永瀬正敏が語る台湾映画人との熱い友情 ホテルでのサプライズに「心がはしゃぎました」

永瀬正敏は今までにないさまざまな演技に挑んだという【写真:荒川祐史】
永瀬正敏は今までにないさまざまな演技に挑んだという【写真:荒川祐史】

SMシーンやエロティックな演技「ようやくそういう役もできるようになったのかと思うと、感慨深い」

 劇中では、今までにはないSMシーンやエロティックな演技にも挑んだ。「1980~90年代の初頭には、ヨーロッパ映画、日本映画にもこういう話がありましたね。(98年には)若松孝二監督の企画で『痴人の愛』の話を頂いたことがありました。田中陽造さんの脚本が面白く、やりたかったのですが、それは諸事情で実現しなかったんです。そのときも、一抹の不安もあったんです。当時30代。あの世界観をうまく表現できるぐらい説得力を持てるか、と。今回ようやくそういう役もできるようになったのかと思うと、感慨深いものがあります」。

 永瀬の主演映画「KANO 1931海の向こうの甲子園」(2014年)の監督、マー・ジーシアンも俳優として共演。「めちゃめちゃうれしかったですね。僕にとって、彼は監督ですけども、素晴らしい俳優さんでもある。久々の再会でした。しかも、ホテルに突然、夜、『KANO』チームのスタッフが何人もやってくるサプライズもあったんです。(『KANO』プロデューサーの)ウェイ・ダーションが次作のロケハンで来ていたそうで、そんな偶然もあるのかと心がはしゃぎましたね。台湾の人の方々はそういうつながりをすごく大事にしてくれるのがうれしい」。

 さらには、リー・カーションの縁で、ツァイ・ミンリャン監督も現地入り。「各映画祭でごあいさつぐらいすることはあったんですけども、一緒にランチもしましたし、とにかくたくさん話をしましたね。自分がいっぱいDVDソフトを持っている監督さんだったので、うれしかった。リー・カーションさんは自然な感じを出したいと、熱心に船の操縦の練習をしていました。何でもない感じで演技をしたいという気持ちはわかります。あまり余計なことをしない芝居って、役者は不安になるものですが、そこがすごい。今度はせりふのやりとりもしたいなと思いました。みなさんとも、また一緒にやりたいね、と話したりと、なにか未来をもらった撮影でもありました」。

 昨年は原点回帰の年にもなった。デビュー作「ションベン・ライダー」の相米慎二監督の没後20周年記念の特集上映と、「ミステリー・トレイン」「パターソン」のジム・ジャームッシュ監督の特集上映が開催され、永瀬もイベントに足を運んだ。

「若い世代が劇場に詰め掛けてくれたのが、ものすごくうれしかったんです。映画祭や撮影現場でも、若手俳優さんたちから相米監督、ジャームッシュ監督が大好きという話を耳にしました。相米の親父に関しては、彼が残したものを受け継いでくれている人たちがいるうれしさ、ジムに関しては、まだ挑戦し続けていることを認めている若い世代がいる、うれしさ。ルシアさんのような、これからキャリアを積んでいく若い女優さんにもたくさん出会えたし、実のある年だった気もするんですよね」

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