是枝監督、ソン・ガンホのカンヌ受賞で「韓国映画監督たちにどこか申し訳ない気持ち」

映画監督の是枝裕和が13日、都内で行われた映画「ベイビー・ブローカー」(24日公開)凱旋(がいせん)記者会見に登壇した。当日は是枝監督が現在の心境を明かした。

映画「ベイビー・ブローカー」凱旋記者会見に登壇した是枝裕和監督【写真:ENCOUNT編集部】
映画「ベイビー・ブローカー」凱旋記者会見に登壇した是枝裕和監督【写真:ENCOUNT編集部】

ソン・ガンホの受賞は「この作品にとっては最高のゴール」

 映画監督の是枝裕和が13日、都内で行われた映画「ベイビー・ブローカー」(24日公開)凱旋(がいせん)記者会見に登壇した。当日は是枝監督が現在の心境を明かした。

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 第75回カンヌ国際映画祭では、主演のソン・ガンホが韓国人俳優初となる「最優秀男優賞」を受賞。またキリスト教関連の国際映画組織がコンペティション部門の中から「人間の内面を豊かに描いた作品」に与える「エキュメニカル審査員賞」も受賞し、合わせて2冠の快挙を成し遂げた。

 ソンの受賞時のことを是枝監督は「ソンさんの名前が呼ばれたときは『なるほど、この作品にとっては最高のゴールなんだな』と気付きました。その日の夜にみんなで集まって、韓国チームと合同でお祝い会をしたんですけど、幸せな夜でした。役者がほめられるのが一番うれしいんですよね。柳楽(優弥)くんが(カンヌ国際映画祭男優賞を)もらったときは、柳楽くんが日本に帰国しちゃってたんでね。受賞した役者さんとあの場所で抱き合ってというのは初めてだったので、特別な夜になりました」と振り返った。

 また、是枝監督は「僕の演出でソンさんがというよりは、どの監督で受賞してもおかしくなかったと思いましたので、僕が撮ったタイミングでの受賞というのは、僕にとっては幸せでしたが、韓国の監督たちにとっては、『僕らのソン・ガンホが』という気持ちがあったのではないでしょうか。申し訳ないという気持ちがあります」と心境を明かし、笑いを誘った。

 受賞後のパーティーでは「気楽にわいわいしてました」と是枝監督。そして、思い出したように、「そこにハビエル・バルデムがいたんですよ。写真を撮ってもらおうと、こっちがずっと追いかけたんですけど、会場中を歩き回るもんだから、気持ち悪い感じになっちゃって。ちょうど、お酒を取って振り向いたときに目が合ったんですよ。すると、指さして『知っている』っていう感じで、目が合ったんです。それが一番うれしかったです。単純な映画ファンですね」とエピソードを語った。

 韓国人のキャストやスタッフにより撮影された同作。さらに、是枝監督はドキュメンタリー出身ということもあり、独特な演出手法に定評がある。報道陣から「日本と韓国の現場の向き合い方」についての質問が上がると「僕の演出のアプローチの仕方は基本的には日本でやっているのと変わらないんです。今回は、少し我を通したところもあった。韓国では、アメリカのやり方を導入していて、脚本もストーリーボードも書いて完成させないとインしないぞという雰囲気があったんですが、やらないよと押し返しました。その辺は、かなり僕自身は通せたなと」と述懐していた。

 同作のキーワードは、自らの手で育てられなくなったために乳児を匿名で預けることができる“赤ちゃんポスト”。赤ちゃんポストに預けられた乳児を横流しし、マージンを得るベイビー・ブローカーのサンヒョン(ソン・ガンホ)とドンス(カン・ドンウォン)は、ひょんなことから、若い女ソヨン(イ・ジウン)が“赤ちゃんポスト”に預けた乳児の養父母探しの旅に出ることとなる。

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