【映画とプロレス #3】“世紀の一戦”猪木VSアリ戦後に画策した異種格闘技戦は「燃える闘魂VS殺し屋」だった

「がんばれ!ベアーズ大旋風」(76年)でハリウッド映画に出演したアントニオ猪木。撮影は日本でおこなわれたが、その後、猪木は“過激な仕掛け人”新間寿とともにアメリカ・ロサンゼルスで映画会社プロデューサーと会談した。新間によると、そのとき猪木はある俳優に会いたがっていたという。その俳優とは、リチャード・キール。一度見たら忘れない、ジャイアント馬場より大きい身長2メートルを優に超える大男だ。当時のアクション映画には引っ張りだこで、70年代を代表する娯楽映画の大スターでもある。

新間寿氏秘蔵の猪木とリチャード・キール(写真提供:新間寿)
新間寿氏秘蔵の猪木とリチャード・キール(写真提供:新間寿)

猪木自身が面会を切望した007シリーズに出演した"大物"俳優

「がんばれ!ベアーズ大旋風」(76年)でハリウッド映画に出演したアントニオ猪木。撮影は日本でおこなわれたが、その後、猪木は“過激な仕掛け人”新間寿とともにアメリカ・ロサンゼルスで映画会社プロデューサーと会談した。新間によると、そのとき猪木はある俳優に会いたがっていたという。その俳優とは、リチャード・キール。一度見たら忘れない、ジャイアント馬場より大きい身長2メートルを優に超える大男だ。当時のアクション映画には引っ張りだこで、70年代を代表する娯楽映画の大スターでもある。

 キールの名前を一躍世界的にしたのは、007シリーズ第10作にして彼の代表作にもなった「007/私を愛したスパイ」(77年)。キールが演じるのは、ジェームズ・ボンドを狙う「殺し屋ジョーズ」である。ジョーズとはもちろん、殺人ザメのこと。スティーブン・スピルバーグ監督の出世作となった動物パニック映画「JAWS/ジョーズ」(75年)にあやかったキャラクターである。

 身長218センチ、体重143キロの巨体のみならず、ジョーズは鋼鉄の歯を武器にボンドを執拗に付け狙う。そのインパクトたるや絶大で、次作「007/ムーンレイカー」(79年)にも登板。数ある敵役でも2作つづけて同じ殺し屋が現れるのは、キール版ジョーズがはじめてだった。

 おもしろいのは、両作品とも現代に通じる影響力を持っていることにある。007は新作「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」(20年)が公開間近だし、サメが人間を襲う映画は年中無休のごとく絶え間なく作られている。それでいて、ある一定以上の年齢層にとってジョーズとは人食いサメであり、同時にリチャード・キールのこともさしている。それだけインパクトの強いキャラクターでもあったのだ。

 キールは1939年、デトロイトで生まれた。12歳のときにはすでに身長が2メートルを超え、学生時代はバスケットボールで活躍したという。が、スポーツではなく俳優の道に進み20歳でデビュー。70年代を中心に数多くの娯楽作品に出演した。「ロンゲストヤード」(74年)、「大陸横断超特急」(76年)、「ナバロンの嵐」(78年)、「キャノンボール2」(83年)などは、日本でもヒット。ジョーズの一発屋に終わらなかったところも、俳優としての力量があったからだろう。

次のページへ (2/3) キールと会った瞬間に感じた閃き
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