河瀬直美監督、東京五輪公式映画の“苦労”明かす「構成が非常に難しかった」

映画監督の河瀬直美氏が23日、都内で行われた映画「東京2020オリンピックSIDE:A」(6月3日公開)完成披露舞台あいさつに登場し、同作をアピールした。

映画「東京2020オリンピックSIDE:A」完成披露舞台あいさつに登場した河瀬直美監督【写真:ENCOUNT編集部】
映画「東京2020オリンピックSIDE:A」完成披露舞台あいさつに登場した河瀬直美監督【写真:ENCOUNT編集部】

映画「東京2020オリンピックSIDE:A」完成披露舞台あいさつに登場

 映画監督の河瀬直美氏が23日、都内で行われた映画「東京2020オリンピックSIDE:A」(6月3日公開)完成披露舞台あいさつに登場し、同作をアピールした。

 MCから「カメラを回したのが2019年7月ということでしたが、現在の気持ちは?」と聞かれた河瀬監督は「年を取りました。5000時間もの映像は24時間見ても相当かかるのですが、夢中になりました。できるだけ客観的にその物事を見つめてみようと思いました。この数か月、どっぷりとその世界につかりました。私のまなざしがこの映画を作ったのだとすると、今の時代の人たちだけでなくて、100年1000年先の子孫に届いて、私たちは一生懸命生きていたということを残したいと思いました」と語った。

 2020年に開催予定だった東京五輪は、史上初めての延期。そして2021年夏、収まらないコロナ禍、史上初のほぼ無観客開催の決定、関係者の辞任など、開催に賛否両論がある中で開催された。第5回ストックホルム大会以来、撮り続けられている五輪公式映画だが、今回は異例の大会。その開催に至るまでの750日、5000時間に及ぶ膨大な記録を元に撮り続けた。「SIDE:A」では、表舞台に立つアスリートを中心とした五輪関係者たちの秘めたる思いや情熱、苦労を映し出している。

「SIDE:Aの苦労は?」という質問に河瀬監督は「それぞれの33競技339種目の一つを描くにしても、一つの時間軸が最初から最後まで描かれてしまう。映画が時間というものを体現するメディアだとすると、一つの物語として、旅をしてもらうための構成が非常に難しかったですね」と振り返った。

 また、同作は第75回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションのクラシック部門(カンヌ・クラシックス)に選出。河瀬監督は舞台あいさつが終わるとそのままカンヌに旅立つという。河瀬監督は「おかげさまで、カンヌとは最初の映画からご縁をいただきました。五輪の公式映画がカンヌで上映されるのは1972年以来だそうです。私がこの役割を引き受けさせてもらったときに、担当の方から言われたのは、IOCがこれまでの映画とは少し違う市川崑の時代に戻りたいということでした。いわゆる作家性ということでした。私にしか撮れないものを求めていただいているのだと思ったときに、この役割を全うしようと思いました。この3年弱の間、他の映画のことは全く考えていませんでした」と経緯と心境を明かした。

 さらに河瀬監督は「告白すると、まだBができていません。6月3日にAを公開するために死にものぐるいで仕上げたのが最近で、カンヌに見せられたのが4月の半ばです。カンヌの最高責任者から『この作品は未来永劫(えいごう)語り継がれるべき作品だ』と評価していただきました」と感謝の気持ちを述べ、「Bの方は最後の最後まで粘って、魂を込めて作りたいと思います。この国にしかできなかったオリンピック。コロナ禍で無観客で、それでもアスリートのほとばしる汗を皆に届けたかったその形は絶対に歴史が証明してくれるはず。支えてくれた皆さん、本当にありがとうございました」と語り、頭を下げていた。

※河瀬直美の「瀬」の正式表記は右上が刀

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