【週末は女子プロレス#40】現役アイドルのプロレス両立 SKE48荒井優希、タッグマッチに燃える
「伊藤(麻希)さんと私って、真逆かもしれないですね」
アイドルからプロレス、プロレスからアイドル。双方の切り替えが絶妙にできる。しかも共通点が多いから苦にならない。練習にはわざわざ名古屋から東京に出てくるのだが、それさえも苦痛に感じたことはない。
「もともとそこの往復はけっこうしていたので、大変だねってよく言われますけど、自分ではあまり考えたこともないんですよね」
そのうえ、東京女子には同性のアイドルが好きで、芸能界志望からプロレス界にやってきた選手も多い。「よそ者がなにしに来た?」というようなムードはまったくなく、それどころか羨望のまなざしさえ送られている。すぐにその環境になじむことができたのは、団体全体の歓迎ムードが大きかったからだ。
「アイドルへのリスペクトを皆さんにすごく持っていただいてて、そこはホントにビックリしました。みんなホントに優しくて温かいです。なので、すべてが楽しいですね。プロレスをつらいと思ったことはないです。両方頑張れるのは、どちらも楽しいから。私って楽しければなんでもOKなタイプなので。イヤなことといっても、早起きとか、リング設営中に木のトゲが指に刺さるくらいですかね(笑)」
そこは手袋をすれば済む話だと思うが、率先してリング設営を行うのも、好感度大の彼女がすんなり溶け込めている証だろう。
18年10月、DDTで初めてリングに上がったときに始まり、デビュー戦で対戦した伊藤も、アイドルグループ出身者だ。伊藤の場合、過去のいじめ体験などの苦労や整形など、マイナスになりかねない部分を赤裸々に告白、それにより現在のカリスマ性を手に入れた。
「私は、整形はしてないしイジメられてもいないです(笑)。伊藤さんと私って、真逆かもしれないですね」
荒井のコメントから“真逆”という図式がみてとれる。真逆の対決が実現するからこそ、プロレスは面白い。
振り返ってみれば、東京女子のビッグマッチではタッグパートナー対決がメインを飾るケースが多い。20年11月TDCホールでの坂崎ユカVS瑞希、21年10月大田区の山下実優VS伊藤。そして今年、3・19両国での旗揚げメンバーによる山下VS中島翔子。いずれも団体最高峰のプリンセス・オブ・プリンセス選手権試合であると同時に、2人が紡いだ物語が観る者のエモーションに訴えかけるカードにもなっている。これぞ東京女子の世界であり、荒井が両国で挑む伊藤とのインターナショナル・プリンセス王座戦も、この路線にふさわしい物語を背景とするメイン級のカードなのだ。
2・11後楽園、荒井は伊藤の前に立ち、ベルトへの挑戦を表明した。シングルで2勝目を挙げ、伊藤はタイトル防衛。出ていくのは今だ、と感じたからだ。
「伊藤さんは大事なポイントで絡んでくる相手なんですけど、誰か(ほかの選手)が持ってるベルトだったら行かなかったかもしれないです。でも、伊藤さんに勝ちたいというのと、伊藤さんが持ってるからベルトに挑戦したかった。タイミングが重なってって感じですね。私が出てきたことでちょっと驚いた顔をしていたので、試合ではもっと驚かせたいと思いました。両国国技館と決まって緊張もあるんですけど、伊藤さんと試合できることがすごく楽しみ。プレッシャーとかじゃなくてワクワクの方が大きいですね。最初は伊藤さんがすごく怖くて、プロレスラーってすごいなって思ってました。でも、アイドルからこんなに強いレスラーになったので、私もすごい勇気をもらいましたね。たくさん学ばせてもらったし頑張るきっかけにもなったので、絶対に今度は勝ちたいです。ただ勝ちたいだけじゃなく。メチャメチャ尊敬してるというか、あこがれてます」
レスラーになって以降、ファンはもちろんSKE48のメンバーにもプロレスの面白さを伝えている荒井。3月9日にはニューシングル「心にFlower」がリリースされ、その10日後には両国国技館のリングに上がり、タイトル初挑戦で初奪取の快挙を狙う。と同時に、あるいはそれ以上に、東京女子のよさをさらに多くの人に知ってもらいたいと考えている。
「(3・19両国は)東京女子にとってすごく大事な舞台。東京女子プロレスをもっと盛り上げていけるような試合ができたらなと思っています!」