T-BOLAN森友、病のメンバーと一緒に乗り越えたバンドの窮地「彼の一歩がバンドの光になった」

:T-BOLAN(左から)上野博文(ベース)、青木和義(ドラム)、森友嵐士(ボーカル)、五味孝氏(ギター)
:T-BOLAN(左から)上野博文(ベース)、青木和義(ドラム)、森友嵐士(ボーカル)、五味孝氏(ギター)

上野の一歩が俺たちバンドの光になる

――上野さんは2015年にくも膜下出血で倒れて、意識不明の状態から奇跡の復活を果たし、ライブのステージはもちろん、今回アルバムのレコーディングにも参加されましたね。

「そもそも復活をしても果たして上野がちゃんと楽器を弾けるようになるのかという心配もありました。でも彼の目標のためにもバンドをやり続けようと思ったんです。だから『完全でなくてもいいじゃん』と。上野が何もできないゼロの状態から100を目指して、もしそれが結果10だとしてもいいじゃないって。

 俺はたとえ10だったとしても、10も前に進んだ上野の足跡がお互いにとってすごく意味のある『希望の光』になると思ったんです。もともと持っていた100が0になってしまったのにそこから10も前に進めたんですから。

 そんな彼の歩みが、俺たちにとってもみんなにとっても力をもらえる希望の光になったんです。そして今回のレコーディングに関しても、たとえミュージシャンとしての上野のブランクがあったとしても、今の彼の力を出し尽くしてくれたらバンドにとってはそれで十分だったんです」

――コロナ禍でのレコーディングはいかがでしたか?

「T-BOLANもアマチュアの頃はみんなでスタジオに入ってせーので録っていたんだけど、メジャーデビューしてからは作詞作曲をする俺とアレンジャーの間で始まるんです。曲の骨組みができたら全員でスタジオに集まって確認しながら進めていったんだけど、今回はコロナ禍やレコーディング技術の進化もあって、最初はそれぞれ自宅でレコーディングを始めました。

 ところがレコーディングが進むにつれて、『なんか違うぞ?』って。みんな満点なものを出そうとして演奏しているから演奏自体はいいんだけど、T-BOLANとしての満点がキャッチできていない。いったい違いは何だろうと考えていたら『そうか! みんな一緒のところにいないからだ』って気が付いたんです。

 だれも『いいね!』とか『もうちょっとこうしたら?』とかいう人がいないから客観視できていなかったんです。それでメンバーと話してあらためて一緒に集まって作り直したら、全然音が変わったんですよ。『やっぱりそうだよね!』って。だから一緒にいることが作品作りにおいてもすごく大事なことなんだなってあらためて分かりました」

――意見が分かれたときはT-BOLANはどのように解決するのですか?

「昔からみんなに認めてもらっていて最後は俺が決める役割なんです。例えば今回ライブであった話なんですが、青木(和義、ドラム)がレコーディングとは違う形で演奏し始めて、ライブのバンマスは五味(孝氏、ギター)が担当しているから、五味が青木に『元の演奏がいいんじゃない?』って伝えたら青木が『この演奏が今回いいと思うんだけど?』って。

 そこで俺も加わって3人で話したら、青木が今1番気持ちよく叩ける演奏がそれだって分かったんです。それで五味に『今の俺たち(の演奏)はきっとこっちなんだよ』と2人に話をしながら決めていったんです」

――メンバー全員が、長いブランクの中で経験した気付きをそれぞれの形でバンドに持ち返っているんですね。

「何かそんなところも今のバンドの中でお互いに許容できている感じがします。そういうチャレンジって失敗したとしてもその先の成功につながりますからね」

――まさにバンドとしての大きな「愛の爆弾」ですよね?

「そうですね(笑)。バンドの音にも血液というか温度感みたいなものがあって、演奏のクオリティーに点数があるとするならばT-BOLANってそんなに演奏力が高い人間が集まっているバンドじゃないんです。だからといって高い演奏力の人がメンバーに入ったとしてもT-BOLANの温度じゃなくなってしまうんですよね」

――それはすごくよく分かります。有名な海外のバンドでもそういうのはありますよね?

「ですよね? 例えばボーカリストやギタリストがたとえカリスマだったとしても、オリジナルメンバーじゃない演奏を聴いたときに感じるギャップがみんなきっとあると思う。結局どっちが好きかと聞かれたら、これはクオリティーとかじゃなくて色の違いなんだろうなって。シンパシーとか相性みたいなものが重なって音に出てくる。だから上手い演奏家たちがそろったからといって、再現できる話じゃないんです。俺たちが今持っている精いっぱいの力を出し切ることが、T-BOLANのベストだと思います」

□T-BOLAN(ティー・ボラン)ボーカル森友嵐士、ドラム青木和義、ギター五味孝氏、ベース上野博文の4人からなる伝説のロックバンド。1991年7月シングル「悲しみが痛いよ」でデビュー。同年12月にリリースしたセカンドシングル「離したくはない」が異例のロングヒットを記録。その後も次々とヒット曲を連発するが、ボーカルの森友が心因性発声障害を発症し、それが原因で99年に解散。森友の懸命なリハビリの末、2012年、奇跡の再結成を遂げた。しかし15年3月今度はベースの上野がくも膜下出血で倒れ、一時は意識不明になるも家族やメンバーの献身的な看病もあり、16年12月31日に奇跡の復活を果たす。そこでT-BOLANは完全復活を宣言。18年には約23年ぶりの本格的な全国ツアーを敢行。そして22年3月14日、約28年ぶりとなる待望の6thオリジナルアルバム「愛の爆弾=CHERISH ~アインシュタインからの伝言」を発売。更に4月13日には、メジャーデビュー30周年を迎えたベストライブツアーのファイナル公演を完全収録したDVD「T-BOLAN LIVE HEAVEN 2020『the Best』~繋~ 愛の爆弾=CHERISH FINAL」も発売する。

T-BOLAN公式HP
http://www.beinggiza.com/zain/t-bolan/
公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCOmsRA-uLJ2y6UaGC-9iCyw

「T-BOLAN『愛の爆弾 PROJECT~MESSAGE FROM アインシュタイン』LIVE TOUR 2022」

ライブスケジュール(今後のスケジュールは決定次第発表)
4月15日(金)千葉・成田国際文化会館
4月23日(土)京都・舞鶴市総合文化会館 大ホール
5月01日(日)神奈川・神奈川県民ホール
6月03日(金)熊本・荒尾総合文化センター 大ホール
6月04日(土)福岡・福岡市民会館 大ホール
9月18日(日)長崎・長崎ブリックホール 大ホール
9月19日(月・祝)大分・大分iichikoグランシアタ

詳しくはオフィシャルサイトへ
http://www.beinggiza.com/zain/t-bolan/#ainobakudan-tour

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