映画界“性暴力問題”で注目 インティマシー・コーディネーターが語る世間の誤解

性的な表現を規制するのでなく、むしろよりよいシーンを作る手伝いをする仕事

 制作サイドからすれば、撮影内容について注文が入ることにもなり得る存在。監督やプロデューサーから疎まれたり、性的描写や表現の規制につながったりすることはないのだろうか。

「よく監督に意見する役と誤解されますが、実際は監督のシーンに対するビジョンを聞き出し、それを実現するための手伝いをする仕事。もちろん、安全に撮影するために前貼り着用など絶対に譲れない部分はありますが、性的な表現を規制するのでなく、むしろよりよいシーンを作る手伝いをするのが仕事です。監督からリピートで依頼を受けることもありますし、年齢や感覚が若いプロデューサーなどは今まで不安だった部分など含め、気まずかったところを任せられるとむしろ積極的に入れたがる方も多いです」

 相次ぐ性暴力の告発で、インティマシー・コーディネーターの注目度も上がっている。一連の報道で認知度が上がる一方、世間のイメージと実態の違いにはジレンマも感じているという。

「もちろん、映像業界に携わっている一員として心が痛いし、問題は大きいと思っています。ただ、性暴力は人権侵害であり、コーディネート云々以前に絶対にあってはならないこと。私たちは撮影や録音、照明のスタッフと同じ、作品を安全に配慮し制作する1スタッフで、カウンセラーでも弁護士でも、全てを解決できる正義の味方でもない。私が現場に呼ばれるタイミングの多くは、台本ができてから、撮影の始まる数週間前のタイミングなので、キャスティングレベルの話では対応ができないこともあるし、コンプライアンスの為にだけ雇われたり、存在するわけでもありません。『インティマシー・コーディネーターになりたい!』という人から連絡をいただくこともありますが、その辺りはちょっと美化され過ぎているというか、誤った認識が広がっていることに危機感も感じています」

□西山ももこ(にしやま・ももこ) 1979年8月23日生まれ、東京都出身。2001年、チェコの芸術大学に留学。帰国後の2008年、テレビ制作のコーディネート会社に就職、アフリカ専門のロケコーディネートを行い、2016年にフリーランスに転向。2020年、インティマシー・コーディネーターの資格を取得。

次のページへ (3/3) 【写真】撮影現場で使用される前貼りの一例
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