ゲレンデBGMは時代の“映し鏡” 有名スキー場に聞いた雪山を盛り上げる選曲手法とは

高鷲スノーパークは中部・西日本最大級のスキー場として知られている
高鷲スノーパークは中部・西日本最大級のスキー場として知られている

家族連れのパパママ向け「懐かしの青春プレイバック」も忘れない

 中部・西日本最大級のスキー場・高鷲スノーパーク(岐阜県)は、場内放送の業務についてプロダクション1社に委託しているという。スキーブームの世代から、今は若年層のZ世代が訪れるようになったゲレンデ。担当者によると、傾向についてここ数年で変化を感じるのは「“多様性”と、“変化のはやさ”」だ。

「以前はテッパンと言われるような曲がゲレンデで流れ、お客様からのリクエストが多くありました。ここ数年は毎シーズン、リクエストの雰囲気が変わります。あるシーズンはロックな疾走感のある曲が多く、その次のシーズンはKポップ多めで疾走系はほぼほぼなし。また次のシーズンはエレクトロ系といったように毎シーズン変わるのです」。音楽の聞かれ方が関係していると考えているそうで、「レコードやCDを順番でじっくり聞いてきた世代から、今や聞きたい曲を1曲単位で聞き、また新たに違うアーティストの曲へ移行していく。そんなスピード感をリクエストでも感じます」とのことだ。

 BGM、DJイベントや選曲は「楽しんでいただく場所なので、雰囲気は大事」。クリスマス、正月、バレンタインデーなどには、少し前のタイミングから雰囲気を感じられる選曲を心がけている。毎日の選曲でも「朝は明るい系、ランチタイムは少しゆったり系、昼過ぎにはもう一度アガってもらおうと明るい系、夕方はしっとり系」を念頭に置き、洋邦を交えながらチョイス。家族連れのパパママ向けに「懐かしの青春プレイバック」も忘れない。

「冬のゲレンデと言えば」の定番曲を聞くと、「ずっと定番は広瀬香美さんや松任谷由実さん。世代を超えまくって今も毎日のようにリクエストいただきます。ひと昔前は、SUM41『FAT LIP』、THE CLASH『I Fought the Law』。THE OFFSPRINGやEMINEMなど、エクストリームスポーツのビデオで使われていた曲がテッパン。今は[Alexandros]『SNOW SOUND』、back number『ヒロイン』、Rin音『snow jam』などです」との答えだ。

 今季は五輪の特別な冬でもある。「五輪の会場で使われているような、選手を高揚させる曲、選手が好きな楽曲なども選曲に織り交ぜ、トークでその辺りをフォローしつつ、メダル数・注目選手・注目競技もお話できればと思います」。さらに、「例年ノンストップMIXの音源を名古屋で活躍しているDJたちに依頼し、1日の中で数回音楽のみの時間を作っています。今回は五輪を意識したノンストップ楽曲などで会場の雰囲気を作っています」といい、さらなるムード演出に取り組むそうだ。

 新型コロナウイルス禍によるもどかしい状況は続きそうだが、ゲレンデの楽しみ方はたくさんある。ゲレンデと音楽の関係性は、これからも多くの魅力を放っていきそうだ。

次のページへ (3/3) 【写真】ゲレンデの絶景にうっとり…高鷲スノーパークのリフトからの実際の眺望
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