38歳サラリーマンがボクシング“デビュー”を目指すワケ 亀田大毅の下で猛練習

ボクシングにかける熱い思いを口にする長石さん【写真:山口比佐夫】
ボクシングにかける熱い思いを口にする長石さん【写真:山口比佐夫】

大毅氏から教わったのは「自分に負けないこと」

 普段は人事部人財採用課で新卒採用の担当。挑戦を決めた際、周りはどんな反応をしたのだろうか?

「応援してくれる方が多い中で、社長だけ体のことをすごく心配してくれて、実は説得が一番大変でした。うちの会社は『ワクワクをカタチにしよう』という思いを掲げているんです。そんな中で、今回の挑戦は『ワクワクをカタチにできる』チャンスだと思ったんです。亀田家の方々が承諾してくれなかったら、こんなチャンスはないわけで。大毅さんのYouTubeに出るというそこまでの話はつけてきたわけだから、ここで僕が形にしなかったら、ワクワクを形にというのを名乗る会社としてどうなんですかって(笑)。

 僕がワクワクを形にした結果、そういう大きなステージで頑張っている姿を(外に)見せることで、本当にワクワクを形にしている会社なんだなと認めてもらえるんじゃないかと。危険な賭けでもあると思うんですが、本当に個人としてはワクワクしたことは間違いないので」

 最終的には自らの思い、熱意で押し切った格好だ。

 この4月からは部長に昇進した。会社での責任も大きくなるが、同時にボクシングでも簡単には引けなくなった。大毅氏からは特に言われているのは「自分に負けないこと」。仕事をしながらトレーニングを続けるのは楽ではないが、立ち止まるわけにはいかない。

「今だと10時~19時まで仕事して、帰宅して20時半からトレーニングというスケジュールです。(大毅氏が)考えて送ってくれるメニューはどこでもできるものが多い。今はひたすら走ってという感じです。手応え……いけるって思ったことは1回もないです。世界を獲ってる方の練習メニューですから。でもこんなにきついんだって、びっくりします。

 社会人になってから何もしていなかった自分からしたら、まず毎日練習をすることがきついじゃないですか。最初は1日分すらできないんですよ。何百メートルを何分で走るみたいなメニューもあって。『え……?』みたいな。でもそれをとにかくやり続けて、少しずつできるようになるしかない。最初はウォーミングアップすらできなかったんですが、弱音を吐いてる場合じゃない。毎日やっていると少しずつ慣れてきてはいます」

 仕事が終わった後、日付が変わる直前まで毎日約3時間汗を流している。過酷な日々であることは想像に難しくない。できるようになればなるほど、新しいメニューが増えていく。慣れたからといって、決して楽になるものではないのだ。

 それでも夏頃を目指しにリングに立つという目標へ向けて、38歳は自身の体にムチを打ち前に進んでいる。原動力は何か。

「自分がワクワクを形にしたくて挑戦していること。あきらめるわけにはいかないですよね」

 額に大粒の汗を浮かべながら、その瞳は少年のように輝いている。

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