Apple「コーダ あいのうた」は映画界を変えるのか 配信会社初オスカー作品賞の意味

助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァー【写真:AFP/アフロ】
助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァー【写真:AFP/アフロ】

助演男優賞のコッツアー「ろう者のコミュニティーに捧げたい」

「コーダ」はノミネートされた作品賞、脚色賞、助演男優賞の三つを手にした。授賞式で最も感動を呼んだシーンも、助演男優賞を受賞したトロイ・コッツァーのスピーチだろう。ろう俳優の受賞は「愛は静けさの中に」(1986年)でアカデミー主演女優賞を受賞したマーリー・マトリンに続く2人目。本作ではマトリンがその妻を演じている。

 同部門では最有力候補に挙がっていたコッツァーだが、「信じられない。感謝します。『コーダ』は世界中で見られています。ホワイトハウスでも上映されました。この受賞をCODA、ろう者のコミュニティーに捧げたい。父母にも感謝します。私はやり遂げました!」と手話で喜びを語り、手を天に突き上げた。コッツァー自身も、両親の反対を押し切って、俳優を目指した苦労人。53歳の大快挙は、ろう俳優の活躍の場を広げることになるに違いない。

 配信会社初の作品賞は、今後の映画界にも大きな波を起こしそうだ。Netflix映画「ROMA/ローマ」(アルフォンソ・キュアロン監督)は第91回アカデミー賞(19年)に最多10部門にノミネートされ、外国語映画賞(現・国際長編映画賞)、監督賞、撮影賞を受賞したものの、作品賞には手が届かなかった。受賞したのは「グリーン・ブック」だ。当時は「配信会社に対する映画人の抵抗」が原因とも言われたが、その後、2年続いたコロナ禍の影響もあって、配信が一気に身近なものになった。

 今後は、10作品、27ノミネートとなったNetflixだけではなく、Apple、Amazonもオスカーを視野に入れた映画製作に力を入れるのは間違いない。ディズニーもこれまで以上に配信にシフトするだろう。配信映画が増えれば、素晴らしい作品を家でも楽しめるというメリットもあるが、同時に、映画館という市場が急速に縮小していく危険もはらんでいる。

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