ネット時代になぜ電話相談? 57年続く「テレフォン人生相談」制作陣が明かすこだわり

インタビューに応じたプロデューサーの長濵純氏(右)とディレクターの宅野淳氏【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じたプロデューサーの長濵純氏(右)とディレクターの宅野淳氏【写真:ENCOUNT編集部】

相談内容のなぞ解き要素も人気の秘訣

 昭和、平成、令和と放送を続けてきた。時代が変われば相談内容も変化しているが問題の本質は変わらないと制作陣は感じている。相談者の真の質問をひも解くのも同番組の役割だ。

「いじめや自殺が多いときは、その話題が増えますし、表面上の相談は時代とともに変わってきています。けれど、心の問題は一定のパターンがある。心理をきっちりと説明してあげて相談者につなぐ。なぞ解き要素もあったりするんですよ。表面的なことを回答していたらすぐに飽きられてしまう」(宅野氏)

 新型コロナウイルス禍の現在は家庭内の相談が増えた。「例えば60歳、70歳の女性だと孫の不登校や息子夫婦に口出しをするといった案件。自分の人生がつまらないから他人の人生に絡んでいるのですが、そこを丁寧になぞ解きして返すのが役割です」(宅野氏)。

 他の番組との違いは何なのか。「バラエティー番組などは面白く編集しようというのが常ですが、この番組においてそれはないです」と説明。

 さらに「この番組に関しては、解決していくまでに何分も収録をやって、パーソナリティーや回答者のキャラクターを活かして、どう14分のダイジェスト作品にするか。どういうことが相談事項でそれに対してどういうアプローチをして、どういう風に相談者が納得していくのかというさまを総集編でまとめているのです」(長濵氏)と語った。

 聴取率も高い。令和になってもなお大きな反響をこう分析する。「聴いている方々も結局は自分の心が分からないのだと思います。自分に共通する方の電話相談があったりすることで気付きの機会が増える。2019年にイベントをやったのですが、驚愕(きょうがく)したのは、講義を受けている感じでみんなメモを取りながら参加しているんですよ」(長濵氏)と当時を振り返った。

 手応えも感じていた。「相談者は悩みの本質が分からなくなってしまった人たち。電話する人って周りになかなか話す人がいないのだと思います。相談の電話を丁寧に受けるだけでも悩みを和らげているのではないかと。だからこの番組を選んでくれている」(宅野氏)。

 さらに、半世紀以上続く番組の制作者としてのこだわりも明かす。「悩みをその日に解決するというのを主眼においているので、収録した以外のものも答えられるのがベストかな」(宅野氏)。

 また「誰かの気付きになればと思っています。SNS上で表現する人もいれば電話で表現する人もいる。でも、実際は外に向かって表現しない人が多数です。この番組を聞いてくれている人の人生をより良くするためのヒントになればと思います」と語る。(長濵氏)

 昔ながらの制作方法で大変な部分は多い。しかし、つないできた灯をここで消すわけにはいかない。

「実は、相談受付を担当されている方々の中には我々の入社よりも前から携わっているご年配の方々もいらっしゃいます。その方たちが『何かお役に立つことはありませんか』と従事してくださり、相談内容のカードを持って収録スタジオにやってくる。つないできたバトンをどう次につなげるか。このバトンを絶やさないことですかね」(長濵氏)

 便利なものがあふれ、誰かと会話せずとも生活ができる時代。だからこそ「対話」を大事にする。「テレフォン人生相談」の昭和の時代から変わらないスタイルが今、現代人にぬくもりを与えている。

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