田中泯、役所広司の父親役に不服も「嫉妬するくらいすてき」 心境を吐露「引退は嫌」
俳優の田中泯が18日、都内で行われた映画「峠 最後のサムライ」公開御礼舞台あいさつに、主演の役所広司、共演の松たか子、香川京子、榎木孝明、AKIRA、メガホンをとった小泉堯史監督とともに登壇した。
「死ぬまで生き生きするという人間の目的を考えた」
俳優の田中泯が18日、都内で行われた映画「峠 最後のサムライ」公開御礼舞台あいさつに、主演の役所広司、共演の松たか子、香川京子、榎木孝明、AKIRA、メガホンをとった小泉堯史監督とともに登壇した。
歴史小説界の巨星・司馬遼太郎が、幕末の風雲児と呼ばれた、越後長岡藩家老・河井継之助(役所)を描いた国民的ベストセラー「峠」を実写映画化した本作。時流は倒幕へと傾き、サムライとしての使命と庶民を先導するリーダーとしての狭間で葛藤しながらも、強大な武力を誇る明治新政府軍に立ち向かっていく継之助の“最後のサムライ”として本当の正義を貫こうとするその姿が、現代を生きる私たちに日本人の生き方、リーダーとしてのあるべき姿を問いかける歴史超大作となっている。
継之助の父・河井代右衛門役を演じる田中は「お父さん役ということにやや不服を持っておりましたが(笑)、おとといにもう一度DVDで見せていただきました。お父さんをやっていました(笑)。1番の思い出は引退するのは嫌だなと。隠居は嫌だなと思いました。それが1番強い思いだったかもしれません」とあいさつ。
その後のトークで1番心に残っていることを聞かれると「隠居した人間が現代でもそれに近いものが家庭や家族、あるいは一族の中で続いているような気がしているんですが、死ぬまで生き生きするという人間の目的を僕は考えてしまいました。台本にはないんだけど息子のことはよく分かる。なのに、なぜ親父も一緒に戦えないのだろうかという矛盾を考えさせていただきました。役はもちろん必死でやるわけですけど、一方で今これからの世界で生きている私として、そういう疑問を感じてしまいました」としみじみと語り、「時間はどんどんたっていくわけですけど、まさに今この時期にこの映画をご覧になった方は、今、世界で起きていることとダブることがあると思います。僕は“戦争反対”って言葉に出して言ってしまう人間なので、(3年の延期を経て)すごいときにこの映画がついに上映されたなって思います。共感を感じましたら、ぜひ人に語り継いでいただきたいと思います」と訴えた。
また、役所が継之助の魅力を尋ねられると「目一杯、世界に対する好奇心を行動に移して、まさかスイスなんて言葉が出てくるなんて……。父親として嫉妬するくらいすてきだと思いました。代わってほしいくらいでした(笑)」と吐露して笑いを誘い、「ただ内面の苦しみを語らずにいる深みはすごく魅力でした。ポスターに(役所の)あんな大きな顔を写すのはよくわかります」とうらめしそうに役所を見つめた。