tofubeatsがメジャーシーンにこだわる理由 配信ではなくCDとして形に残す醍醐味

「トーフビーツの難聴日記」
「トーフビーツの難聴日記」

「必要以上の力はいらない」―tofubeatsが考える売れるということ

――「トーフビーツの難聴日記」というタイトルですが、後半は難聴の話題はほぼないですよね(笑)。

「そうなんですよ。『トーフビーツの難聴日記』ってタイトルは編集者さんが付けたんですけど、『難聴日記じゃなくてもよくないすか?』って。『難聴のこと書いてないのに……』みたいなのは最初はありました。でもいいのが思い浮かばなくて、負けました(笑)」

――現在、耳はどのような状態なのでしょうか。

「ほぼほぼ、9割5分ぐらい戻っていて全然気にすることはないです。コロナ禍で耳を酷使することも無くなったので、悪くなる要因が今のところないっていうのも正直あるかもしれないですね」

――10年後、20年後の未来を想像することはありますか。

「10年前は音楽をプロではやっていないだろうと思っていたんですけど、まだプロなので、10年後ももしかしたらプロかもしれないなと。一方で『無理ちゃうかな』と思ったりもします。『30歳超えて音楽しかやっていないのは結構やばいんじゃないか』というのはよく思いますね。奥さんとも話します。『あかんくなったらどうする?』みたいな。でもほかのことをしているイメージは湧かないです」

――今できることをやり続けるってことですね。

「そうですね。今になったら22歳ぐらいのインタビューで『もう今回が最後のアルバムかもしれない』って言ってるのがめっちゃ面白いです。でもそれは文字として記録に残しているから面白さに気付けるわけで、残していなかったらこの面白さは味わえないんですよ。だからメジャーにいるのかもしれないです。メジャーでアルバムを出すと型番に残る。本を出すと国立国会図書館に並べられて。そういう歴史にカウントされる状態って記録に残るので面白いんですよね。だからそれは自分がメジャーでやっている理由の1つかもしれないです」

――アルバムを配信ではなくCDとして出すのはその思いが強いということでしょうか。

「公式な記録として残ることがメジャーにいる面白さの1つだと思いますね。あんまりこの部分を挙げる人っていないですけど、品番が付いて、JANコード(バーコード)が付いて、商品として個人的なものが世の中に認定された状態で残るってことは、面白いことだと思うんです。これをみんなが評価しないのはちょっともったいないなって思ってます」

――日記内では「もっと自分に知名度があれば」と言った一節もありましたが、トーフさんの中に“売れたい願望”みたいなものはありますか。

「難しい話なんですけど、必要以上の力はいらない、自分以上の大きさになりたいとかはまったく無いんです。武道館でライブをやりたい、ロックフェスに出たい、とかそういう肩書的な目標みたいなものは全然ないんです。ただ曲をいっぱい作って自分自身のことを分かっていきたいという欲求があることは確実なんです。そういうことの中に、後輩にいい思いをしてもらいたいとかがあるわけで、そうなると力は多少必要になってくる。そういう意味での力があったらいいのに、みたいのはもちろんあります。

 趣味の中でも音楽っていうのは精神的に充足感を与えてくれるものじゃないですか。僕の場合はそれを得たいんです。お金までもらって、さらに充足感もっていうのはぜいたくな話かもしれないですけど、そういう思いがあるので、それをするためにプロモーションだったりライブだったりがあると考えています。売れるに越したことはないんですけどね(笑)。ただ、こんなことをやっていて世の中でやっていけているだけで御の字やってことを日記でも何回も書いてますけど、それはホンマにそうやと思うんです。頑張ったら頑張った分いい思いしたい、そういうのはあるかもしれないですね」

――現在も日記は継続されているのでしょうか。

「一部の書店で校了から発売までの日記を書籍の特典で付けるので書き続けてはいます。ただ前作も前々作もアルバムに制作日誌を付けているので、日記自体は今までもずっと付けてはいるんですよね。ただ日記の頻度だったり細かさが増している感じです」

――著書の続編も?

「今回の本の反響次第ですね。noteでこじんまりってなる可能性もあります(笑)」

□tofubeats(とーふびーつ)1990年11月26日、兵庫県・神戸出身。中学時代に音楽活動をスタート。2013年の「水星 feat.オノマトペ大臣」大ヒットを機にメジャーデビュー。人気アーティストとのコラボ楽曲やそうそうたる面々へのリミックス提供にDJ活動など活躍は多岐に渡る。22年5月18日に5thアルバム「REFLECTION」をリリース。それと同時に自身初となる著書「トーフビーツの難聴日記」も発売する。

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