映画界“性暴力問題”で注目 インティマシー・コーディネーターが語る世間の誤解

映画監督の榊英雄氏、園子温氏、俳優の木下ほうから、映画界での性暴力問題が次々に報じられている。そんななか、性的描写を伴うシーンの撮影について、監督と役者の間に入り調整する「インティマシー・コーディネーター」への注目が高まっている。水原希子も主演映画で導入を訴えた職業は、日本での浸透はまだこれから。実際にどのような役割を果たし、またどのようなところに課題があるのか。国内の資格保有者のうちの一人、西山ももこさんに聞いた。

国内に2人しかいないインティマシー・コーディネーターの資格を持つ西山ももこさん
国内に2人しかいないインティマシー・コーディネーターの資格を持つ西山ももこさん

性的描写を伴うシーンについて、監督と役者の間に入り調整する仕事

 映画監督の榊英雄氏、園子温氏、俳優の木下ほうから、映画界での性暴力問題が次々に報じられている。そんななか、性的描写を伴うシーンの撮影について、監督と役者の間に入り調整する「インティマシー・コーディネーター」への注目が高まっている。水原希子も主演映画で導入を訴えた職業は、日本での浸透はまだこれから。実際にどのような役割を果たし、またどのようなところに課題があるのか。国内の資格保有者のうちの一人、西山ももこさんに聞いた。

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 インティマシー・コーディネーターとは、ヌードなどの身体の露出があるシーンや日本ではベッドシーンなどとも呼ばれる性的描写の含まれた「インティマシー(親密な)」なシーンについて、監督と役者の間に入り両者の意見のすり合わせをしたり、同意を取ったり、必要とされれば振り付けなどを考えたりするコーディネーターのこと。舞台演劇では同様の役割を担う「インティマシー・ディレクター」が存在していたが、#MeToo運動の流れもあり映像業界にも参入。明確な力関係が存在する撮影現場で、役者が拒む余地なくセンシティブなシーンの撮影を強要されることを防いだり、精神的にも肉体的にもより安全に撮影するため2018年頃に欧米を中心に誕生した新しい職種だ。

 アフリカ専門のロケコーディネーターだった西山さんがインティマシー・コーディネーターの資格を取得したのは2020年。コロナ禍で海外ロケが次々と中止になるなか、友人からロサンゼルスに拠点を置く団体「IPA(Intimacy Professionals Association)」の資格取得のためのトレーニングと試験が日本で行われるという情報を得たことがきっかけだった。

「それまでは存在自体知らなかったんですが、長らくテレビ業界にいて、テレビのジェンダーバランスやコンプライアンス意識の低さに違和感を感じていた。もうテレビのコーディネートからは離れようかと考えていたときに、インティマシー・コーディネーターのことを知って、これこそ今の映像業界に必要な仕事なんじゃないかと試験を受けることを決めました。今は日本では私と一緒に試験を受けた方の2人しかいませんが、これからどんどん増えていく仕事だと思います。ただ、国際基準や統一団体があるわけではないので、資格の在り方をどうするかが課題だとも感じています」

 IPAの資格取得後、これまでにドラマ4本、映画2本の撮影に携わり、現在も複数の作品の撮影に関わっているという西山さん。あくまで裏方仕事であり、センシティブなやり取りを役者側ともしているので、必要がない限り作品名は伏せているというが、具体的にどのようなことを行うのか。

「私たちが入るのはあくまでインティマシー・シーンに限られます。事前に監督から具体的なイメージを聞き出し、それを役者に伝えつつ、役者側の希望やNGを確認し監督に伝える。センシティブな撮影に対して、お互いが共通の認識を持てるよう橋渡しをする仕事です。イメージに合う映像や、資料を見せたり、実際に身振り手振りを交えて振り付けすることもあります。セックスは最もプライベートな行為で、たとえ仕事で擬似だとしてもそこのプライバシーは守られるべき。何も指示がなければ、役者はカメラの前で自身のプライベートな部分をさらけ出さないといけないと感じるかもしれない。役者自身と、演じている役とは分けられなければいけないんです」

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