象牙市場の維持で日本が孤立危機 注目の国際会議へ保護団体「抜け穴になってしまう」
日本が違法な象牙取引のかくれみのになる危険
これらの象牙は国外に違法に輸出される可能性がある。国際NGO環境調査エージェンシーによると、中国を主とする外国で日本由来の象牙が押収された件数は、18年1月から20年12月まで少なくとも76件にのぼる。「大きな供給元があると、中国での需要もなくならない。ほかの国の閉鎖の努力を損なうということ」と坂元さんは危惧する。輸送手段は小口化しており、摘発されないケースも多いという。かつてのように船のコンテナで大量に運ぶことは減り、「EMS(国際スピード郵便)とかを使った輸出が多い。30キロまでしか入らないので発覚しにくい」(坂元さん)。管理が厳格な日本だから大丈夫という理屈は、通らないというわけだ。
巨大で合法的な象牙市場の存在は、遠く離れたアフリカの犯罪集団を刺激することにもつながりかねない。
「一番は、過去の象牙取引がゾウに何を起こしてきたか、経過に現れている。一部象牙の活発なマーケットがあると、そこで管理して売られているもの以外の違法なソースからの象牙の需要が必ず刺激される。象牙は無価値じゃない、非常に高い経済価値があるとビジネスに乗る人間がどうしても現れる」と、坂元さんは声を大にした。
新型コロナウイルスの流行による在宅勤務の加速で、日本では仕事においても印鑑の使用をやめたり、控えたりする動きが急速に広まっている。ただ、坂元さんは「大幅に減ってきているのは認印、銀行印のレベル。不動産の取引で実印を使うのは全く変わっていない」と話し、象牙で作られたような実印への影響は少ないとみている。
美術や伝統工芸として評価され、継承されてきた文化的な歴史がある一方で、国際社会が懸念する日本の象牙市場。限りある資源を守るため、より一層の協力が求められそうだ。
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【写真】ケニアの国立公園で撮影された実際の写真