「私自身と娘を重ねてはいけない」 浅香唯が語る「子育て」と、14歳長女との向き合い方

歌手・浅香唯の大ヒット曲「セシル」(1988年)には「人は大人になるたび弱くなるよね♪」という有名なフレーズがある。結婚し、家族を持ち、一人娘が思春期を迎えた現在も「セシル」が彼女に寄り添い、年齢を重ねるたびに歌詞と自身がシンクロしていくような、そんな瞬間が今でもやってくるという。まるで彼女の未来を予言していたかのような不思議な力を持った曲。誕生から34年、彼女にとって大切な曲「セシル」について聞いた。

浅香唯【写真:荒川祐史】
浅香唯【写真:荒川祐史】

娘の精神年齢は母親より上

 歌手・浅香唯の大ヒット曲「セシル」(1988年)には「人は大人になるたび弱くなるよね♪」という有名なフレーズがある。結婚し、家族を持ち、一人娘が思春期を迎えた現在も「セシル」が彼女に寄り添い、年齢を重ねるたびに歌詞と自身がシンクロしていくような、そんな瞬間が今でもやってくるという。まるで彼女の未来を予言していたかのような不思議な力を持った曲。誕生から34年、彼女にとって大切な曲「セシル」について聞いた。(取材・文=福嶋剛)

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――今回は唯さんの代表曲「セシル」についてお聞きしたいと思います。

「実はこの曲『小さな恋のものがたり』のチッチとサリーがモデルになっているんです。作詞を担当いただいたのは麻生圭子さんです。たとえ見た目は小柄でも大きな愛で人を包み込めるような人になって欲しいというメッセージが込められていて、私自身もそんな大人になれたらいいなっていう思いを麻生さんにお伝えして完成した曲なんです」

――「セシル」がヒットした当時は優しさを感じる素敵な曲という印象でしたが、あらためて今聴くとまるで唯さんの未来を予言していたかのように思えてしまう曲です。

「麻生さんは、いつも私の話を聞いてくれるお姉さん的な存在で、スタジオにもよく遊びにきていただきました。私がなかなか自由に恋愛できないという話もよく聞いてくださって、そんな話をくみ上げていただいて『セシル』の歌詞が完成しました。でも、当時は憧れの女性像を描いた曲だなっていう印象で、実は『人は大人になるたび弱くなるよね♪』という言葉の奥にある意味が、なかなかつかめなかったんです。きっと麻生さんがそうおっしゃるんだから間違いないってそんなふうにしか捉えていなかったのですが、年齢を重ねて何度も何度も歌っていくうちにその言葉がすごく染みてきました」

――母親になってあらためて「セシル」の歌詞にあるようなことに気付かされることもありますか?

「娘は14歳で、もうすぐ私が東京に1人で出てきた年齢になるんですが、精神年齢はもう母親より上だという主張も始まって、だんだん大人へと近付いているので今までのやり方ではお互いに理解できないところは出てきましたね」

――母娘のケンカは?

「あります。私はダメなものははっきりとダメと伝えるタイプで、当然彼女は納得していないところもあると思いますが、なぜダメなのかということをちゃんと娘に説明するように心がけています。決して激しい言い合いにはならないんですけど、……でも私すぐ泣いちゃうんです。娘にとって一番の味方でいなくちゃって心を鬼にしてダメって伝えるんですけど、そういう厳しいことを娘に言っている私自身が嫌になっちゃって、すぐ涙が出てくるんです。そしたら娘に『ママまた泣いてる』って。それでケンカをするとだいたい2日ぐらい経ってから娘と一緒にお風呂に入っている時に『ママ聞いて』って始まるので、そのタイミングで娘の話をじっくりと聞いてあげるようにしています」

――まさに『大人になるたび弱くなる』という。

「そうですね。私も昔、嘘をついていたことが母親にバレてめちゃくちゃ怒られたんですが、その時母は泣きながら私を叱ってくれたんです。でも私は『なんで泣いているの?』ってまったく理解できなかったんですが、こうして親になって娘を叱ると、あの頃の母親の気持ちをつい思い出してしまい、涙が出てきちゃうんですよね」

自分の気持ちに素直に向き合いなさい

――お嬢さんとの向き合い方で大切にしていることは?

「あの頃の私自身と娘を重ね合わせてはいけないと常に思っています。あくまで彼女は彼女の人生を歩んでいるので、もう今は大人として対応をしようかなって。主人と娘が2人で出かける時は、娘は母親代わりだからものすごくしっかりと主人を引っ張ってくれます(笑)。私と娘は女性同士の話をしますし、恋愛についても私と主人のなれ初めはちゃんと伝えます。でも『あなたは自分の気持ちに素直になって向き合いなさい』って、いつもそう伝えます」

――お嬢さんの成長は同時に母親としての唯さんの成長でもあると?

「娘と一緒に学んでいくというのはあるのかもしれません。もちろん今でもこうなってほしい、ああなってほしいはいっぱいありますが、自分で見つけなくちゃいけないところはしっかり黙っていてあげないといけないから。でもつい言いたくなっちゃって、その葛藤は今でもあります。だから本当に子育てって難しいですね」

――あらためて「セシル」が生まれて34年、唯さんの中でどんな曲に成長しましたか?

「たった1人でもいいから自分のことを理解してくれる、守ってくれる人がいれば人生は変わるんだっていうことを学び、そのたった1人にあなたはなりなさいよって教えてくれた曲ですね。そんな麻生さんのメッセージをしっかり受け取ってこれからも歌っていこうと思います」

□浅香唯(あさか・ゆい)1985年6月21日、シングル「夏少女」で歌手デビュー。キャッチフレーズは“フェニックスから来た少女”。86年、フジテレビ系連続テレビドラマ「スケバン刑事III 少女忍法帖伝奇」で主役の風間唯でブレークを果たし、その後、「虹のDreamer」、「C-Girl」、「セシル」、「TRUE LOVE」と4曲ものヒットチャート1位を連発。80年代を代表するアイドルとして活躍。22年6月21日、ハミングバード(現ワーナーミュージック)時代の全シングルとアルバムのサブスク&ダウンロード配信を解禁。9月3日に「Billboard Live OSAKA」で9月11日に「Billboard Live YOKOHAMA」でライブを開催。

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