【映画とプロレス #5】どん底から一転 数々の作品に出演 俳優として開花したレスラー ジェイク・ロバーツ

「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」(19年)には、一世を風靡した2人のレジェンドレスラーが出演している。ジェイク"ザ・スネーク"ロバーツと"マンカインド"ミック・フォーリーだ。映画という意味で両者に共通するのは、ドキュメンタリー作品「ビヨンド・ザ・マット」(99年)の主要登場人物ということだろう。このキャスティングに「ビヨンド・ザ・マット」が無関係とは到底思えない。そこには同作品と両者へのリスペクトが込められていると思うのだ。

対戦相手にニシキヘビを使うジェイク・ロバーツ (C)2020 WWE, Inc. All Rights Reserved.
対戦相手にニシキヘビを使うジェイク・ロバーツ (C)2020 WWE, Inc. All Rights Reserved.

ニシキヘビをリングに持ち込むレスラー"ザ・スネーク"

「ザ・ピーナッツバター・ファルコン」(19年)には、一世を風靡した2人のレジェンドレスラーが出演している。ジェイク”ザ・スネーク”ロバーツと”マンカインド”ミック・フォーリーだ。映画という意味で両者に共通するのは、ドキュメンタリー作品「ビヨンド・ザ・マット」(99年)の主要登場人物ということだろう。このキャスティングに「ビヨンド・ザ・マット」が無関係とは到底思えない。そこには同作品と両者へのリスペクトが込められていると思うのだ。

「ビヨンド・ザ・マット」は公開当時(必ずしもそれが世界共通のプロレスの真実とは限らないとしても)、マット界の裏側(あるいはバックステージ)を描写した点が物議を醸した。が、この映画の本質は、ロバーツ、フォーリーにテリー・ファンクを加えた人間ドラマにこそ集約されている。3人に共通するのは家族を巻き込むリング内外での葛藤。フォーリーは妻子の前で血を流し、ロバーツは薬物におぼれ、娘との関係を修復できないでいる。その境遇は「レスラー」(08年)でミッキー・ローク演じるランディ・ロビンソンに投影された。「レスラー」とはある意味、「ビヨンド・ザ・マット」のドラマ化作品と言えるのかもしれない。

「ビヨンド・ザ・マット」は実在の人物を追ったドキュメンタリーだ。だから劇映画のように映画が終わったとしても、すべてが終了してしまうわけではない。我々の実生活がそうであるように、ロバーツが生きている限りつづきがある。ロバーツにフォーカスした「ビヨンド・ザ・マット」の続編とも言うべき作品が、「THE RESURRECTION OF JAKE THE SNAKE」(15年)だ。

 直訳すれば、「ジェイク・ザ・スネークの復活」。もともと「ザ・スネーク」は彼の容姿や動きを形容するニックネームだったが、WWF(当時)はそれをモチーフに前代未聞のキャラクター設定をおこなった。ホンモノのニシキヘビ(名前はダミアン)をリングに持ち込むパフォーマンスで、ロバーツは80年代のプロレス界を代表するスーパースターとなったのだ。

 一方で私生活は荒れまくり、出生の秘密は「ビヨンド・ザ・マット」でも語られていた。同作品後もトラブルはつづき、親友のダイヤモンド・ダラス・ペイジやスコット・ホールらが救済に乗り出した。そして14年、ロバーツはペイジをインダクターにWWE殿堂入りを果たすこととなる。そこまでの様子を映し出したのが「THE RESURRECTION OF JAKE THE SNAKE」。”RESURRECTION”という単語は、同じ”復活”でも”COME BACK”より遥かに重い。そこには”キリストの復活”という宗教的意味も込められているのである。

 映画は15年1月23日、ソルトレイクシティーで毎年開催されているインディペンデント映画の祭典「スラムダンス映画祭」に出品された。同年3月8日にはハリウッドのアークライトシネマ、9月6日にはオレゴン州ポートランドでも上映されている。

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