大蔵省職員→探偵 異例の転身 「探偵の怪しいイメージ払拭」にまい進する壮絶人生

浮気や不倫調査を行う大手探偵事務所シークレットジャパンの栗村崇会長(49)は、前職が大蔵省(現財務省)職員という異色の肩書きを持つ。幼少期に父親が浮気し、母親の苦労を目の当たりに。大蔵省退職を機に、「僕みたいな子どもを作りたくない」と探偵の世界に飛び込み、今や全国に80店舗を展開する指折りの探偵グループへと成長させた。「探偵の怪しいイメージ払拭」を掲げる栗村さんの半生に迫った。

探偵のイメージ一新を狙うシークレットジャパンの栗村崇会長【写真:ENCOUNT編集部】
探偵のイメージ一新を狙うシークレットジャパンの栗村崇会長【写真:ENCOUNT編集部】

「大卒は神と思え」 大蔵省で突き付けられた不条理

 浮気や不倫調査を行う大手探偵事務所シークレットジャパンの栗村崇会長(49)は、前職が大蔵省(現財務省)職員という異色の肩書きを持つ。幼少期に父親が浮気し、母親の苦労を目の当たりに。大蔵省退職を機に、「僕みたいな子どもを作りたくない」と探偵の世界に飛び込み、今や全国に80店舗を展開する指折りの探偵グループへと成長させた。「探偵の怪しいイメージ払拭」を掲げる栗村さんの半生に迫った。(取材・構成=水沼一夫)

 僕はこう見えて、もともと大蔵省にいたんです。国家公務員をやっていました。大蔵省は2年ぐらいで辞めました。

 僕は大学を出ていません。高校を卒業して国家3種に合格して大蔵省に入ったんですけど、残念な話、日本は大学を出ているか出ていないかだけで、すごい差じゃないですか。実際、入ってみると、なんだそれ…と思いましたね。大蔵省では「大卒は神と思え」というのが“社訓”でした。公務員は階級制なので、1階級でも上であれば、何歳であろうがペコペコしないといけない。そこで働いたとしても、40歳になったところで大卒には勝てない。おもしろくないなと思ったので、じゃあ僕にできることって何だろうと考えました。

 おいしいものを作れるわけじゃないですし、芸ができるわけでもない。技もない。僕は人の悩みを解決するための仕事がしたいと思い、探偵になろうと思ったんです。

 子どもの頃のことがずっとトラウマでした。家庭が複雑で、親父が浮気ばかりしていて、毎日泣いているおふくろの姿を見てきました。

 おふくろは昼に働いて、夜は惣菜屋もやって、僕は1人ぼっちでした。小学校2年生ぐらいからずっと1人でご飯を食べていました。寂しいですよ。地元で片親なのは僕だけで、貧乏だったので同級生からはバカにされ、高校に入ってグレました。おふくろが1人で働いていたので、大学に行きたいなんて言えないですし、出せるわけないと思っていました。

 親父がちゃんといれば、僕もそんな方向に行かなかったかもしれません。それこそ去年、親ガチャってはやったじゃないですか。本当にそう思うんですよ。僕も長嶋(茂雄)さん家に生まれかったですもんね。子どもは親を選べないですし、僕みたいな子どもを作りたくないですよね。そういうつらさを知っていたので、(浮気した人を)やっつける側に立ちたかった。子どもたちのためにやりたいと思いました。
 
 最初は探偵のやり方が分からなかったので、フランチャイズの探偵に入りました。トラックの運転したり、不動産の営業をやってお金をためて行きました。でも、その会社はオーナーからの加盟金集めとか、探偵学校のお金集めの会社に見えて、違うなあと思いました。それが独立したきっかけです。

 警察が事件だとすれば、僕ら探偵が扱うのは人の心の悩みです。うちもフランチャイズでやっていますけど、オーナーには必ず僕がお会いするようにしています。「この人だったら大丈夫」というのを見たいからです。依頼主さんも言ってくれるんですけど、本当、必殺仕事人の気持ちなんですね。お金を払って僕らに託してくれる。気持ちを晴らすじゃないですけど、依頼主さんに寄り添える会社にしたいと思っています。

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