70年式「初代ローレル」の“未再生原形車” 貴重車のオーナーが実感する“職人技”
日産の代表的ブランド車が、当時のまま健在でいる。1970年式の「初代ローレル ハードトップ 2000GX」(KPC30型)の“未再生原形車”だ。希少な車のオーナー、野村充央さん(60)にこだわりを聞いた。
1992年に手に入れた「ローレル ハードトップ 2000GX」(KPC30型)
日産の代表的ブランド車が、当時のまま健在でいる。1970年式の「初代ローレル ハードトップ 2000GX」(KPC30型)の“未再生原形車”だ。希少な車のオーナー、野村充央さん(60)にこだわりを聞いた。(取材・文=吉原知也)
「ルーフ部分のレザーがちょっと剥げてしまったところを補修しているだけです。それ以外は何も手を入れていないんですよ。フルオープンのハードトップ、これがお気に入りなんです」。小学生の頃にいとこのローレルに乗せてもらい、都内をドライブ。その時の加速する感覚と楽しかった記憶が脳裏に焼き付いており、どうしても欲しかった。92年に手に入れたとっておきの1台だ。
好きなポイントを聞くと、言葉が止まらない。最上級の乗りやすさ、加速感に加え、「プリンス製のエンジン、切れ味のいい『ラック&ピニオン』のステアリング技術、特徴的なシーケンシャルウインカー。エンジンルームもさびにくい。それに当時のパワーウインドウは故障しない」。
一時は通勤に使っていた時期もあったというが、今は歴史的な価値のあるヘリテージカーとして扱っており、イベントへの出展がメインだ。「雨の日は乾かしてから車庫入れするといった普通の取り扱いしかしてこなかったのに、ここまで丈夫でいる。いいものを安く作ろう、ではなく、欧米に負けない本当にいいものを作ろう、と職人たちが思いを込めたんです。当時の新しいメカニズムをすべて投入したクルマなんです」。日産の技術力をまざまざと実感するという。
子どもの頃から、「クルマと言えば日産」という環境で育ち、今も日産の関連会社に勤めている。初代ローレルに乗っていたことで、同じ日産の名ブランド「ダットサン」の愛好家の全国組織「全日本ダットサン会」の関係者から声をかけられ、同会の運営にも携わるようになった。
名車・旧車の保存と伝承に注力するとともに、とびっきりの愛車を「ずっと大事にする」という使命を果たしていくという。