象牙市場の維持で日本が孤立危機 注目の国際会議へ保護団体「抜け穴になってしまう」
絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の第74回条約常設委員会が7日からフランスのリヨンで開催される。議題になるのは日本を含む10の国・地域の国内象牙市場の閉鎖で、各国から出された報告書が吟味される。野生動物の保護を訴える日本の団体からは「日本のとりうる選択肢は、この市場を閉鎖することしかない」との声が上がっている。
7日リヨンで開幕 ワシントン条約常設委員会
絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する条約(ワシントン条約)の第74回条約常設委員会が7日からフランスのリヨンで開催される。議題になるのは日本を含む10の国・地域の国内象牙市場の閉鎖で、各国から出された報告書が吟味される。野生動物の保護を訴える日本の団体からは「日本のとりうる選択肢は、この市場を閉鎖することしかない」との声が上がっている。(取材・文=水沼一夫)
現地でオブザーバーとして会議を見守る認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金(JTEF)の事務局長理事・坂元雅行さんはこう指摘する。
「今回の会議のポイントは日本について象牙市場の閉鎖を明確に求めていくかどうかということなんですね。日本はほかの国と違って市場の維持を正面から主張している。閉鎖に正面から反対し続けている。その日本の姿勢をどう変えるのか。ワシントン条約の各国はどうやって日本を市場閉鎖に導くことができるかっていうところなんです」
密猟者の標的となる象牙の取引は近年、国際的に規制の動きが強まっている。生息数が激減している絶滅危惧種のアフリカゾウの保護はもちろん、違法な象牙の売買によって得られる利益が闇組織やテロリストの資金源になることを防ぐ狙いもある。
2016年のワシントン条約会議(COP17)で象牙市場閉鎖の決議が採択され、すでに米国や中国も象牙市場を閉鎖しているなか、注目されるのが日本の動向だ。採決に従い、各国が象牙市場閉鎖に向けた法整備を進める中で、日本は市場を維持する姿勢を鮮明にしている。法律によって市場を厳格に規制しているため、密猟や違法取引を引き起こす懸念はないというのが理由だ。
だが、坂元さんは「日本ほど大きな象牙市場が残ってしまうと、ほかの国が閉鎖してもその効果が弱まってしまう。抜け穴になってしまう」と危機感を口にする。
日本が保有する象牙の在庫量は圧倒的だ。20年末時点の日本政府の報告によると、日本の象牙の在庫は244トンで、一本牙の全形が178トン(1万7000本弱)、分割された象牙が66トンだった。このほか、象牙を使った印鑑が96万8000本、アクセサリーとその部品が318万個となっている。象牙は1990年のワシントン条約で輸入が禁止されているため、現在の在庫品はそれ以前に輸入されたり、限定的な解禁により輸入されたものと考えられているが、JTEFの調べでは、出所と取得時期が不明な象牙が大量に流通している。日本の在庫が占める割合は、2021年2月28日時点でワシントン条約事務局に報告されている数字に当てはめると、アジア全体の89%、世界全体の31%を占める。「会議でも各国が注目するのは日本の在庫の大きさだと思う」と坂元さんは語る。