44歳・ガリットチュウ福島が“柔術”を通して証明したいもの 同世代に見せる生きざま

同世代に対して「不可能を可能にする」と意気込む福島善成【写真:ENCOUNT編集部】
同世代に対して「不可能を可能にする」と意気込む福島善成【写真:ENCOUNT編集部】

桜庭親子戦での敗戦で奮起

 なぜ柔術をはじめたのか。現在は名門ジム「トライフォース」池袋で練習に励んでいる福島だが、のめり込んだきっかけはある敗戦だった。

「QUINTET(寝技格闘技のイベント)を見て興味を持った。近所の柔術ジムを調べ、練習をしていました。しかし、そこが1か月もたたずに無くなってしまったんです」と不運な過去を口にする。

 それでも福島は辞めなかった。「近くの道場を借りて、同好会のような形で白帯と青帯の仲間たちでYouTubeを見ながら練習していました。あーでもない、こーでもないと組み合っていました」。

 総合格闘家・所英男のジム「所プラス」での出稽古が大きな転換点となった。「プロデューサーみたいな人に『寝技できる?』と聞かれて、素人なりにもうまくできてしまったんです。それで桜庭(和志)親子との対戦が決まりました」と説明した。

 福島は2021年7月に行われた「QUINTET FIGHT NIGHT 7 in TOKYO」で桜庭と息子・SAKU Jr.と対戦した。お笑い芸人が参加したエキシビションマッチ。当然“お笑い”としては大成功だが、この試合の敗戦が福島に火をつけることになる。

 自身に向けられた「茶番なんでしょ。芸能界最強って言われているけれど、強くないじゃない」の声。福島は本気だった。「悔しいというモチベーションだけで、(気づいたら)週6練習を行っていました」。

 人が一生懸命に頑張る姿は胸を打つ。「格闘技関係者から、もう1回柔術で世界チャンピオン目指したらどうですか? と言われました。それで出場を決めました」。しかし、青帯からでないと試合参戦は不可、ジムに所属し本格的に柔術に取り組んだ。

 神奈川・湘南在住の福島は、午前中に練習をして、午後は劇場などの舞台に立つ。「池袋まで定期代を月に14万円かけて、朝に90分練習をしています。足関節を決められた日にはコントの内容を変えたこともありました」と笑う。

 そのかいもあって、異例のスピードで青帯も取得した。「帯授与式のときに、(会員の)みなさん泣いているんですよ。こんなに帯もらうのって大変なことなんだと、周りを納得させるには優勝しかねーなと思いました」と当時の心境を打ち明けた。

 負けた悔しさがモチベーションだったが、今では見せたいものがある。「僕が柔術を始めたのが43歳。それはすごく遅いと思う。本当に好きなものを本気でやっていたら世界チャンピオンになれるんだよっていうのを証明したい。それで同世代に物事をスタートするのに遅いとかないよって、本当に証明したい。不可能を可能にする」と力を込めた。

 19年に発覚した“闇営業問題”で、暗い時期もあった。だが、100キロ以上あった体重も今では76キロまで減量するほど、夢に本気だ。全日本優勝で止まるわけにはいかない。世界を獲って、完全復活を“証明”する日はすぐそこだ。

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