「子どもが置き去りになっている」 来年に迫った部活動改革、現場からは戸惑いの声も

当事者の子どもや保護者は部活動を頑張りたい層と敬遠する層とに二極化

 行政から指定を受けている学校や地域(各都道府県で2校程度)はある程度進んでいるが、それ以外の学校現場では、改革の進め方をどの程度話し合われているのかも疑問視される。学校現場に具体策が打診されないため戸惑いがあり、それが移行を遅らせている原因にもなっているという。

「部活の顧問は基本的には全員に充てられ、技術指導は勿論のこと、人間教育に使命感を持って指導に当たっていた教員がたくさんいましたが、今はあまり熱く指導すると『やりすぎだ』『パワハラだ』と言われる時代です。専門外で頑張っていた指導者が、一歩引いて接するようになったことも事実です。世の中全体がそういう風潮になっており、子どもや保護者に向き合いづらくなっています。部活動から学ぶことはたくさんあると確信している教員は、かなりいたと思いますが、今回の改革で指導に携わる教員は少なくなると思います」(磯崎さん)

 また、当事者である子どもたちや保護者はどのように考えているのだろうか。同じく福島県内の中学校で教壇に立つ川名仁さんは、子どもたちの頑張ろうとする意欲や学校部活動で培う大切なものが失われていく可能性を危惧している。

「部活動を頑張りたい子、頑張らせたい親と、大変な部活動を敬遠する親子とに二極化しています。今はコロナで学校行事や部活動が制限されているので、頑張っても報われないという考えも増え始めているような気がします。また、部員不足や練習時間の減少に伴って、十分な活動が行われていないことで、競技そのものの楽しさを感じることができず、意欲の低下につながっていることも考えられます。学校部活動が思うようにできないなら、お金をかけてもクラブチームを視野に入れる親もいる一方、金銭的や時間的な負担を考えれば、学校部活動で頑張らせたい親の願いがあるのも事実です。子どもや親の願いに応えるためにも、地域移行はタイムリーな政策を打ち出さなくてはならないと思います」

 それぞれの教員がどう考えているのか、部活動にどれだけの人員が確保できるのか、子どもたちはどうしたいのか、保護者はどう考えているのか。そういったアンケートやヒアリングもなく、実施までの具体的な道筋を学校現場に示さないまま、改革が進んでいると磯崎さんは訴える。

「今回の改革は、休日指導を希望する教師とそうでない教師の考えを、それぞれ尊重しなければならないと思います。いずれにしても、子どもたちの受け皿をきちんと確保することが急務となっています。そのためには、片手落ちにならないように、学校、行政、関係機関、民間等を含め地域が一体となって政策を進めていくことが大切です。子どもたちが置き去りの改革にならないように」

 現在、中学校の部活動は全員加入の学校が全体の約3割、自主的に選べる学校が約7割で、塾での勉強や趣味を優先し、部活に所属する子どもの割合は年々減っている。日本の学校文化に長らく根付いてきた部活動はどうなっていくのか。段階的な改革の実施まで、猶予は1年に迫っている。

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