人気声優・土岐隼一「僕はコンプレックスの塊だった」 “完璧”求め苦悩…弱さ認めて得た自信
大学2年時に初の芝居を経験 充実感とともに声優の道へ
教員を目指して大学に進学した土岐は、2年時に人生で初めて芝居をする機会を得た。4人だけの舞台に不安もあり、心が定まらなかった。そして、自身を抜てきしてくれた劇団長から胸倉をつかまれながら、「オレはお前が『できる』と思って選んだんだ」としかられたという。その後、勇気を振り絞って立った舞台。経験した充実感が、就職活動を始めた翌年に思わぬ影響を与えた。
「アニメやゲーム、映画が好きだったこともあり、『声優』という言葉が頭に浮かびました。インターネットで『声優』『なり方』と調べて、専門学校か養成所に進むと分かり、選んだのが、進学した専門学校でした」
剣道などで培った判断力や勝負強さも、大胆な行動を取らせた一因なのかと思いきや、「そうではないです」と即答し、自身の知られざる歩みを明かした。
「(東京)六大学を卒業した父、運動神経抜群な母の良い部分を継いだのが姉で、20年以上クラシックバレエを続けるなど活躍していました。才能がない僕は、努力で補おうと毎日3時間勉強をして、高校までは100点以外を取ったことがありませんでした。剣道は『腕っぷしくらいは強くなければ』と打ち込んでいましたが、面を付けているから出られたんです。顔が出ている柔道だったらダメでした。3人の中で過ごしていた僕は、コンプレックスの塊だったんです……」
完璧を求め続けたのは、失敗するのが怖かったからだという。だが、経験を重ねることで、「コンプレックスとうまく折り合いを付けられるようになりました」と言った。
「心の内を見せないと人間らしさを伝えることができないなと思えるようになってからは、少し柔軟になることができたと思います。胸倉をつかんでしかってくれた先輩は、僕が『できる』と選んでくれた。ファンの人は僕を『好きだ』と応援してくださっている。認めてくれる人のためにも、堂々とした自分でいたいと思えるようになりました。できないなら、できるようになること。期待を込めてくださった方のためにも全力でぶつかっていく。それが恩返しになるかなと。昔はそんな風に思うことができませんでしたが、支えてくれる人がいて、4~5年ぐらい前からそう思えるようになりました。弱さがあることを認めることで、自信を持って演じられるようになったのだと思います」
冥王院シンにシンパシーを感じながら、土岐はシンを演じきった。弱さを認めて得た自信。それは今後の出演作にもつながることだろう。
□土岐隼一(とき・しゅんいち)1989年5月7日、東京都生まれ。14年から本格的に声優活動をスタート。主な出演アニメ作は「東京リベンジャーズ」「大正オトメ御伽話」「真夜中のオカルト公務員」など。19年5月にはテレビアニメ「真夜中のオカルト公務員」のエンディング曲「約束のOverture」でアーティストとしても始動。22年5月18日にはデビューアルバム(タイトル未定)のリリースも決まっている。テニス、スキー、ビリヤード、剣道などが趣味。血液型A。