「ドライブ・マイ・カー」自動車整備士、3万円のボロボロのワンボックスカーで叶えた夢

工場はここまで大きくなった【写真:ENCOUNT編集部】
工場はここまで大きくなった【写真:ENCOUNT編集部】

愛車遍歴は? プライベートの愛車公開

 今、僕が乗っているのはサーブ9-3という車です。免許を取ったのは18で、最初はブルーバード510でした。それからフィアットX1/9、アコード、ポルシェ914、シボレーのシェビーバン。そしてサーブ900カブリオレ。サーブ900のGLE、サーブ9-3です。サーブは何だかんだ、20年近く乗っていると思います。

 サーブ900は昔、ちっちゃなベンツとサーブに正面から風を当てたときに、ベンツは後ろに下がっちゃうけど、サーブは下がらなかった。空力(空気力学)も考えている車なんです。フロントガラスのアール(曲線部分)が強いほど、風が当たったとき風が逃げるんですよ。ドアのガラスも同じように丸みを帯びています。そういうところはやっぱり飛行機会社が作った車だと思います。ラリーでも一番最初にターボをつけたのがサーブなので、見えないところでこだわっているところがあります。

 今の新しい車は部品にコンピューターチップが埋め込まれていて、コンピュータでどこが悪いか全部出てくるんですよ。だからメカニックとしてはそういうほうが楽は楽ですけど、僕らはアナログの車なので、昔ながらのアナログのやり方で整備しています。

 レストアは古い車を丸裸にして、エンジンや内装関係から全部仕上げていく仕事です。もう生産していない車なんかだと、天井も張り替えたりします。部品がないとなれば、2個3個の部品をバラバラにして組んで、1個の部品を作りあげることもあります。だから2年待ちで車を取りに来てくれるときは、お客さんも本当に喜んでいますよね。「待ったー、きれい!」って。

 もうからないけど他でやっていない車をやってみたかった。それを30年ぐらいずっとやっていたら、「ドライブ・マイ・カー」に車で出させてもらって、整理を担当させてもらいました。サーブは本当にもう車の台数が少なくて、貴重な状態で部品もないところでやっています。僕も還暦過ぎているから、これから先、いつまでできるか分からないですけど、できると思うところまで頑張ってやっていこうと思いますね。

□天川恭男(あまかわ・やすお) 1959年9月18日、山梨県・甲府市出身。大手通信企業やサーブ専門店の営業を経て、整備士に。1994年7月、有限会社エーツーを立ち上げ「A2ファクトリー」を設立。サーブを中心に輸入車全般の修理・販売を行っている。プライベートでもサーブ歴20年で、現在の愛車はサーブ9-3。

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