犬猫のマイクロチップ義務化 健康上の問題は? 注意すベき点を日本獣医師会に聞いた
動物愛護管理法改正により、6月1日からペットショップなどで販売される犬や猫についてマイクロチップの装着が義務化される。生体の体内へのマイクロチップ装着は心理的な抵抗感も根強いが、導入の背景や課題にはどのようなものがあるのか。環境省とともに導入を主導した日本獣医師会の境政人副会長に聞いた。
個体識別番号が入ったマイクロチップを専用の注射器で首の後ろの皮下に埋め込む
動物愛護管理法改正により、6月1日からペットショップなどで販売される犬や猫についてマイクロチップの装着が義務化される。生体の体内へのマイクロチップ装着は心理的な抵抗感も根強いが、導入の背景や課題にはどのようなものがあるのか。環境省とともに導入を主導した日本獣医師会の境政人副会長に聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
マイクロチップは直径2ミリ、長さ8~12ミリの円筒形で、表面にはアレルギーや拒否反応の起きづらい生体適合ガラスが使用されている。装着は獣医師と愛玩動物看護士のみが行える診療行為で、専用の注射器で首の後ろの皮下に埋め込む。
マイクロチップの中には15桁の個体識別番号が入っており、専用のリーダーを近づけることで個体を識別、サーバー上のデータと照合することでペットの特徴や所有者の個人情報の検索が可能となる。
科学的な安全性、有効性は保証されているというマイクロチップだが、ペットの体内に埋め込むことには心理的な抵抗感を感じる人もいるだろう。健康上の問題はないのだろうか。
「注射器を使うので、入れるときに針を刺す痛みはありますが、一度入れてしまえば痛みはまったくありません。世界中で広く使われていますが、拒否反応や腫瘍となるようなケースもほとんどない。皮膚の下を動いてしまい、どこに行ったか分からなくなってしまうことはまれにあります。異物を入れるのが不安という気持ちは分かりますが、健康上の害はまったくないものと思って大丈夫です」
欧米ではペットの迷子や遺棄防止のため、広く普及しているというマイクロチップ。国内でも任意の装着は進んでおり、日本獣医師会が管理するシステム「AIPO」ではすでに280万頭が登録されている。この他、いくつかの民間団体がそれぞれ独自のシステムを運営しており、今回の義務化はそれらを一本化する目的もあるという。義務化となることで現在ペットを飼っている人や新たに購入を考えている人にはどのような義務が生じるのか。
「今後ペットショップ等で販売される犬や猫にはすべてマイクロチップが装着されており、買った際には購入者自身による所有者の登録変更手続きが必要です。現在飼育しているペットや、知人や保護団体などから譲り受けた場合は装着は努力義務ですが、なるべく装着していただきたい。費用は動物病院によって異なりますが、概ね3000~5000円ほどになります。1度装着した場合は譲渡はもちろん、住所変更があった場合にも手続きが必要になります」