いじめ問題、元中学教師が語る発生のメカニズムと本音 「みんな仲良くは幻想」

お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二が自身のいじめ体験を告白、波紋が広がっている。ネット上には「実名告発した方がいい」「いじめは犯罪行為として対応するべき」といった厳罰論、「ネットリンチはいじめと変わらない」といった慎重論など、さまざまな意見があふれているが、実際に教育現場にいる教員はいじめ問題をどのように捉えているのか。元公立中学校教員で自身の経験から学校の“モヤモヤ”をツイッターで発信、フォロワー2.4万人を抱えるのぶ(@talk_Nobu)さんに、いじめの発生するメカニズムと解決の糸口を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

いじめ問題(写真はイメージ)【写真:写真AC】
いじめ問題(写真はイメージ)【写真:写真AC】

厳罰論や慎重論など、ネット上でもいじめ問題解決に対する考え方はさまざま

 お笑いトリオ「ジャングルポケット」の斉藤慎二が自身のいじめ体験を告白、波紋が広がっている。ネット上には「実名告発した方がいい」「いじめは犯罪行為として対応するべき」といった厳罰論、「ネットリンチはいじめと変わらない」といった慎重論など、さまざまな意見があふれているが、実際に教育現場にいる教員はいじめ問題をどのように捉えているのか。元公立中学校教員で自身の経験から学校の“モヤモヤ”をツイッターで発信、フォロワー2.4万人を抱えるのぶ(@talk_Nobu)さんに、いじめの発生するメカニズムと解決の糸口を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)

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 現在は教育関係の民間企業に転職、主に教育委員会などを相手に教育現場をより良くするための活動を行っているのぶさんは、中学校で10年教べんを取った経験から「いじめは絶対にゼロにはならない」と断言する。

「人と人とのパワーバランスや、それによって起こる人間関係のトラブルは大人でも当たり前にあること。まして性格や学力、趣味嗜好のバラバラな子どもたちを教室という閉鎖空間に押し込めれば、何かしらの化学反応は必ず起こります。グループやヒエラルキーができることは当たり前で、大切なのはそれが不健全な方向に傾かないよう交通整理をしてあげること。これは担任の力量によるところが大きいと思います」

 新学期が始まり1~2か月がたつと、クラスの人間関係には多かれ少なかれ問題の芽が生まれてくる。バカにされたり、からかわれたり、仲間外れにされたりといったことが起こり始めるが、この時期にそれを見極め適切に対処することがいじめを深刻化させないための最初のステップだという。

「重要なのは、グループや上下関係ができることが自体がいけないわけではないんです。みんなが平等に仲良くというのは幻想で、価値観が合わない子、仲の悪い子、リーダー気質の子やその子の下についているのが好きな子など、いろんなタイプの子がいます。その中で、たとえば仕事を押し付けられたり、損得関係が生まれたり、相手を攻撃し始めるのが問題。できる教師は最初の時期に価値観の違う他人を尊重することを学ばせます。その上で、不健全なスクールカーストができる前に指導したり、時にはお互いを引き離したりして、カーストを解体するのが教師の役目だと思っています」

無視や仲間外れなど、どこまでをいじめと定義するかも議論が尽きない

 世間では「いじめられる側にも原因があるのでは」「協調性がない人間と距離を置くこともいじめにあたるのか」といった言説もある。暴力行為や金品を巻き上げる恐喝などはもってのほかだが、無視や仲間外れなど、どこまでをいじめと定義するかは議論が尽きないテーマだが、これらはどこまで教員が介入すべきなのか。

「例えば、女子グループ内で、友達を順番に外していくというのはよくあります。一番力のある子が『最近ノリ悪い』とか『調子乗ってる』など、気に食わないことを口にし、周りがそれに同調するパターンですね。周囲の子は下手に逆らって自分が標的になるのは嫌だし、『だよねー』といっていたほうが楽。誰かの悪口を言うことで仲良くなったつもりになるということもあると思います。こういう場合は無理に強く指導すると、ますます孤立化するということもあり得る。外している側の言い分もある程度聞いてあげつつ、関係が修復できたり、他のグループに入れてもらうなど、解決までをサポートするのが大切です」

 現状、担任や学校の指導力次第という部分が大きく、ゆえに責任もそこに押し付けられているいじめ問題。それこそが学校内でのいじめが深刻化、複雑化する原因ではないかとのぶさんは指摘する。

「残念ながら、中には対応しきれない先生もいます。事件になるようないじめは、担任だけでなく学年主任、校長など、学校全体で指導力が足りていないのかなと感じます。ただ、指導力不足を責めてもいじめはなくならず、より隠ぺいする傾向が強まるだけ。必要なのは外部を巻き込むことで、指導しても加害をやめられない子にはカウンセラーなどの特別な支援が必要ですし、行政にも相談窓口を設けるなど、いじめ解決を学校だけで終わらせない仕組みが必要です。いじめ問題をタブーとせず、学校が情報を発信しやすくし、外部と協力して解決に迎えるような制度作りが大切だと思います」

「いじめはなくならない」という前提を踏まえた上で、起こったときにどうするか、社会全体でどう関わっていくのかという議論が必要なようだ。

次のページへ (2/2) 【図】クラス分けはどうやって決まる? 中学校の新クラス編成の流れ一例
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