「ゴールデンカムイ」でブーム アイヌのドキュメンタリー映画に若者殺到、監督の思いは

約50年あまりもの間、「野蛮な風習」として禁止されてきたイオマンテ

 本作のタイトルにもあるイオマンテとは、猟で仕留めた動物の子を村へ連れ帰り、人の子同様に乳を含ませて大切に育てた後、葬って神の国に送るアイヌの儀式のこと。1955年から2007年までは「野蛮な風習」として、北海道知事の通達で禁止されてきた歴史がある。民族文化を撮り続ける理由について、北村監督は「失われゆくものを残そうという記録目的というよりも、古いものの中から普遍的なものを見つけ、現代を照らし出すため」と語る。

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「簡単に言うとイオマンテとは動物の命をいただくことに感謝を捧げる儀式で、見方によっては残酷な行為です。しかし、そこには動物をカムイの化身と捉え、たくさんの贈り物を持たせて丁重に神の国に帰すことで、また毛皮や肉を携えてこの世界に遊びに来てくれるという考えがある。現代人はたくさんの動物を食べて生活していますが、それを殺す過程は隠されていますよね。狩猟民族であるアイヌは、動物を殺すことを大切な儀式として、大人にも子どもにも見える形で行った。これこそ、民族文化から現代を批判的に捉え直す視点と言えるのではないでしょうか」

 今回の映画の公開に伴い、動物愛護の観点から批判的な声が集まることも危惧したという。しかし、ふたを開けてみれば漫画で興味を持った若い世代が涙を流して映像に見入る姿に、大きな驚きを受けたと北村監督は語る。

「私は途中までしか読めていませんが、ゴールデンカムイはアイヌ文化についてかなり本質的に捉えた、大きな功績のある漫画だと思います。そこで興味を持った若い人たちが、今度はリアルなアイヌの姿を見に来てくれれば。現代的な価値観だけでなく、命と向き合って生きた人々の姿を見て、何かを学んでほしいですね」

 ドキュメンタリー映画「チロンヌプカムイ イオマンテ」はポレポレ東中野ほかで公開中。

※「チロンヌプカムイ」の「プ」は小文字

■北村皆雄(きたむら・みなお)1942年11月30日、長野県伊那市出身。早稲田大学卒業後の65年、記録映画、テレビドキュメンタリーのディレクターとして活動を開始する。78年に日本映像民俗学の会を設立。81年、株式会社ヴィジュアルフォークロア設立し代表に就任。監督作は「ほかいびと-伊那の井月」「修験 羽黒山・秋の峰」「見世物小屋」「アカマタの歌」「クベールの馬」など多数。4月30日より「チロンヌプカムイ イオマンテ」が公開中。

次のページへ (3/3) 【写真】骨となって神の国に送られるチロンヌプカムイ(キツネ)の頭部
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