プチ鹿島、岸田政権は「何でも飲み込んでいく」 今最も聞きたいこととは?
斜陽の新聞業界 「オワコン」ではない理由
――著書では東京五輪を巡る大手新聞社の在り方にも疑問を呈しました。
「僕はマスコミはスポンサー、中の人になるべきじゃないと思っています。大きなイベントに新聞社側も協賛していくのが普通になっちゃっていますけど、じゃあ1回目の東京五輪のように、単純に五輪が成功したら日本が豊かになるのか、万々歳なのかと言ったら、絶対そうじゃないじゃないですか。今回も森喜朗さんに相変わらず任せたら、むしろ負の部分というかアップデートしていない部分が世界にさらされちゃって、ひどいことになったじゃないですか。やっぱり報道機関だったら、何かそういう大きなイベントがあるんだったら、チェックする側に回らないとダメだよねというのは改めて思いましたね。一言でいうと、ひどかったと思います」
――一方で、地方紙については評価をしていました。
「地方紙はこれからの一つのキーだと思いますよね。全国紙、一般紙が五輪のスポンサーに乗っかっちゃって言えなかったことを、地方紙がいち早く社説で主張しました。今は地方紙をチェックするほうが面白いのかなと思う自分もいます。一方で地方紙は、その地域では一番の権力なんですよね。新聞社の下にテレビとかラジオとかそういうマスコミを持っているし、中には四国新聞みたいに絶対的権力(平井卓也衆議院議員の弟が社長で、母が社主)というか、なんなら一族から政治家を出して、別に政治家を出すのはいいと思うんですけど、それを紙面で全面的に推していくというのを、当たり前のようにやっているところもあります。自分としてはギョッとしつつ、面白かったので、これはどんどんネタにしていかなくちゃいけない、さらしていかなくちゃいけないなと思いましたね」
――新聞の存在意義とは何でしょうか。
「紙で読む人はどんどん減っていると思うし、部数もどんどん減っていると思いますが、何かどこか偉そうだと思われてる新聞としての何か大きな姿もあるじゃないですか。だからそれをどうしていくかですよね。一方で、僕なんか子どもの頃から慣れ親しんでいる媒体でもあるので、大きなニュースがあると、その新聞はどう伝えるんだろうという一つの価値観を示す役割は相変わらずあると思います。例えば大阪の吉村さんが、ある成分が入ったうがい薬がコロナ対策にも有効みたいな記者会見をやって、SNSではすごいバズって、うがい薬が売り切れたことあったじゃないですか。でも僕はその時、ちょっと待ってよと。SNSはこんなにバズっているんだけど、実際どうなのかというのを次の日の朝刊で1回見てみようと思ったんですよね。そしたら全然、もうベタ記事で、ちっちゃくしか報道していなくて、新聞によっては報道もしてないところも数紙あったんですよ。ということは、慌てて買いに行かなくてもいいんだなという価値判断ができたりなんかして、そういう意味ではまだ役立っていると思いますね」
――情報の信ぴょう性が問われる時代になりました。
「今はSNSで誰でも発信できるので、この物ごとに関してはどうなのかって自分で現場に行って自分で調べて、自分で裏付けをして、じゃあこういうふうに思ったので、こう伝えましたというのが、全て完璧な発信だと思うんですよ。だけどみんな、僕も含めて、本業もあるし、忙しいじゃないですか。だから代わりに裏付けを取って取材してくれる人というのは、そこは相変わらず今も有効だと思いますよ。急に誰かがうがい薬を推したとしてもよく分からないじゃないですか。そういう意味で、新聞記者はプロなので、僕は一つの価値判断を、まだ利用している部分がありますよね。それは国会議員に難しい問題を代わりに議論してもらうという役割を託しているのと同じですよね。ただ、国会議員に100%任せるのかと言ったら、この審議おかしいよねということは言い続けていく、チェックしていくというのが有権者の役割だと思うんです。だから、新聞にも100%任せますよじゃなくて、『いや、でもここはもっとちゃんと報道してよ』とか、『ここのツッコミ甘いじゃない』とか、それこそ五輪報道の例とかね。そういうのを言い続ければいいわけで、もう新聞自体がオワコンだから終わりというのは、なんか極論のような気がしますよね」
□プチ鹿島(ぷち・かしま)1970年5月23日、長野県千曲市出身。大阪芸術大学放送学科卒。97年大川興業でデビュー。07年からピン芸人に。時事ネタと新聞読み比べを得意とする芸風でラジオ・テレビ、コラムで活動中。TBSラジオ「東京ポッド許可局」、YBS山梨放送「プチ鹿島の火曜キックス」レギュラー出演中。著書に「教養としてのプロレス」(双葉文庫)、「芸人式 新聞の読み方」(幻冬舎文庫)など多数。