滝藤賢一が「死も覚悟」 元極道に扮した撮影の舞台裏、体脂肪4%で「骨と皮」だけに

息子たちとのエピソードを明かした滝藤賢一【写真:小黒冴夏】
息子たちとのエピソードを明かした滝藤賢一【写真:小黒冴夏】

「『玉木さんて、ヤベー奴だな』と思いましたね」と語るカーアクションシーン

 物語の終盤。何者かに娘らをさらわれた龍(玉木)が、園長の白石(安達)が運転する車に乗り込み追跡する場面がある。始まったカーチェイス。犯人の車に飛び移ろうとした龍は、足を滑らせドアにしがみつくも、振り落とされそうな状況に…。龍の代わりに犯人の車に飛び込もうとした虎二郎(滝藤)も2台の車に挟まり、窮地に陥ってしまうシーンだ。

「アクション部の方が控えていてくださったので、カーアクションの部分はお任せしようと思っていました。トム・クルーズじゃないんだから……と。でも、現場に行ったら、玉木さんが急カーブを、物凄い音を立てて曲がってくる車にしがみついて、宙ぶらりんになっていた。『玉木さんて、ヤベー奴だな』と思いましたね。玉木さんが体を張っているのに、僕がやらないわけにはいかない。泣く泣く、観念しましたよ。命綱をつけて撮影に臨んだのですが、車の速度は20~30キロだったかなぁ、怖いのなんのって。車のステップから誤って落ちて、地面に足を着いてしまったら、体を引きずられてしまう…。後ろで宙吊りになっている玉木さんが落ちてきたら、どうすればいいのか。死んでしまうかも…とゾッとしましたね。撮影が無事に終わるように天に何度も祈りましたよ」

 ドラマの撮影時から奮闘する父を見ていた長男と次男は、夏休みの課題に「極主夫道」を選んだという。

「毎年つまらなさそうにやっていたので、『今度はパパが決める』と提案したら、長男は『アドリブとは?』。次男は僕や玉木さんが、劇中内で肩や背中に入れている『タトゥー』が研究課題になりました。長男は映画の台本と放送されたドラマを見比べて、どのような違いがあるのか、アドリブが入ったことによって生まれた効果について比較。僕は演者として息子からインタビューも受けました。次男は、タトゥーを初めていれた火消しの話や、現在はどのような職業の方が入れているかなどを、まとめていましたね。新学期が始まって発表した後に、誰かがSNSとかに上げて、ネットニュースにならないかなと思ったけれど、学校も含めて何の反応もなくて寂しかったです(笑)」

 滝藤は、小学生の時から映画俳優のコーディネートを真似るなど、おしゃれには人一倍気を遣う。そのセンスはスタイルブックを上梓するほど、注目されている。

「虎二郎が着ているスーツは、アルマーニです。頭に巻いたハチマキは細く巻くと似合わなかったので、原作よりも太めにしようなど工夫しました。普段は衣装を着ているので見えませんが、肩や背中にかけて入っているアートペイントは、4人のスタッフが3時間がかりで描いてくれたものです。(竹林の中で)にらみをきかせた虎を背負うと、虎に近づけた気がしました」

 映画の公開を前に東京都内で開催されたイベントでは、玉木ら主演者が浴衣で登壇。滝藤がまとった一着は、スタイリストが反物から選んで仕立てた3着の中から「虎っぽい」と袖を通したものだった。映画が上映されている時間を利用し、ロビーで行った撮影中には、漏れ聞こえてくる音に気付いた滝藤が、「いいね。懐かしいね」と笑顔。コロナ禍で中止されることが多かった試写やイベントが実施できたことの幸せをかみしめていた。

□滝藤賢一(たきとう・けんいち)1976年11月2日、名古屋市生まれ。98年から舞台を中心に活動。映画「クライマーズ・ハイ」(2008年)で一躍脚光を浴び、以降「半沢直樹」(13年)、「俺のダンディズム」(14年)、「半分、青い。」(18年)、「探偵が早すぎる」(18~22年)など、ドラマや映画、CMで幅広く活躍。趣味は園芸。著者に「服と賢一」(主婦と生活社)がある。

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