志茂田景樹、奇抜ファッションに当時は罵詈雑言「コップ酒を浴びせられた」ことも
電子書籍が今のやりたいこと「新しい小説の位置を築けるのかな」
――ご自身の心の声に従って始めた「よい子に読み聞かせ隊」ですが、コロナ禍以降の新しい世界で今後やってみたいことはありますか?
「コロナ禍を乗り越えたら僕は何をやるのかな、新しい人生に何を描くのかな、と想像するだけでも楽しい。今のネット世代の人たちに電子小説を届けたいです。分厚い本を短編で1冊の電子書籍の小説にしたら、もっと気軽に読んでくれるんじゃないかなと。すでに一昨年に出しました。短編だと(原稿用紙)80~120枚くらい。やはり今までの本のファンと違う人がついているなと違う感じがあります。この線をもっと押していけば、電子書籍の中で新しい小説の位置を築けるのかな」
――3月で82歳になられますが、この電子小説が今の「やりたいこと」なのですね。
「電子小説の中で新しい一角を築く――これは2~3年のうちに実現したいですね。82歳になったら、もう少しキザになってみようかな。どういうふうにキザにできるのか。今、高齢者を前期高齢者、後期高齢者と分けているけど、100歳まで何年もあるじゃない。前期、後期、あとは何? 末期高齢者? そんなの嫌でしょ。だったらシルバー世代、ゴールド世代、ダイヤモンド世代、いっぱいある。70代80代、まだまだこれから」
――「9割は無駄。」というタイトルですが、すべて無駄ではないと受け取りました。
「9割は全然無駄ではなかったということですね。攻めようが逃げようが、『思い立ったらやれよ』という意味。やらないと本当にあっという間。どんどんやれよと、特に若い人たちに伝えたい。このエッセーは若い人たちを対象にしていますが、実際にはすべての年齢の人たちに広げて伝えています。70代の人たちも『私には無理』と思わないで、『今まで無理だと思っていたけど、無理じゃないのかも。自分だったらどういうことがやれるのかな』と考えてもらえれば。ゴールド世代、ダイヤモンド世代になろう。そんな感じでこの本を読んでいただけたら著者としてはうれしいです」
□志茂田景樹(しもだ・かげき)1940年3月25日、静岡県伊東市生まれ。中央大学法学部卒。小説家、絵本作家、「よい子に読み聞かせ隊」隊長。76年、「やっとこ探偵」(講談社)で小説現代新人賞、80年、「黄色い牙」(講談社)で直木賞。絵本も手掛け、2014年、「キリンがくる日」(ポプラ社)で日本絵本賞読者賞を受賞。主な作品に、「異端のファイル」(祥伝社)、「それゆけ孔雀警視」(光文社)、「制覇」(徳間書店)、「極光(オーロラ)の艦隊」(実業之日本社)、電子小説「死にたいという本当は死にたくない私」「ショートショートの小宇宙」(志茂田景樹事務所)