「東京都北区赤羽」清野とおる&パリッコが語るいい居酒屋の見分け方と新しい夫婦の形

山田孝之主演でドラマ化もされたコミック「東京都北区赤羽」で知られる漫画家・清野とおるさんと酒場ライター・パリッコさんによる書籍「赤羽以外の『色んな街』を歩いてみた」(扶桑社)が発売中だ。酒好きの2人が赤羽以外の「色」のつく街の飲み歩きを、漫画と文章でつづったもの。2人が語る街飲力(まちのみりょく)の秘けつとは?

パリッコさん(左)と清野とおるさんが街飲みの楽しみ方を語る【写真:ENCOUNT編集部】
パリッコさん(左)と清野とおるさんが街飲みの楽しみ方を語る【写真:ENCOUNT編集部】

清野とおる、妻・壇蜜とは「たまに逢瀬」 今も赤羽で一人暮らし「いい距離感」

 山田孝之主演でドラマ化もされたコミック「東京都北区赤羽」で知られる漫画家・清野とおるさんと酒場ライター・パリッコさんによる書籍「赤羽以外の『色んな街』を歩いてみた」(扶桑社)が発売中だ。酒好きの2人が赤羽以外の「色」のつく街の飲み歩きを、漫画と文章でつづったもの。2人が語る街飲力(まちのみりょく)の秘けつとは?(取材・文=平辻哲也)

「赤羽以外の『色んな街』を歩いてみた」は「日刊SPA!」連載の書籍化。20年近くの交友がある2人が「赤羽」の「赤」にちなみ、色が入った街で飲み歩く。「文京区白山」では、道で見知らぬ男に中指を立てられたり、「足立区青井」のカラオケ居酒屋では怒号と絶叫が飛び交う現場に居合わせ、「聖蹟桜ヶ丘」ではまずいビールを飲まされ、終電を逃しそうになったり……と引きの強さを発揮。読むと、思わず酒を飲まずにはいられない。

 ここはズバリ、街飲みを楽しむコツを聞こう。「街飲みは延々に楽しめるエンターテインメントだと思います。でも、前のめりになりすぎちゃうとよくないんで、適当に適当がいいかな。本作では事前に下調べしないことが暗黙のルール。どんなお店でも、今日存在してても、明日存在してるとは限らないので、店も客も一期一会。今、目の前に存在しているお店を牛のように丁寧に反芻(はんすう)するように楽しみ尽くしたい」(清野さん)。「興味を持ったら、飛び込んでみる。そしたら、どんどん面白いことあると思うんです」(パリッコさん)。

 いい居酒屋の条件とは。「僕たちはその感覚がもう馬鹿になっちゃっています。例えば、古くからある酒場は間違いない。続いているには理由があるから。そこからスタートして、もっと何か新しい変な店とか、面白い店を探す。だから、何が基準かは分からないですね」(パリッコさん)と言えば、「最低限、ビールサーバーはきれいにしてほしいですね(笑)。それとやっぱ、出会うべくして会ったと思える店の人、お客さんと飲み交わす酒は格段にうまい」(清野さん)。

 最近、2人がハマっている飲み方は? 「もうひたすらホッピーですね。変化といえば、数年前まで『黒』だったんですけど、最近は『白』に変わったくらい。長年悩んでいるのが、休肝日にホッピーの外だけを飲むのは休肝日といえるのか問題。外にも0.8%だけアルコールが入っているんですよ」(清野さん)。「僕は、数年前からプレーンなチューハイに行き着いています。味のない甲類焼酎を炭酸水で割っただけがいい」(パリッコさん)。長く飲み続けることに重点を置いているようだ。

最近休肝日を設けた清野さん、その理由とは?【写真:ENCOUNT編集部】
最近休肝日を設けた清野さん、その理由とは?【写真:ENCOUNT編集部】

パリッコさん「清野さんが赤羽を人気の街にしちゃったんです」

 清野さんは最近、休肝日をもうけるようにしているとか。「毎日飲んでいると、罪悪感にさいなまれるんです。でも、1日休肝日を設けると、その日はそんなに仕事できなくても、休肝日を達成した喜びと、翌日に酒を飲める二重の喜びを得られて一石二鳥です」というと、パリッコさんは逆。「前は休肝日を作っていたんですけど、最近はついつい飲んじゃいますね。肝臓の数値がそこまで悪くないのもあって、調子にのって。今日はやめようって思っていても、夕方からやっぱり飲みたくなっちゃう」と笑う。

 清野さんは女優の壇蜜さんと結婚したが、今も赤羽で一人暮らし。「僕は赤羽の地縛から離れられないし、壇蜜さんはたくさんペットを飼っているので、離れられない。たまに逢瀬するのがお互いにとって、いい距離感なんです。赤羽は随分、変わってしまいました。都市開発が加速的で、(コミックで描いたような)変なおじさん、変なおばさん、変な店、変な出来事を見かけなくなった。少しさみしいです」とポツリ。

 パリッコさんは「清野さんが赤羽を人気の街にしちゃったんですよ。行政が、間違えてきれいな街にしないといけないと思って……」というと、「それはドラマの山田孝之さんの影響ですよ。でも、赤羽にはお世話になったし、今も大好きな街なので、ウインウインな関係であり続けられたらイイナと思っているんですよね」と話す。

 コロナ禍もあり、清野さんのトレードマークのマスクはむしろ目立たなくなってしまった。パリッコさんも「赤羽は学生さんも増えたんで、マスクしている人を見ると、清野さんかな、と思ってしまう」と言うと、「いや、僕もマスク姿の人を見ると、あれ、僕じゃないか?と思ったりするんですけどね……」と笑う。

 清野さんのマイブームは家飲み。「部屋をこぎれいにして、ちょっといい椅子とテーブルに身体を委ね、花瓶にお花なんぞ生けて眺めてみたり……あゝ家飲みって、楽しいなぁって思えるんですよね。家飲みに重点を置くと、たまに出かける街飲みが一段と楽しくなるんです」。清野さんは休肝日にしても、飲み方にしても、二重に楽しむのがお好きらしい。コロナもだいぶ収まった昨今、対策を講じつつ、街飲みに繰り出そう。

□清野とおる(せいの・とおる)漫画家。主な著書に、「東京都北区赤羽」「その『おこだわり』、俺にもくれよ!!」「東京怪奇酒」「ゴハンスキー」「全っっっっっ然知らない街を歩いてみたものの」など。現在はコミックDAYSにて「さよならキャンドル」を連載中

□パリッコ(ぱりっこ)酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー他。著書に「つつまし酒 あのころ、父と食べた銀将のラーメン」「ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある」「晩酌わくわく!アイデアレシピ」「天国酒場」「つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方」「ほろ酔い!物産館ツアーズ」「酒場っ子」「晩酌百景 11人の個性派たちが語った酒とつまみと人生」、スズキナオ氏との共著に「のみタイム」「“よむ”お酒」「椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門」「酒の穴」など。

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