女子プロレス・アイスリボンつくしが大収穫のCMLL初遠征を総括 「自分の限界を見てみたい」

観衆にアピールするつくし選手【写真提供:CMLLレディースリング】
観衆にアピールするつくし選手【写真提供:CMLLレディースリング】

戸惑いながらも収穫を得たメキシコ遠征

 そして迎えた最終戦、2月14日アレナ・メヒコ。再びCMLLの金曜定期戦だ。つくしはマルセラ&プリンセサ・スヘイとのトリオで、アマポーラ&ダリス&レイナ・イシス組を迎え撃った。1本目はつくしがダリスのゴリー・スペシャルでギブアップを奪われた。2本目にはイシスをマヒストラルでピンフォールしイーブンに。決勝の3本目にはつくしが場外プランチャで舞ったところ、ダリスに読まれキャッチされてしまう。そのすきにリング上の2人がルーダ軍にフォールを奪われた。結果、初めての遠征は2勝2敗。しかし数字以上の成果を残したことは明らか。みずからの手で奪ったピンフォールはすべてカサス直伝マヒストラル。この技は遠征中にもカサスが直々にアドバイスし改良を加えていった。つくしはダリスから勝つためにマヒストラルを習得しようとしたのだが、彼女がカサス夫人と知ったのはだいぶあとのこと。そんなつくしにカサスはノリノリで伝家の宝刀を指導していたという。「ダリスにはこうしたら勝てるよって教えてくれたのがラ・マヒ(ストラル)。そのときは(カサスの)奥さんだなんて知らなくて。でも、2人でいるときは仲良しでしたよ(笑)」

 試合の合間には、いくつかの道場に赴き練習に参加した。そこで何人かのレジェンドルチャドールと顔を合わせたのも刺激的だった。たとえばレイ・ブカネロのジムでトレーニングしたり、ある道場にはエル・パンテーラがいた。男女混合のほか、女子だけの練習にも参加。「数を数えながら基礎体力のトレーニングをするんですけど、スペイン語がわからないので、とにかく元気出せばいいかなと思って“イチ!ニイ!サン!”って日本語で大きな声で数えたんですよ。そしたらまわりから大ブーイング。選手たちに取り囲まれてメッチャまくし立てられました。なので、次の女子練習までにスペイン語で1から10まで数えられるようしましたね(苦笑)」

 ほかにも戸惑うことが多々あったというつくし。たとえば試合、リング上にレフェリーが2人いた。キャプテンフォール6人タッグが主流のため現地では常識なのだが、しばらく意味がわからなかったという。ビックリするやら、やりにくいやらで、また試合が終われば観客のサイン攻めにあった。イスを食らってダメージがあるのに、ファンに囲まれバックステージに戻れない。やっと戻ったと思ったら控え室にまで入ってくるファンもいた。「応援してもらうのはうれしいんですけど、あのときはさすがにビックリして、泣いてしまいました……」。カルチャーショックを受けたつくしだが、ようやく慣れたという頃は、すでに最終戦。

「そうなんですよ! せっかく慣れてきたと思ったのに。なので、絶対にまた行きたいですね。いままで海外で試合をする機会がなくて、いま持ってるタッグのベルトを取ってから、いまの自分だったら世界に通用するなって思いがあって、海外で経験を積みたい気持ちからも希望したんです。今回その夢が叶って、夢って発言すれば叶うんだなって実感しました。だからこんどはひとりだけじゃなくてアイスリボンで行きたいですね。CMLLとの対抗戦をするのもいいし。そのためにもCMLLのベルトがほしいです。ベルトがあれば来やすくなると思うんですよ。短期じゃなく2カ月でも3カ月でも。もう、メキシコに住みたいくらいです(笑)。今回メキシコに来て、自分の可能性を感じましたね。こんなにできるんだって自分で思うくらいに自信がついて、たぶんどこにいってもプロレスできます(笑)(ずっと先にあるであろう)自分の限界を見てみたいなって思いました」

 現実的にも、CMLL王者になれば参戦機会は増えるだろう。と同時に、抗争が激化すればするほど髪の毛をかけるカベジェラ戦というリスクもある。実際、昨年5月には小林香萌(フリー)がアマポーラに敗れ丸坊主になっている(負けた方がおいしい場合多数)。ほか、昨年だけでも日本の女子選手で本間多恵(アクトレスガールズ)、中島翔子(東京女子)が参戦した。競争は激しい。

「カベジェラですか? 絶対にやらないです! 断ります! 絶対!絶対!やらない!」頑なに髪切り戦は否定するつくしだが、高所のメキシコシティーにおいても息切れはしなかった。また食事で体調を崩すことも、なし。どうやら彼女にはメキシコの水があっていたようである。トータルキャリア10年目前にして知った、新発見だ。(日付はすべて現地時間)

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