は、9月の神戸公演幕開け。ライブハウス編、Zepp編と続き、「FREDERHYTHM HALL 2023」を23年3月10日に大阪・オリックス劇場、同年3月29日に東京・NHKホールで千秋楽を迎える。

次のページへ (2/2) 【写真】フレデリック“史上最大キャパ”アリーナ公演の様子
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