横浜高ボクシング部→広告代理店勤務→俳優 ド迫力アクションを生んだ異例の転身

撮影中の体脂肪率は3%と明かす木幡竜【写真:ENCOUNT編集部】
撮影中の体脂肪率は3%と明かす木幡竜【写真:ENCOUNT編集部】

日本映画への愛語る「緻密さが好き。作家性の強いものを欲しています」

 撮影中ほとんど食事をとらず、体脂肪率は驚異の3%。「1~2か月ぐらい豆腐と納豆、スープ春雨ぐらいしかほぼ取ってない。でも、空腹は大丈夫なんです。胃も小さくなるので、体を動かすためのタンパク質を摂取すればいい。撮影の期間は、その役に入ることのみ。そういうものだと思っていました」。

 主人公・創太には持てる力のすべてを注いだ。「キャラクターは自分自身とは全然違うとは思うんですけど、崖っぷちで、一生懸命生きている滑稽な男ってところは似ている。彼はリングの上でしか呼吸ができない。僕も、カメラの前に立って、そのパンチの代わりにせりふを出しているような生活を繰り返しています。生活には何の保障もないし、コロナで稼ぎ口が本当になくなっていた。プロデューサーは『本当に同じような状況で役にピッタリじゃないか』と言っていましたけど、たまったもんじゃなかったです」。

 ボクシングシーン、地下格闘技のアクションは、木幡にしかできない、肉体の演技。一挙手一投足に迫力とリアリティーがある。「アクションは中国流で撮ってほしいとお願いしたんです。日本のアクション監督は殺陣の演出しか任されていないんですが、中国では、アクション監督が動きだけでなく演出、カメラワークから編集まで権限を持ってやっています。冒頭のボクシングシーンで、ダウンしているところは僕の希望で実際にパンチを当ててもらっています。どうしてもダウンするときの精気を失った顔を撮ってもらいたかったので」。

 10年以上に及ぶ中国映画での経験において「『南京!南京!』や『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』ではすごいカメラの数が向けられる。慣れてしまうと、そういうものだと思ってしまいますが、今考えると、ありえないですよね。運良く中国映画界で激動のここ10数年を間近で見ることができました」と振り返る。

 ただ、木幡が本当にやりたかったのは日本映画だった。「中国映画はダイナミックなものはあるけれども、大味なところもある。予算も全然違うので、いろんな要望も叶えてくれるのですが、日本の映画の緻密さが好きです。作家性の強いもの、緻密な脚本を欲しています。成瀬巳喜男監督の『女が階段を上る時』(60年)が大好き。今観ても、すごくモダンで、ああいう作品に参加できたら、と思っています」と日本映画への愛を語る。

 念願の初主演には「何としても成功させたい」という強い思いも。「映画全体のことを考えていましたね。現場で自分の意見を通したいと思ったときも、それによって何かが壊れるよりも、現場をうまく動かすことの方を優先させたり……。監督からはめちゃくちゃ怒られましたが聞こえないように舌打ちしながらやっていました(笑)。でも、監督が言っていることがすべてですからね」。

 今後も日本映画、アジア映画で活躍してくれそうだが、「魅力的な人間になるように努力を続けます」とキッパリ。劇中では、野性味と繊細さを併せ持った人間らしい主人公を演じている。

□木幡竜(こはた・りゅう)1976年9月12日、神奈川県横浜市出身。世界チャンピオンも輩出している横浜高校ボクシング部を経て、井上尚弥など多くの名選手を育てる大橋ボクシングジムに所属し、プロボクサーとして活躍。その後、俳優へと転身する。中国映画「南京!南京!」(09)、アンドリュー・ラウ監督の「レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳」(10)でドニ―・イェン、スー・チー、アンソニー・ウォンと共演。テレビドラマ「紅いコーリャン」では、中国のトップ女優ジョウ・シュンとも共演。昨年、綾野剛主演のフジテレビ系ドラマ「アバランチ」では“最狂の敵”役を演じた。

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