ゼレンスキー大統領の通訳務めた在日ウクライナ人の矜持「国のために命落とすことが当たり前」

ミグダリスキーさんは「私にとってこれは戦争」と話した【写真:本人提供】
ミグダリスキーさんは「私にとってこれは戦争」と話した【写真:本人提供】

「国のために命を落とすことが当たり前」

 母は70代後半の高齢で、自宅はマンションの6階にある。「ママは足がちょっと弱いからうまくは動けない。つえを2本持って歩けるんですけど、今もし急に逃げてください、急に避難してくださいと言われても急いで逃げられない」。40歳の弟はウクライナ軍を後方支援している。「戦っている部隊ではないけど、応援している部隊に入っています。今、武器を持つ人は十分います。逆に地域の人を集めるコーディネート役が望ましいと言われ、彼がそういう役目をやっています。少林寺の関係でも彼がウクライナ連盟の連盟長で五段。周りにかかわっている人は100人ぐらいいます」

 食料や水については、「今のところ問題ないです。今のところオデッサは本格的に空爆されていない」と明かす。ロシア国境に近い東部や首都キエフ、ハリコフなどでは激しい戦闘が続いている。それに比べれば、オデッサの被害は少ない。周辺ではロシア軍の戦闘機を少なくとも3~5機は撃墜しているという。ただ、15日の地元メディアの報道では、ロシア海軍がオデッサに向けて進行しており、緊張が高まっている。

 ミクダリスキーさんは日本の避難受け入れが整い次第、母を出国させたい意向だ。母は新型コロナウイルス流行前は毎年のように来日。再会を望む気持ちは強い。「私も自分のママを呼びたい。日本が避難民を受け入れたら国内で支援を実施する。サポートが必要」と、ミグダリスキーさんは自身もその日に向けて用意を進めている。

 ロシアの侵攻後、オデッサの朝は早い。「今ほとんど朝6時ぐらいに起こされて警報が流される。1時間か2時間。それがあります」。心が休まる日はいつ訪れるのか。ロシア軍の進軍が気がかりだ。それでも、ズミイヌイ島で立ち向かった兵士のように、降伏などありえないとミクダリスキーさんは言う。

「もし最悪の場合には武器を持って戦いなさいと言われますが、もちろん戦う。当然のように。私たちはそういうふうに育った。敵を中にいれちゃあかんという考え方で、もし入られたとしても永遠に戦い続ける。ゲリラ活動とかパルチザン運動。学校で教わりました。国のために命を落とすことが当たり前」と語気を強め、オデッサ人の矜持を示した。

□ウラディーミル・ミグダリスキー 1972年6月12日、ウクライナ・オデッサ生まれ。オデッサ国立大学卒業後、98年に来日。京都大学大学院卒業。京都情報大学院大学准教授(数学)。同志社大学、関西大学非常勤講師。2019年10月のゼレンスキー大統領来日の際には通訳を務める。少林寺拳法准範士六段、居合2段。

トップページに戻る

1 2
あなたの“気になる”を教えてください