大河内奈々子、今だから語る「牡丹と薔薇」の舞台裏 過酷な撮影、強烈せりふの数々

2004年のフジテレビ系の昼ドラ「牡丹と薔薇」(FOD、U-NEXTで全話配信中!)で主役を務め、“ボタバラブーム”を巻き起こして一世を風靡(ふうび)した女優の大河内奈々子。15歳のときにモデルの仕事をスタートし、今年は芸能活動30年の節目の年となる。物語は、人をののしる激しいせりふや牛革財布のステーキが登場するなど愛と狂気のドロドロの愛憎劇。大河内は赤ちゃんの時に誘拐された設定で、ののしられたり、いじめられるシーンが多かった。撮影はかなり厳しい過酷な状況だったとされ、芸能生活30年の節目に大河内に当時を振り返ってもらった。

大河内奈々子
大河内奈々子

芸能生活30年の節目、今だから言える2004年のボタバラブーム

 2004年のフジテレビ系の昼ドラ「牡丹と薔薇」(FOD、U-NEXTで全話配信中!)で主役を務め、“ボタバラブーム”を巻き起こして一世を風靡(ふうび)した女優の大河内奈々子。15歳のときにモデルの仕事をスタートし、今年は芸能活動30年の節目の年となる。物語は、人をののしる激しいせりふや牛革財布のステーキが登場するなど愛と狂気のドロドロの愛憎劇。大河内は赤ちゃんの時に誘拐された設定で、ののしられたり、いじめられるシーンが多かった。撮影はかなり厳しい過酷な状況だったとされ、芸能生活30年の節目に大河内に当時を振り返ってもらった。(取材・文=中野由喜)

「朝6時に家を出てスタジオに朝7時に入って、終わるのはだいたい夜11時頃。遅いときは深夜0時を過ぎることもありました。帰宅して、せりふを覚えて寝るのが深夜3時になることもありました。朝は5時に起きていたので睡眠時間2時間の日も。それを約4か月間続けました。ものすごい勢いでやせていきました」

 家とスタジオの往復だけの日々。ほぼ週6日は仕事。7日の日もあった。今では考えられない過酷な環境。ほかにも厳しいと感じることはあった。

「せりふを一言一句、間違えてはいけないと言われていました。撮影中、目の前で助監督さんが台本を手に、間違えていないか赤ペンを持ってチェックしているんです。それに慣れるまでは大変でした(笑)」

 視聴率も2桁を超え、昼の時間帯としては驚異的な数字を記録した。

「スタジオと家の往復でテレビを見る時間もなく、当初はドラマがヒットしているなんて全く知りませんでした。皆さんが見てくれていると知った頃からでしょうか、少しの空き時間に取材が入るようになり、バラエティー番組から出演のお声がけをしていただきました。でも時間がなくて。1度、クイズ番組に出演したら眠くて目を開けられないくらいになりました。本当にずっと眠かったです」

 過酷な撮影の中、どう心身の健康を維持していたのか。

「10分、15分でも時間があればすぐに寝ていました。スタジオ内のセットの片隅で膝を抱えて寝ていました。ベッドで寝るシーンがあると本当に寝てしまったこともありました。それでもすごくいい経験でした。スタッフさんも共演者の方々も温かくて、あの方々と一緒にできたことはありがたかったです」

 作品は、一般的には考えられない激しいせりふや暴力的な展開も描かれた。

「共演者の方と『普通はないよね』と笑っていました。そうやって笑えたから楽しく撮影できたのだと思います。でも、私の場合、いじめられて泣くシーンが多かったのですが、相手の方のあまりに強烈なせりふに笑ってしまい、困ったこともありました(笑)」

出演オファー時にはまさかの質問「いじめる側と、いじめられるのと、どっちがいい」

 大河内の演じた主人公・ぼたんは激しくののしられるシーンが多かった。ここで意外な過去を明かしてくれた。

「実は最初に出演のお話を頂いたとき『いじめる側と、いじめられるのと、どっちがいいか』と聞かれました。いじめるのは疲れそうだから、いじめられる方で、と言ったんです。そしたら、いじめる方に小沢真珠ちゃんがきてくれたんです」

 もし、大河内がいじめる役の方がいいと言っていたら、小沢の演じた役を演じていたかもしれない。

「でも真珠がいじめる役だったからこそ、そして、真珠のあそこまで振り切れたお芝居ときれいなビジュアルがあったから作品が人気を得たんだと思います」

 作品で得たことを聞くと、泣く芝居だという。

「泣く芝居では、『薔薇と牡丹』のあと、ある作品で共演したある女優さんに『どうして、そのタイミングで涙が出るの? 匠(たくみ)の技だよね』と言われました。『牡丹と薔薇』では泣くシーンがすごく多かったので、いいトレーニングになりました。涙を出そうと思ったら結構、すぐ泣けます」

 大ヒット作の主演。世の中の反響はどうだったのか。

「役の影響だと思いますが、今も私、かわいそうな人だと思われているんです。食事に行っても『サービスしてあげるわね』と言われます(笑)。幸薄なイメージがついて、その後、幸の薄い役ばかりきていました。今でもかわいそうな役とか泣く役に選んでくれることが多いです。でも周りの友人から言わせると、私は物をハッキリ言うタイプなので、真珠のやっていた役の方が本来の私に近くて『逆だよね』と言われます」

 最後に、この作品に出演して今の思いを聞いた。

「みんなと一緒に作品を作る気持ち良さをすごく感じました。スタッフさんとずっと一緒でしたので、関係は濃厚だったと思います。大変でしたが、出られてよかったと思います」

□大河内奈々子(おおこうち・ななこ)1977年6月5日、東京都出身。15歳のときに「セブンティーン」の専属モデルとして芸能界入り。ドラマは97年に日本テレビ系「恋のバカンス」、テレビ朝日系「ギャルボーイ!」で主演、2000年NHK大河ドラマ「葵 徳川三代」千姫役、04年フジテレビ系「牡丹と薔薇」で主演のぼたん役、05年TBS系「新キッズ・ウォー」、映画は1996年「岸和田少年愚連隊BOYS BE AMBITIOUS」、2021年「拝啓、永田町」など。特技は書道、華道、料理。趣味は読書と映画鑑賞。

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