三浦瑠麗氏「人を使う側が、使われている人を踏みつけにする社会はよくない」 日本の“格差問題”を一刀両断

国際政治学者の三浦瑠麗氏が18日、フランスの経済学者トマ・ピケティによるベストセラー経済学書「21世紀の資本」を映画化した社会派ドキュメンタリー「21世紀の資本」の上映会トークショーに登壇した。

三浦瑠麗氏(左)と山形浩生氏
三浦瑠麗氏(左)と山形浩生氏

トマ・ピケティによる経済学書「21世紀の資本」の映画作品 トークショーで日本社会の“格差問題”を解説

 国際政治学者の三浦瑠麗氏が18日、フランスの経済学者トマ・ピケティによるベストセラー経済学書「21世紀の資本」を映画化した社会派ドキュメンタリー「21世紀の資本」の上映会トークショーに登壇した。

 2014年に日本でも発売され、ブームを巻き起こした経済学書「21世紀の資本」は、700ページという大作のため、完読が難しいともいわれている。そこで、著者のピケティ氏自身が監修から出演までこなし、一般人でも五感だけで理解できるよう完全映画化した。映画では、「ウォール街」「プライドと偏見」「レ・ミゼラブル」「ザ・シンプソンズ」などの映画や小説、ポップカルチャーをふんだんに使い、過去300年の世界各国の歴史を“資本”の観点から切り取っている。
 
 トークショーには、原作本「21世紀の資本」を手掛けた翻訳家の山形浩生氏も参加した。

 三浦氏はまず、出版当時の2014年は非正規の研究員だったことを明かし、「実際問題として、政策当事者が格差の問題をほおっておいて市場に任せるのではなく、政治がやらなければいけない問題として認識したということはあると思います」と本書の意義を説明した。
 
 司会から、日本の格差社会のテーマとして「親よりも子が貧しくなっているという世代間の格差の問題」について問われると、三浦氏は「日本は、わりと高額所得者に対しても、大企業に対しても、いざかけろと言われたら重税をかけることができる国だと思います。疫病、戦争、外部ショック、日本円の信用が完全に失墜した時には、何らかの措置を講じて一体性を維持しながらできると思うんです」と前置きをした。

 そのうえで、「ただ、現状で何も破壊が起きない中で、果たして格差に対する対応ができるかというと、そうではないと思っています。さらに、シルバーデモクラシーと言われるように、高齢者のほうが人数が多い、投票率が高い。私は『失われた20年』の世代ですが、もっと下の世代になると、安倍政権しか覚えていない世代が出てくる。そういった世代の人たちからすると、過去と今を照らし合わせた時に、テクノロジーもよくなっている。カルチャーも育っている。なぜ高度経済成長期の夢に浸っているような野党がいるのかわからないという、非常にねじった感じの有権者の構造になっている。現実に割と苦しい暮らしをしている人よりも、まあまあ財産形成をした60代の方々のほうが格差に関心がある。しかも、富裕層も少数ですが、いないわけではない。そこは完全に政治から乖離しまっている」と、世代間で感覚や考えが分かれていることを指摘した。

 続けて、日本の現在の政治構造を解説。「古い国産企業は、お国に貢献する意識があって災害の時にも資材を提供するが、ニューエコノミーの人たちはどうかと言うと、そういう人は少ないのかもしれない。だから、ある意味、政治対立が健全な形で、成長重視、分配重視に分かれて二大政党になることも今のところは実現していない」と語った。

 ここで、新型コロナウイルスの感染問題を受けて問題意識を提起し、「拾われる観点で言うと、どちらかと言うと、40代の就職氷河期世代を選び取ってしまう。その結果として、シングルマザーの子育て世代が餓死してしまうケースがあったり、児童虐待が往々にして貧しい家庭で起きたりすることが、見過ごされてしまう。私たちは日々、新型コロナウイルスの死者数をこんなに見ているのに、じゃあ児童虐待の死者数を見ているかというとそうではないですよね。一見、非常に同質的でお互いに同胞意識があるような国に見えていながら、自分が感じ取れる痛みというものが、セグメントによってすごく狭い。それを一気に広げる問題提起をしていかないと、ずるずると格差が開いてしまう可能性もあるかなと思っています」と指摘した。

 そのうえで、コロナ禍で落ち込む日本経済には何が必要なのか。問われた三浦氏は「日本の2020年に関しては、経済対策を本格的に打ちながら、その中で今までできなかった改革をするべきだと思います。今回、政府やいろいろな政党に提案したのが、子育て世代にとって、今一番使いたい保育代、教育費、そういったものを日本は今まで教育支出について先進国の中でも低いレベルで家計が充当してきた歴史があるのですが、こういった時にこそ、例えば税額控除、税前控除だったり、いろいろなスキームを組み合わせて、専業主婦の家庭であっても、あるいは共働きの家庭であっても、いろいろな組み合わせで使える制度を作るべきじゃないかと。世の中を見渡せば各国にいい制度があるので、そんなに長い間に検討しなくても、一応できるんですね。ガラガラポンが来る前に、今回も緊急対策の名目で入れていって、様子を見て定着させていく、それがあってもいい」と強調した。

 さらに、「もうひとつ。私は自分で株式会社をやっているのですが、そこでのモットーは、もちろん私生活と仕事を分けるということもありますが、労働が楽しくなければいけないというモットーがあるんです。私は社長でみんなより豊かかもしれない。そこで、より豊かで人を使っている側が、使われている人を踏みつけにするような社会はよくないと思います」と考えを述べた。

 山形氏は「この本が売れた理由の一つに、世界で経済格差について考え直すというきっかけがあり、この本が出版されて、関心を持っている人たちに訴えかけた」などと分析した。

 「21世紀の資本」は、3月20日から新宿シネマカリテほか全国順次公開を予定している。

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